両生類に転生したのに、チートがもらえなかった俺は、ハーレムを目指すには擬人化が必須と考えて、最初からある潜水スキルを最高値まで上げるべく、目の前にある、いわくのありそうな池で訓練を始めた件について
本当は、最後の一文で十分ですが、文字数制限に引っかかる(少ないという意味で)ため、冒頭部分を追記しました。
師匠は、先ほどの光景をもとにして、一つの作品を作り上げた。
「どうかな、ソラよ」
師匠に作品の出来映えを問われた私は、
「さすが、師匠です」
と答えてから、解説を試みる。
「これまでの作品では、鳴き声にだけ注意が払われて、師匠のように、動きについてまでは目が向いていませんでした」
「また、動作によって生じた音が聞こえるという状況は、翻ってみれば、古池の周辺にはほとんど音がない状況、つまり静寂を表すということです。わずかな言葉でこれらの対比、世界を示すことができるということが理解されれば、この世界でのあらたな未来の始まりとなるかと」
「さすがはソラだな」
師匠は私の説明に、満足するかのように大きくうなづき、
「今度のカシマへの旅には、是非、同行してもらいたい」
「ありがとうございます」
私は、師匠からの提案に、感謝の言葉で受け入れの姿勢を見せる。
それにしても、
と私は、作品が生み出された水面の先に視線を移し、別のことを考える。
水に飛び込んだだけで、潜水スキルが上昇?
甘すぎるだろう。
せめて、5気圧以上の深度まで潜水しなければ、効果的なスキル経験値の取得は難しいはずだ。
もっとも、汽水域ですらたどり着くことが困難なお前に、いったい何ができるのか。
大海を知らぬまま、そのまま短い命を燃やすがよい。
「どうした?ソラよ」
自宅に帰ろうとする師匠が、私に動きがないことに気がついて、話しかける。
「いえ、師匠」
私は、二度と後ろを振りかえることなく、師匠の後をついて行った。
そして、師匠の作品を心の中でつぶやいた。
「古池や 蛙飛びこむ 水の音」