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─47日目 ひょうと歯医者と爺と飴─


「ひょう」


「…ひょう?」


お早うございます、カオルです。豹ではありません。そう言ったのは右の頬を擦りながら教室に登校したカイトです。


「ひふはひほーよー」


「スミマセン何言ってんのか全く解りません」


「ふー……」


ん?携帯取り出してカチカチと打って……。


『実は昨日よー、って言ったんだよ』


「あ、そうだったのか?」


「ほう」


おう、って言ったんだと思うよ彼なりに。


「てかさ、何でそんな喋り方になってる訳?」


カチカチ。


『昨日家に親父の仕事仲間が遊びに来てさー』


「ほうほう」


『俺も話に混ざったりしちゃったり』


「ふむふむ」


『すると例の如くケーキばっか持ってきてて』


「いや知らねーよ」


『それをかなり食べさせられたんだ』


「へー。どんなもんかは知らないけどさ」


『30個』


「うおすげぇ!」


こいつは予想外な数値だったゼ!


『で、そのまま一日中どんちゃん騒ぎ』


「はぁ」


『朝になったらずっと歯が痛むようになっていたと』


「歯が?」


『おう。良い具合にズキンズキンと』


「それ虫歯だろ。間違いなく」


『やっぱり?』


たった一日でなるなんて考えられないけど、それしか無いだろ。


『俺って虫歯になりやすい体質だからさ。よくあんだよなこういうの』


「どんな体質だ」


『まぁそんな訳で今日歯医者行くのに付いてきてくれ』


「は?」


何で俺が?


『虫歯だったら治療するじゃん』


「うん」


『当然金かかるっしょ?』


「うん」


『足りないかもしんない』


「…今幾らもってる?」


『千円』


「神がかった安さじゃないと払えない額だな」


『だから付いてきてくれ』


「また金を貸せと?」


『一時的にな。明日には返すから安心しろ』


「別に良いけど……」


お前の親は歯の治療費すら出してくれないのかよ………。


『いやぁ虫歯だったらお前自身の責任だって言われたから金出してくれないから助かったぜー』


「正論だけど納得いかないな」


『どーでも良いから今日頼むぞ?』


「わかったわかった」


『じゃー放課後、体育館の裏で待ってます♪』


「気色悪いからやめろ」


『冗談だって(笑)』


「当たり前だバカヤロウ」






『放課後です』


「イキナリどうしたんだお前」


歯医者さんの前まで来ました。夕飯の買い物もしたいしさっさと終わりたいのですが……。


『歯医者前ー歯医者前ー』


「いいからさっさと入るぞ」


『いやん、ノリ悪いわね』


「俺帰っていいか?」


『冗談だって(笑)』


「謝るのにさっきの引用してんじゃねーよ」


『気にすんなよ』


「お前が普通にしてくれてたらな」


そして中に入る俺達。


『いらっしゃいませー』


甲高い声が響く。歯医者でいらっしゃいませはどうかと思うんだが。


『今の俺だよ』


「紛らわしいわ!」


『すいませーん、予約してたんですけど』


「無視かい!?」


「あなたも検診ですか?」


「違いますよ!!」


「は、はいぃ」


『病院ではお静かに!』


「すいません!」


カイトに話す勢いのまま言ったせいで受付の人が少し怯えたご様子。何か悪い事しちゃったな……後ろの方から聞こえてくる『萌えーっ!』とかは無視しておこう。関わったら負けかなって思ってる。


「ではこちらへどうぞ」


『はーい。じゃー行ってくらぁ』


「おう」


携帯を持った手をひらひら振りながら奥へと入っていくカイトを見送り、俺は保護者用の椅子へと腰掛けた。お、座り心地が良い。


「ちょっとそこの人」


「はい?」


声を掛けられ顔を上げると、顔面の八割が白い髭で覆われたお爺さんが杖をついていた。


「どうぞ」


「おやおや悪いのう。でも結構、隣よろしいかな?」


「あ、隣空いてましたね」


電車で席を譲って断られた心境になりつつも座り直す。


「ふぅ…ところで初めて見る顔じゃな少年」


「はい。友達の連れ添いで来たんです」


「そうかいそうかい。友達思いのいい子だ。飴を上げよう」


「は、はぁ…」


「さて、初めて来たという事は知らないんじゃろう?ここを……」


「まぁ何も知りませんけど…何かあるんですか?」


「痛いんじゃ」


「………は?」


「今に解るぞ。ほっほっほ」


「……?」


チュイーーーン。


『あ゛あ゛ーーー!!』


「!?」


その時だった。ドリル音とカイトの悲鳴が聞こえたのは。


『ほろろろろろろ!!』


「!!?」


悲鳴が変になりました。


「ほら、少年のお友達もあんなに苦しんでおる」


「そ、そんな…たかが虫歯の治療なのに痛がるハズが」


最近ではプラスチックか何かを塗って固めるだけで終わるらしい。技術進歩万歳。


「そう、虫歯なのに痛いんじゃよ。彼らはドリル一本で治療するんじゃから」


「ドリル一本!?」


ドリルって…あのドリルだよな?穴掘ったりするあのドリル、だよな?


「そうじゃよ。なんでも『ドリルは漢のロマンだ!』とか言っててのお」


「あー成る程……」


多分あっち寄りの人達だ。きっとそうだ。


「全く…あんな物の何処が良いのか。わしには解らんわい」


ほっほっほ、と笑いながら髭をいじるお爺さん。


「それにしても長いなカイトの治療。もう40分経つけど」


「あと1時間は掛かるじゃろな」


「え!?」


「何せドリルだけじゃからの」


「…………」


「帰るのかね?」


「はい。すみません治療費先払いしたいんですけど…」

支払いを終えて外へ出る準備をする俺。


「じゃあこれで。飴、有り難うございました」


「いいんじゃよ。虫歯に気を付けてな」


「はい」


一礼してから歯医者を出る。風が冷たい。


「さーてさっさと買い物に行かないとなー」












─翌日。


「おーっす!絶好調だぜ!!」


「ひょう」


「…ひょう?」


「はがひはい」


「何で!?」


「ひはへーほ!」



…昨日とは違う歯医者で診てもらい治りはしたものの、何が原因だっんだろう?昨日は飴ぐらいしか甘いものは……。




…もしかして、あの飴か?


ポケットに入れっぱなしだった包み紙を広げてみる。


『糖分120%』


…………………………。






あんのクソジジイィィィィィィィィ!!!


その後包み紙を引き裂いて川に投げつけた時に何処からか老人の笑い声が聞こえた気がしなくもありません……。


昨日。  「あーやっと学校終わったよー」 「今日は講習あるからまだだぞ」 「…え?」    「あー今度こそ終わった」 「お前歯医者行くって言ってなかった?」 「…え?」    「お、終わった…やっと家に着いた。ただいまー」 ぴろーん♪ 「あ…携帯電池切れだ。充電しないと…あれ、充電器が見つからない」    …結局見つかったのは今朝でした。丸一日投稿も書き溜めも出来ず…無念でしたよ涙

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