─82日目 大阪編5:斑鳩全員集合……あれ一人足りなくね?─
「此方です」
前回に続いてツバメさんに連れられたのは両開きの扉の前。
「では私はこれで」
「はい。わざわざ有り難うございました」
ツバメさんと別れた後、扉に手を掛け、開ける。
『………………!』
途端に中に居た数人の視線を浴びる。その内の半分位は驚いたような顔をしていた。
「カオル……!?」
「何で……!」
そう声に出していたのはサクマとユウナだった。無理もない、俺が今回来る事は会長達しか知らなかったのだから。
「久しいな、カオル」
その中で只一人、俺の前まで来た男が言ってきた。
「そうですね。一年振りって所ですか?」
「ああ。あれから随分背も伸びたものだ」
「俺そこまで伸びました?」
「そうだと思うが」
……さっきから俺と話しているのは、斑鳩第1翼で斑鳩のリーダーでもあるシュウホウさん。劉紋会関西本部に所属している。
「両会長も直にいらっしゃる。そこに腰掛けておいてくれ」
シュウホウさんに指示された席に座る。現在、細長い楕円形の机を取り囲むかのように俺を含めた斑鳩隊員が座っている。第1翼から順に並べられているらしく、俺は手前から二番目の入り口側から見て右側の席に座る事となった。因みにサクマは第7翼、ユウナは第9翼だから席は遠い。
「ふぅっ」
「よぉカオル。久しぶりやんけ」
続いて話し掛けて来たのは隣に座る斑鳩第6翼のアスマ。
「何だアスマか……」
「何やその反応!?冷たっ!メッチャ冷たっ!!」
「うるさい」
「そうそう。んなヤツ放っておけば良いのよ」
「何やとコラァ!!」
アスマを軽くあしらっているのが俺の前に座っている第3翼のイズナさん。
「まーまー、仲良くやりましょうや。折角皆久々に揃ったんやし」
目線で火花を散らす2人を宥めるのは第5翼のケンイチ君。俺より一つ年下の中学生だ。
「くっだらねぇ……カオル、無理にそんな奴等の相手しなくても良いからな」
「は、はぁ……」
アスマとは逆の隣に座っている第2翼、ヤクモさんがしれっと俺に言ってくる。因みに男だから間違えないように。女みたいな名前とか言われただけで組一つ潰しちゃうような人だから。
「………………」
その様子を黙って見ているのが第8翼のアサギさん。何時も仮面をしているから顔は誰も知らず、勿論性別も不明。謎の多い人だ。
「おう!全員揃っとんな!」
「やっほー♪」
一通り斑鳩の面子を再確認し終えた所で、会長とおじさんが部屋に入ってきた。
「会長、10番がまだですが」
「あーええねん。ワシが仕事頼んどいたから今日は来られへんから」
「そーゆーこと♪あ、カオルちゃーん!」
例の如く俺にひしっと抱き着いてくる会長……もといみっちゃん。
「……どうも」
「もぉー全然会えなくてみっちゃん寂しかったんだゾ☆」
ウインクして☆出せる人を俺は初めて見ました。
「ちょ、ちょっとミチルさん!あまりカオルに引っ付かないで下さい!」
そんな会ちょ……みっちゃんに文句を言ったのは意外にもイズナさんだった。
「えー、イズナちゃんに言われる筋合い無いもーん♪」
「あります!話も進まないしカオルが迷惑してるじゃないですか!」
「そんなこと無いもーん♪ねーカオルちゃん?」
「イヤそんな事ありますから」
多少強引にみっちゃんを引き剥がしながら言う。
「あぅー……仕方ない、パパちゃん、始めてあげて」
「みっちゃんワシの扱いひどないか?」
「気のせい気のせい♪」
おじさん、残念ながら気のせいではありませんよ。
「じゃー話始めんで。こっちに注目」
いつの間にか手に持っていたリモコンで天井からスクリーンを下ろす。
「今回お前らに言っときたいのはコレや」
スクリーンに映し出されたのは一つの紋章。
「これは……」
「つい最近から各地で好き勝手やってる奴等の組のヤツや」
「…………」
俺の直感的には恐らく、以前戦ったシマノとかいう男の居た組だ。
「名前は『狐瀧會』。今ん所は名前以外、殆どが正体不明の組やな」
「成る程。せやから狐に瀧の紋章っちゅーワケか」
「しかし解らないな……」
「ヤクモさん?」
さっきまで黙って話を聞いていたヤクモさんが口を開く。
「そんな組の為にどうして俺達全員を集める必要がある?旦那がシュウホウに言えば良いだけの事だろう」
確かにそれは俺も思った。今までだって今回に似たような、正体不明の組が突然現れた事はあったが、大概は斑鳩全員に直接その情報を伝えるなんてした事が無かった。
「ところがどっこい♪そういう訳にもいかないのよ」
ヤクモさんの問いに答えたのはみっちゃんだ。
「それはどういう事です?私にも理解出来ないのですが……」
シュウホウさんもヤクモさん同様に尋ねる。
「実はこの前、カオルちゃんが狐瀧會の人間を一人捕まえてくれたの。で、事情聴取したらスゴイ事分かっちゃったのよ」
「スゴイ事?」
未だ理解出来ていない俺達にみっちゃんは話を続ける。
「その狐瀧會のトップの側近にね……『南』が居たの」
『!!』
「南だと!?」
「んなアホな事あるか!アイツは確かにあん時……」
「信じられないかも知れないけどこれだけは事実よ」
「そんな……嘘でしょ」
皆がそれぞれ動揺を隠しきれないでいる。
「………………」
俺はただ、黙っている事しか出来なかった。
「…………南」
ふいに脳裏に浮かんだ、懐かしいその顔を思いだしながら。
一日あいたのは私の個人的な事情です……スミマセンm(__)m ホワイトデーの話も書きたかったのに……くそぅorz