─52日目 スキー合宿?そのに─
「もう逃げられないぜ…」
「ぐっ……」
相手が手にしたソレの先端が首元に突き付けられる。
相手に言われたように俺が逃げる事は叶わない。
「ってリフト乗ってたら当たり前だっての!」
悪ノリした俺も悪いんだけどさ。あ、どもどもカオルです。
「いやぁ一回やってみたかったんだよ!犯人と被害者のやり取りみたいなのが」
「別に今じゃ無くても良かっただろ……」
隣に乗ってるカイトが俺に向けていたストックを下ろす。俺正直ビビってましたよ。知ってます?ストックって先が尖ってたりしてるから危ないんですよ?だからよいこのみんなはこんな真似しちゃダメだぞ?シャレになんないからマジで。
「よーし到着!」
「おっと、降りないとな」
リフトから降りて先に上がっていたA班のメンバーと合流した後、少し下の景色を見てみた。
下から見たのとはまた違う雪景色。何か広大な感じがする。俺の直ぐ傍に立っている大きな四つの雪だるまが邪魔な気もしたが……。
とりあえず誰かが頑張って作った物だしそのまま放っておいた。俺達より後にリフトに乗ったメンバーも全員集まったので早速滑る事になった。先生がA班を集めて指揮を取り始める。
「最初だし先ずはこのコースを真っ直ぐ滑ってくれ」
そう言って先生が指したのは、ただ滑るだけの何の変撤も無いコース。小学生でも簡単に滑れそうだ。
「じゃー高橋、お前から行け」
「え!なんで俺!?」
「スキーをバカにしただろ今」
「してませんよ!」
「うるさい!ここでは俺がルールだ」
「職権乱用にも程があるだろ!!」
「良いから滑れ!」
「うっ…分かりましたよ」
言い合っても埒が開きそうに無いので渋々滑る俺。えーっと普通に滑れば良いんだよな…?
…………………………。
「よっと」
…………………………。
「?」
あの…俺滑り終わったんだけど、皆さん無反応?と思った時だった。
『おおーっ!』
「うえっ!?」
何か吠えられました。
全員が火が着いたように滑り出しました。
半分以上が派手に転びました。主に女子。下から見てて滑稽でスゴい哀れでした。
「はー楽しいー!」
カイトが勢い良く滑り終えて笑っている。
「な、何とか滑れたよぉ〜…」
「偉いわハルカ!よく頑張った!」
少し遅れてホンジョーさんとそれに合わせていたアミが降りてきた。会話からして二人とも転ばずに滑れたようだ。
「ホンジョーさ、今日の為に特訓してたらしいぞ?」
「そうなのか?」
「おう。アミから聞いた」
たまに学校休んでたのはそのせいだったのか……成績大丈夫かホンジョーさん?
「にしても…」
「ああ…」
カイトと共に上の方を見上げると、そこには無惨な光景が広がっていた。
「いった〜い…」
「何か…雪玉が飛んできて…」
近くで転んでる女子達の言葉が聞こえてきた。…雪玉?そう言えば何処からか白い物体が幾つか飛んでたような。気のせいだと思ってたんだけどソレとこの光景が関係してるのか?頭押さえてる奴も何人か居るし…。
う〜ん何が起こってるんだろ?
「ふっふっふっふっ…大成功だね」
サクラです。でも今の私は違います。
「ちょっとサクラ!これ寒いんだけど!」
「我慢だよチアキちゃん」
「でもまさか雪だるまの中に居るなんて誰も分かんないよねー」
「そ〜そ〜♪」
そ〜なのです。私他三名は今雪だるまの中に居ます!さっき兄が見てたあの雪だるま達です。
「でも口の部分から雪玉が撃てるなんて…どんな構造なんですかチヅルさん?」
チアキちゃんが言ったようにこの雪だるま、雪玉が撃てるのです!最早最強。スキー場においては敵無しなこの発明をしたのは紛れもなくチヅルさんだ。ホントに努力の方向性を間違えてるよねこの人は。楽しいから良いんだけど。
「しかも動けるしねー」
カヨちゃん…もとい雪だるまがもぞもぞと不自然に動き出す。もう何でもアリだね。人が入れて雪玉撃てて動けて中から外が見れる雪だるまって何?反則級でしょ。
「でもこれのお陰でカオルさんを護れるわね!」
「うん、確かにー」
そう…私達がさっき雪玉を皆目掛けて発射したのはカオル兄とカイトさんを悪い虫から護る為だったの。詳しく言うと、私とチヅルさんがカイトさんを、カヨちゃんとチアキちゃんがカオル兄をって形で。
「さ〜戦いはまだまだ始まったばかりだよ!みんな張り切って行くぞ〜!!」
「「「おー!!」」」
チヅルさんの言う通り、私達の戦いはこれからだ!カイトさん、あとついでにカオル兄!二人は私達が護りきってみせる!
「そう、真実はいつも一つ!」
「「「いやそれ違うから」」」
小学生の頃にこんな雪だるまに憧れてて…私の性格は昔っからこんなんです。代わり映え無くてスミマセン(^^;