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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第二章

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110/231

110.救出後①

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 旅芸人のエリックに助けられ、怪我の手当てをしてもらっていたところへ、リカルド様がわたしを探しに来てくれた。

そして無事大神殿へ戻ることができた。


 わたしの護衛をしていた女性騎士の一人が、急ぎ大神殿の方へ緊急事態を報告したため、わたしより一歩先にスーザンが助け出されたようだった。


スーザンは治療室で怪我の手当てを受けた後、今は自室で眠っている。


 リカルド様がわたしを探し出すことができたのは、たまたま声をかけた地域の住民から走って逃げる少年を見たという情報を聞き出し、もしかしてわたしかも知れないと思い旅芸人の拠点まで来てくれたからだった。


ライオネル殿下も大神殿の警備隊と一緒に倉庫まで駆けつけてくれたらしく、そこには顔を腫らし、気絶したスーザンだけが倒れていたそうだ。


きっと・・・スーザンは最後までわたしが大聖女候補であることを隠し通したのだろう。


わたしは、スーザンは帝国から送り込まれた密偵と思っていた。

だけど、事実は少し違うようだった。


どのような理由があったのか分からないけど、公爵家の令嬢で、元は王太子の婚約者が義妹の手で国外追放されていた。しかもその義妹が義姉に取って代わるように王太子と婚約し、王妃となっている。

そしてスーザンはこの大神殿で統括組の聖女として活動していた。


スーザンはどんなに打たれても、わたしが大聖女候補だと喋らなかったし必死で逃がそうとしてくれていた。


それに比べて・・・帝国の王妃であるリリーティアは・・・。


美しい女性ではあるが野心が強く、残忍で策略家。自分が次期大聖女になりたくてあんなことをした。


戦に勝ちたいがためにエリーに賞金をかける帝王。大聖女になりたくて大聖女候補を誘拐して神器を強奪しようとする王妃・・・。

つくづくナディル帝国とは恐ろしい国だと感じた。


大神殿側では、未だ首謀者が掴めていないみたいだけど、正直に「犯人はナディル帝国の王妃、リリーティアです。」とか言ってしまえば、普通に考えたら戦に発展する事件だ。


だけど証拠は残ってないだろうし、目撃者であるスーザンは国外追放の身。そしてわたしは王妃の姿を今まで見たこともない。言いがかりだと言われればそれまでだ。


しかもアデル聖国は不戦の国で軍隊を持たない。そしてナディル帝国と元々国交もないため外交交渉も望めない。


それらのことを考えながら、わたしは正直に話す決意を固めた。



 わたしは大聖女のソフィーア様との謁見に臨むため、挫いた右足を治癒で治す。

そしてメリッサに手伝ってもらい、白の聖女ドレスに身を包んだ。


「マリエッタ・シューツエント、エーデル山での修業を修め、女神から神器を授かりましたことを、ここにご報告申し上げます。」


「マリエッタさん、お立ちになって。

先ずはおめでとう。

修業の様子はスーザンから聞いています。大変ご苦労様でした。

貴女の神器、見せていただいても?」


「はい、もちろんです。『錫杖』。」


わたしはソフィーア様の他にもマクシム神殿長や、その他高位神官の方々が見守る中、『導きの錫杖』を召喚して見せた。


「おおー。」


「なんと神々しい。」


「これが『導きの錫杖』。」


「生きているうちに神器を二つもお目にかかれるとは何たる幸運。」


口々に感嘆の声や歓びの声を上げる高位神官の方々。少しだけ照れくさい。


そしてソフィーア様は、先ほどの誘拐事件について触れてきた。


「マリエッタさん、今日は、貴女を守り切れなくて申し訳ありませんでした。貴女の身柄を預かる神殿側として、心から謝ります。」


「いえ。わたしはこうして無事に帰ることができましたので。」


「本当に、貴女が無事でいてくれて良かったと思います。

それで、犯人について何か分かっている事はありますか?どんな些細な事でもいいので教えて下さい。」


「はい。犯人は・・・。

ナディル帝国の王妃であるリリーティア・ナディルでした。

次期大聖女の地位を狙い、神器を手に入れられれば、次期大聖女になれると考えての犯行のようでした。」


「な、なんと!」


「ナディル帝国とは!」


「何と愚かな!」


「確かスーザンの義妹では?」


口々に怒りの声を上げる高位神官だったがやはりリリーティアとスーザンの関係に気付いている人もいる。

ソフィーア様だけが黙っているが、顔つきが徐々に険しくなっている。


「リリーティアは、神器を強奪しようと覆面の男達を使って馬車を襲い、わたし達を誘拐させました。

そこでスーザンを大聖女候補だと勘違いをしたようで、神器の在処を聞き出そうとこの様な凶行に至ったようです。

スーザンはリリーティアに打たれながらも、わたしが大聖女候補だと口を割ることなく、その身を挺してまで逃がしてくれました。

スーザンには感謝しかございません。」


わたしは思わず唇を噛んだ。リリーティアは、とても野心家で残忍な女性だった。あの時の状況を思い出すと恐怖とスーザンの献身に胸がギュッとなる。


わたしはリリーティアの義姉であるスーザンに疑惑の目が行かないよう説明をした。

高位神官達は、「抗議文を!」とか、「制裁を!」と声高に言っているが、ソフィーア様だけがずっと険しい顔をして黙っている。

そして、わたしはある提案をしてみた。


「ソフィーア様、この件、一旦私に預からせて頂けないでしょうか?

スーザンと話し合ってみたいと存じます。

そして、場合によっては『聖女の矢』で決着をつけることをお許し頂けないでしょうか?」


「ふむ・・・よろしいでしょう。この件、当事者である貴女たちで解決なさい。

それでよろしいですか?マクシム神殿長?」


「はい。大聖女様のお心のままに。」


こうしてリリーティアによる誘拐事件は一旦わたしに預からせてもらうことになった。


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