114.心構え
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今日から、ソフィーア様から大聖女としての役目と大聖女だけが持つ特別な能力について伝授していただく。
ソフィーア様は執務室からわたし以外の人を退室させて二人きりになると、ソファーに向かい合わせで座った。
二人だけの部屋はとても静かで、少しだけ緊張感が漂う。
「マリエッタさん、貴女には大聖女としての大切な心構えをお教えします。」
ソフィーア様は眉間に皺を寄せて真剣な顔でそう切り出した。
───大聖女としての心構え。
なんとなくでここまで来てしまったわたしが一番持ち合わせていない物だった。
今でも大聖女は別の人に・・・とか言ってしまいそうなくらい興味がない。(分かってますよ?代わりがいるような存在じゃないことくらい。)
そんなわたしが全ての民の光になれるとか思えない。
そもそもこんな考えが大聖女に相応しくないと思う。
「マリエッタさん、大聖女としての心構えとは──────
『心のままに』よ。」
「え?」
心のままに?
ソフィーア様はいたずらが成功したとばかりにニヤリと笑った。
「これはね、私も先代から言われた言葉ですよ。『心のままに』。
私達大聖女も一人の人間。女神から少しだけ特別な能力を授かりましたけど、世の中の全ての人を幸せにすることはできません。
だから、可能なだけでいいのです。
助けたいと思った時に助けたいと思った人だけでいいのです。女神から授かった力を使って上げましょう。
ある者は私達をこの世の憂いを全て取り除き幸せにしてくれる万能の力があるかのように接してきます。
しかし私達は万能ではありません。
そしてある者は多額の献金を納めたのだから、いいようにしろと言ってくる者もいます。
私達はお金のためにこの力を授かったのではありません。
ただ女神から特殊な能力を授かったばかりに大聖女という地位に祭り上げられただけの存在なのです。
だから肩の力を抜いて、貴女の感じたまま心のままに務めてくださいね。
分かりました?」
「はい、ソフィーア様。」
───『心のままに』
思っていたのと全く違う事を言われた。
世の人々の平和と幸福のためにその身をあまねく捧げろとか、人々の希望の光となり安寧の世へ導けとか言われるのかと思っていた。
その様なことを言われたとしても自信がない。
わたし達は万能ではないとおっしゃってくれたことで少し肩の力が抜けた。
そしてソフィーア様は大聖女の役目について教えてくれた。
大聖女の主な役目は、
①平和への祈り
②世界中の信者の願いを聞く
③世界各国の王と王妃に守りの祝福をかける(ナディル帝国を除く)
というものだった。
これは御身代をやっていた時に聖女学の勉強で知っていたし、多くの人が知っている。
そして今から、①平和への祈りを教えて下さることになり小礼拝室へと場所を移動した。




