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─77日目 運任せなある日の午後─


「サクラー」


「うにゃー?」


ごろごろごろごろー、と俺の足元まで回りながらやって来る妹。うん、何時もながらにして変だ。


「何さカオル兄」


「その前にお前が何さ」


「今日シキョー先生に教えて貰ったの。こーやって丸太を転がして物を運ぶんだって」


だからってお前が丸太にならんでも。


「それで何?」


「ん?おおそうだった。ちょっと話があるんだよ」


「話?」


小首を傾げているサクラを椅子に座らせて向かい合わせになる。


「もうそろそろ春休みだろ?」


「うん」


「で、終了式ある日の午後から1週間」


「うん」


「大阪に行くから。以上」


「うん。…………ぅん?何故に大阪?」


「ヤボ用ついでに観光だ」


「でも1週間って長くない?」


「まぁ色々あってさ。最低1週間は居なきゃダメなんだよ」


「その間カヨちゃん達とは!?」


「会えないだろうな。残念ながら」


大阪〜東京間って片道二時間以上掛かるし無理だろう。経済的にも。


「じゃあ行かない!」


「文句言わないでくれよ。カヨちゃん達とずっと会えなくなる訳じゃ無いんだしさ」


「カオル兄の用事ならカオル兄だけ行けば良いじゃん!何で私まで付いて行かなきゃなんないのさ!?」


「……ある意味お前にも関係あるからだよ」


「私に?」


「ああ。だから頼むな」


「むぅー!」


ぶすーっ、と頬を膨らませるサクラ。ご機嫌斜めだ。


「……向こうで好きな物1つ買ってやるから」


「ふんだ!人を物で釣ろうなんてそんな考えクソありがとうございますッ!」


「うむ。じゃあ宜しく」


「ほーい」











「──という訳なのです」


ども、サクラです。ただいまカオル兄が買い物で居ない家にいつもの4人が集合している状態です。


「んむんむ、つまりサっちんとは春休みが始まると1週間会えなくなると。むぐむぐ」


「そうだけど喋るか食べるかどっちかにしなよユッキー」


「んじゃ食べとくさー♪」


テーブルの上のクッキーをひょいひょいと食べていくユッキー……何しに来たのかねこの子は。


「でも確かにそれはさみしいよねー」


「そうよ!」


ん、チアキちゃんが好物のクッキーに手を付けず立ち上がった。


「せっかくの春休みにカオルさんと1週間も会えなくなるなんて考えただけでも悶え死にそうだわ!」


「だけど今回ばっかりは私にはどーしよーも無いからねぇ」


「んぐんぐ」


「なら方法は1つでしょー」


「「え?」」


「むぐぐ?」


カヨちゃん……そのにこーっと言わんばかりの笑顔はまさか!


(((この子、絶っっ対何かを企んでいる!)))


「ようは私たちも大阪に行けば良いんだよー♪」


…………………………。


「「どうやって?」」


「もぎゅ?」


「これを見るのだー」


カヨちゃんの胸ポケットから取り出されたオレンジ色をした数枚の紙切れ。それぞれ『福引券』と書かれてある。


「お母さんが商店街でお買い物したら貰ったんだって。そのそれで特賞に『好きな都道府県への旅行、ペアで1週間』ていうのがあるのー」


何て都合の良い特賞なんだコノヤロー。


「あるのは四枚。この内二枚当たれば良いのよね」


「ちょいちょい待たれよぃ」


「ユッキー?」


クッキーを食べ尽くしたユッキーが割って入ってくる。チアキちゃんが少し悲しそうにしてたのには触れないでおこう。


「当てるったってそんな簡単なモンじゃないっしょ」


言われてみればその通りだ。欲しいものがスグに当たるなら苦労はしない。


そう、だから私たちは苦労しない。何でかって?


私たちには“あの人”が居るからだよ。


「さ、行ってみよーか。カヨちゃん連絡は?」


「今してる。あ、もしもしー?」


「ふぇ?みんなボクの話聞いてた?」


「聞いてたわよ。けど大丈夫なの。見てれば解るわ」


「なーんかチアりんに言われると……なんだかなー」


「いっつも弄られキャラで悪かったわね!!」











──そして場所は変わりくじ引き会場。


「あそこだよー」


「特賞は3つ……まだ1つも出てないから楽勝だね」


「その根拠が何処から来てるのかボクにはさっぱりだよモカソン君」


「にゃー」


「ってモカいつの間に!?」


たまには散歩でもと思いまして連れて来ました。


では……いざ尋常に勝負!


「すみませーん。これお願いします」


「はいいらっしゃい。えーと四枚だから四回やってね。皆一回ずつやるのかな?」


「いいえ。やるのは全てあの人です」


「?」


私の指差した方向へ顔を向ける受付のお姉さん。


そこに立っていたのは……。


「イキナリ呼ばれたから来たけど一体何事?」


ハイ大体予想付いてたとは思うけどチヅルさんです。


「チヅルさん。じつはかくかくしかじか──という訳なんです」


「ほうほう成る程。私に任せなさいって〜」


「いけチヅルさん!」


「お〜♪」


あっはっは〜と陽気に笑いながらガラガラを握り適当に振る。


カラーン。


金の玉。特賞、1つ目獲得。


「お、おめでとうございます!」


「まだまだ、それっ」


カラーン。


金の玉。特賞、2つ目獲得。


「え……え?」


「ほりゃっ」


カラーン。


金の玉。特賞、3つ目獲得。


「………………………」


「最後はど〜するの?」


「チヅルさんに上げます。好きにして下さい」


「ホント!?ありがとねカヨちゃん。え〜い」


カラーン。


銅色の玉。液晶テレビ獲得。


流石は全ジャンルにおいて反則級なスペックを誇るチヅルさんだ。チヅルさんを知らない受付のお姉さんとユッキーなんか唖然だよ。


「ちょ、ちょちょちょチアりん!何なのアレ!?」


「だから言ったでしょ。大丈夫だって。それと雪だるマンの生みの親よ」


「神だ……神が舞い降りた……!神様ーっ!!ボクを弟子にしてーっ!」


「わわっ、何この子?」


「かくかくしかじかでユキちゃんです」


カヨちゃん便利そうだねその言葉。今度使ってみようかな。


「どうか弟子にーっ!!」


「まぁ別にいいよ〜♪」


「マジですかぃ!?」


「マジですよぃ!!」


「やったー!」


「良かったねユッキー」


「あんがとサっちん!」


「あ、雪山の妖精だからユッキー?」


「だからボク違うって!」


「賑やかだねー」


「これが普通くらいよ」


「ぁ……あはは……あははははははは……」


「にゃー」


その日の商店街では力の無い鐘の音が一晩中鳴り響いていたそうな。











……ところでこの余った三人分どうしようか?


チヅルさんの強運が垣間見えた一日でした笑 そして次回の更新は最悪来週になるかと……読んでくれてる方々、本当にごめんなさいm(__;)m 次回からは大阪編になるかと思われます。あ、それより前に終了式か(^^

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