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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第二章

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124.水晶玉を使って

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 朝、執務室で本日の行動予定と連絡事項等を確認していると、スーザンが一枚の白いカードを差し出してきた。


「これは?」


「マリエッタ様の『女神に仕える者への俸給』の振込先の個人金庫カードになります。

マリエッタ様は今は大聖女候補のお立場でいらっしゃいますから総献金額の三厘、大聖女になられますと総献金額の一割が振り込まれます。」


「因みに今月はいくらくらい頂けるのかしら?」


「先月の総献金額がこれくらいだったので、ざっくりですけどマリエッタ様にはこれくらいかと・・・。」


スーザンが手にしている黒革の手帳にすらすらと数字を書くとわたしに見せた。

ぱっと見たところ金貨で五桁の数字が並んでいた。


「そ、そんなに?」


年若い宮仕えの文官の給与が金貨ニ、三枚くらいだと聞いた事がある。『大聖女候補』の地位でそんなに貰えるのなら『大聖女』となってしまうとどうなってしまうのだろうか?

わたしにはリカルド商会の技術顧問としての収入もあるし、御身代を退任した謝礼金もたくさん残ってる。把握しきれない多額のお金に少しだけ気後れした。わたしってば超資産家になってしまった。


「ソフィーア様はその俸給を使って教育機関や研究機関をいくつも創設しています。マリエッタ様も何かを成し遂げたいことがある時に多くの資金が必要になるかもしれません。」


「そ、そうよね。わたしもたくさんの資金が必要になることがあるかも知れないわよね。」


実際にわたしの発案でリカルド様にはターメリックの温室栽培を手掛けてもらい多額の設備投資をしたし(それ以上に回収できたけど)、腹痛に効く丸薬の製造(まだ着手していないけど)では設備を整えるのに多額の資金が必要になるだろう。そういうのが気兼ねなしにどんどん出来るということだ。

今後も何か大きなことをしたくなるかも知れないしね。きっと大聖女が自由に使える裁量費も含まれているんだろう。


やっぱり『大聖女』って凄いんだなぁなんてそんなことを思いながらソフィーア様の待つ執務室へと向かった。




 ソフィーア様への挨拶を済ませて一緒に小礼拝室へ向かう。


『平和への祈り』では大災害になりそうなエネルギーの塊をチョイチョイと散らす。


インドラ王国のペシャール地方に雨雲は来てるかな?あっ!近くに雨雲発生してる!チョイチョイ。


これでは乾いた土を少し湿らす程度にしかならないけど地道に改善していくしかない。


 平和への祈りが終わると、そのまま小礼拝室で守りの祝福の指導を受けた。


ロザンナ様とスーザンが部屋へ入ってくるのと一緒に、たくさんの水晶玉を載せたトレイを持った白の神官も入ってきた。


「今日は守りの祝福を水晶玉に込める方法を伝授します。

守りの祝福は如何なる物体にも込める事ができますが、分かりやすく水晶玉を使う事が多いのです。

そこで一つ注意しなくてはならない事があります。水晶玉に限らず、他の物にも守りの祝福を込めるときには、なるべくひと月以内の有効期限を設定して下さい。

それはなぜだか分かりますか?マリエッタさん。」


有効期限を設定する。しかもひと月以内。

ひと月以上の守りの祝福って何か不都合があるの?

うーん、もしかして守ること事態が不都合なのではなくて、そんな特別な水晶玉が存在することが不都合なのかも?


「長期の守りの祝福を込めた水晶玉はとても価値のあるものになります。水晶玉を巡っての奪い合いが起きるとかでしょうか?」


「いいえ。いい線いってますけど違います。守りの祝福を込めた水晶玉を持った人からこれを無理矢理奪うことは出来ませんよ。守られていますから。

しかし、何かしらの手段で悪い人がこれを手に入れたらどうなるでしょう。人を害しても自分は傷一つつかないのです。

悪用するに違いありません。

それが戦に利用されてしまえばどうなるでしょう?これを手にした方が、手にしていない方を一方的に蹂躙する可能性もあります。

守りの祝福を込めた水晶玉は、大切な人を守ることができますが時と場合によっては悪い人も守ってしまいます。

私達は悪用されないよう、ひと月以内の有効期限を設定する必要があるのです。

分かりましたか?」


「はい、ソフィーア様。」


わたしは守りの祝福を込めた水晶玉が存在することにより起こる悪害を想像して思わず唾を飲み込む。

でも、その水晶玉のおかげでビザンデ鉱山の住民を帝国側から王国側へ安全に移動させることができたのだ。

有益にもなれば悪害にもなる。そんな水晶玉を作る者としての責任を感じた。


ソフィーア様のご指導のもと、水晶玉に守りの祝福を込める方法と有効期限を設定する方法を教わった後、解除する方法も教わった。


解除するためには直接わたしが水晶玉に触れなくてはならないけど、悪用されないためには重要なことだ。

きちんと対応しようと思う。




 守りの祝福を水晶玉に込める方法を伝授していただいた後、その流れで水晶玉に転移の力を込める方法を伝授していただいた。


転移水晶は、五大神殿に各ひとつずつと、ソフィーア様のご自宅にひとつ、そしてソフィーア様の腕に三センチほどの大きさの物が腕輪に嵌められている。


 五大神殿に設置された転移水晶はメロンくらいの大きさで、常時アディーレ大神殿と書類や手紙の転移を発動している。

その転移水晶に触れ、軽く神気を流すと電話のように通話ができる。

さらに神気を流すと自分を中心とした半径三メートルの範囲内で人や物を転移させることができる。

滅多に作ることはないけど一応大神殿の設置用の転移水晶の作り方を教わると、次にソフィーア様が通勤用としてご自宅に置いてある転移水晶と、どこにいても転移水晶のある地点まで転移できる腕輪に嵌められた転移水晶の作り方を教わった。もちろんどちらも軽く神気を流すことにより通話が可能だ。


わたしにも腕輪の転移水晶が作れるように、腕輪の彫金工房を紹介して貰えることになった。それでどこにいても一瞬で自分の部屋や神殿へ帰れるのなら、大聖女になるのも悪くない。


 最後に転移水晶の転移の力の解除方法を教わった。転移水晶は便利なのでついつい作り過ぎてしまうらしいので、気が付けばあちこちに転移水晶が設置されている事態に陥ってしまうそうだ。

なぜこんな所に転移水晶が?と思ったら何代か前の大聖女の恋人との思い出の場所だった。ということもあるらしい。

なるほど、わたしもそういう使い方をいつかしてみたい。


 気が付けば大小様々な転移水晶がたくさん出来上がっていたので、その中のいくつかをいただいていくことにした。


「今日は神気をたくさん使ったので疲れたのではありませんか?これで今日は終わりにしましょう。」


正直に言うと神経集中してかなりの数の守りの祝福の水晶と転移水晶を作ったり解除したりでとても疲れた。

ソフィーア様のその一言で今日のところは終わりとなった。


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