15
疲れた。
あの後、冒険者たちがこちとらVRで味覚がないのに酒を無理やり呑ませてくるせいで、無駄に混乱状態がついて頭がクラクラしてナイトオウルにやられたときと同じような状態になった。
ただ、混乱状態になる前はハゲのNPC、ディーゼルというらしいが、そいつを筆頭に親切に教えてくれて、プレイスタイルを話すとガンツというマッチョNPCを紹介してくれて、便利なスキルが手に入る称号について教えてくれた。まぁ、そこそこ真面目に聞いてきたのに酔っ払いどもに邪魔されてひどい目にあったのだが。
夜中の3時ぐらいにようやくどこかに行っていたがんさんがきてくれて回収してくれた。
「またこいよ!」
「楽しかったぜ!」
という声を背中に受けて、ギルドを後にする。
がんさんはあと数時間でログアウトしなきゃいけないということに気づき、置いてきた俺をギルドまで教えにきてくれたらしかった。そしたら俺はNPCにもみくちゃにされていて、回収をしてくれた。
何が起こったか笑いながら聞かれ、苦笑いで答える。
「そりゃあいいなお前!多分そのボコした女はアイリって言う魔法使いだぜ。いやースマホ版から成長しねーなー。あいつ弱いくせにキャンキャンうるせえし、多分今頃には優希様とやらに言いつけてるぜ。」
「うわーPKしてきそう。」
「撃退してもう一回ボコせってそん時は」
って笑いながら言う。
混乱状態が治るまでに時間がかかり、あとログアウトまで2時間となる。
「んー暇だしログアウトしちゃおーか!」
「そっすね。」
「んじゃお疲れー」
と言ってがんさんは消える。
ストレージを開いて鬼の心得を使用する。
[ログアウトします。
あなたの種族を鬼に改変します。
次のログイン可能時間まで残り5時間50分です。]
画面が暗くなり、太陽の塔に入る前の丸い球体がたくさん浮いた場所に戻る。電源を切ることを思い浮かべると完全に暗闇となる。
ゴーグルを外して伸びをする。半日で何日分の濃い時間を過ごしたことで精神的に疲れが出ていた。
お湯を沸かして、味噌汁を作る準備をする。その間にチンするタイプのご飯を電子レンジで温めて、昨日買った刺身とサラダ冷蔵庫から取り出す。何日かぶりに感じる夕食に心がおどる。
飯が食い終わって腹が膨れ、とりあえずシャワーに入る。シャワーから出て時計を見ると次のログインまで5時間強だったので目覚ましを4時間で設定してベットに入る。
目を覚ましたのは目覚ましの音ではなく、鳴り止まないスマホの通知だった。目覚ましが鳴る時間より1時間近く早いが、昔からショートスリーパーで寝る時間は1日2.3時間で済むためいつもの朝のようにスッキリと目が覚めた。
スマホを見ると賢からだった。電話の通知でケータイの通知が埋まっており、また電話がまたかかってくる。
「おー賢か、どーした?」
「ようやくでたよ。今からお前の家行っていい?」
「ん?なんで?」
「姉貴がまた友達めっちゃ連れてきた。」
「そんでまた、追い出されそうだから俺の家来たいと。別にいいよ。てか気分転換に歩きたいからお前の家向かうね。」
賢には姉がいて、そこそこ広い賢の家に定期的に姉の友達が泊まるのだが、そのたびに男はどけと賢と賢の父親は姉と母親から外泊を強いられるのだ。
賢は中学の俺の家に泊まっていて、高校に入って賢が引っ越してからは交流がなくなるも、大学で一人暮らしを始めると今度は賢の家から5分程度とわかり、ちょくちょく泊まりにくるようになっていた。
「りょーかい。そっちにVR持ってくわ。一緒にやろーぜ。」
「おけー、着替えていくわ。」
と、部屋着からデニムに履き替えてそこら辺にある半袖に着替える。スニーカーを履いてアパートから出る。鍵を閉めて前の通りに出る。右に行けばコンビニがあり、そこの交差点を左曲がれば賢の家がある。
賢の家につき、チャイムを鳴らすとはーい、と大学生くらいの美人が出る。
「ゆいーーなんかイケメンが来たーー!!」
「誰ーー?あーゆう君じゃん久しぶりー!賢ならもう少しで来るよー!」
美人にイケメンと言われてちょっと照れていると賢の姉が出る。賢の姉はスカウトされてモデルになるほどのスタイルの良い色白美人で、賢が本当に羨ましい。と言っても賢も真○佑に似ていて中学時代モテモテだった。大学では出会いがないらしいが。
「賢君の友達なのー?結衣紹介してよこの子。」
と、また別の美女が来る。
「えーだってゆう君高校から付き合ってる彼女いるじゃん。」
「そいつ最近振られたぞ。しばらく彼女はいらないって言ってたけどな。」
と後ろから賢がやってくる。
「えーそーなの!?ごめんねー気遣わないで!梨花も別れたばっかなんだからやめときなよー年下だよーしかも。」
「えーいいじゃん別に年下も。まーでも彼女つくるきないならしょうがないかなー。じゃあ賢君もゆう君?もバイバイ!」
「賢明後日くらいなら帰ってきてもいいよ!
ゆう君じゃあ、賢をよろしくね!」
「はい、了解です。じゃあお邪魔しました。」
と賢の家を賢と出る。ドアが閉まる前に最初に出た美人が手を振ってくれたので照れて会釈して慌てて帰る。
コンビニに寄って帰ってくると、ログインできるまであと1時間半程度になっていた。
「お邪魔しまーす。なんか久しぶりだ、っておい!このソファーもしかしてあれか!VR用のやつか!」
「まぁ、この1ヶ月肉体労働したおかげでね。」
「くっそー羨ましいわー。」
「でしょ?」
部屋着に着替えてソファーに座る。賢も荷物を置いたのかスマホをいじっていた。スマホを開いてVR専用のアプリを開く。通知を見ると、あるさんとがんさんからフレンド追加されていた。フレンド追加を2人させていたただく。
Gaweekから2人のコチャにいき、フレンド追加したことと感謝の念を伝える。
「てか雄也に自慢していい?」
「うん?」
「俺鉄酔さんとアカネの赤さんフレ交換した。」
アカネの赤というプレイヤーは女性で、おしとやかな見た目をしながらもえげつない火魔法を使っていたスマホ版での上位ランカーである。
「へーすごいじゃん。」
「あんま思ってないだろお前。」
「まぁ俺はあるてぃめっとさむらいさんとGunDonさんとフレ交換したからね。」
「それは見栄を張りすぎ。」
「ガチですけどね。」
「いいってそういうの。」
「ほれ。」
とVRのフレンド欄に2人がいるのを見せる。
「、、、やばすぎだろお前。」
「まあね。」
「ま、まぁ、俺はもう第1ついて氷魔導士についたけどね!」
魔法使いは魔力察知、魔力操作、身体強化、に加えて光、風、水、闇、地、火から2つ属性を選ぶことができる。魔力察知は名前の通りで魔力が大きければ大きいほど察知しやすい。魔力操作は魔力消費を抑えることができ、身体強化は自分の移動や攻撃を魔力で補強できるスキルだ。呪術師や占い師は属性を必要としないが、好みで選ぶ人が多いい。
氷魔導士についたということは、おそらく属性は水、風を選んだのだろう。属性にもいろいろ種類があり、基礎ジョブで覚えられる6大属性に加えて、聖、雷、氷、毒、重力、鉄の6上級属性があり、他にも解明されていないここに含まれていない特殊属性もある。また、魔法にはレベルがあり、上級ジョブにつかない限り5レベルまでで終わってしまう。ちなみに特殊属性や上級属性は5レベルしかないため、上級ジョブのさらに上級ジョブを覚える必要がない。
あいつが覚えているであろう水魔法の5レベルまでの魔法はレベル順に、
水球、水癒、水柱、水壁、水鞭で、
風魔法は、
突風、風耳、風柱、風壁、風槍だろう。
まあどれも漢字の通りの技である。
氷魔導士の覚えるスキルは確か氷属性、詠唱破棄である。魔法使いの属性ありの上級ジョブは新しく魔法を覚えられる代わりに新しく覚えるスキルは少なかったはずだ。
氷魔法は、
氷結、氷矢、氷壁、氷塊、氷狼である。
「まあ、俺は特殊ジョブにつけたけどね。」
「さすがにそれは嘘、、、ほんとに?」
頷くと説明しろ殴られそうになったのでジョブのスキルとかの内容と、報酬について簡単に説明する。
「死ね!」
と肩パンされたので、とりあえずやり返す。
威力が違うと呻いてるやつを横目にVRアプリから太陽の塔の設定やログを眺める。
1日目の夜にウルフと戦っている時点で初期装備の左足が壊れていて、セット効果の経験値1.5倍がなくなっていた。そのせいで他の人にくらべて若干無駄に時間がかかっていたようだった。前から思っていたことにようやく納得がいく。
時計を見るとあと30分で入れる時間になっていた。
説明の入れ方がいまだになれないです。