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─43日目 何でもアリのお姉様─


──拝啓、皆様。


俺、カオルって言います。


早速ですがここでクエスチョン。


朝目が覚めた時から俺が天井に吊るされてるのは何故でしょう?


犯人は判ってる。一言で言えばイレギュラー。


理由もどーせ理不尽な物だろう。


「おっはよ〜!清々しい朝だね〜」


「ええそうですね」


俺を吊るしているこの縄とアンタが居なければの話だが。


「ところでカオルは何故にそんな格好なのかな?」


「さーどうしてでしょうねー」


よく言えるな。前頭葉握り潰してやろうか?無理だけど。


「あ、ゴメン。それやったの私だ」


チヅルさんの後ろからひょこっと出てきたパジャマ姿のサクラが言った。お前だったのかよチクショウ。


「…何でやったんだ?」


「あわよくば生け贄になってくれないかなと」


「うぉい」


妹に生け贄に捧げられる俺って一体……。


「さーさーそんな事より朝御飯だね!今日はおねーさんが作ってあげよう」


チヅルさんが手をパンパンと叩き、袖をまくりあげながら台所へ向かう。


当然吊るされてる俺に止められる訳も無く……。


「ぐぅ」


コタツに顔以外を突っ込んで眠るサクラに止められる訳も無く……って縄ほどけよ縄!


「はぁ……」


でも料理とかなら別に任せて大丈夫かも知れない。あんな性格とはいえ元々の質が一般ピーポーとは段違いなのだから。


例えば初めてやるゲーム、難易度にもよるが慣れるのに大抵一日は掛かると思う。サクラで半日、俺でも三時間だ。


それがチヅルさんの場合は、


五分。


RPG、格ゲー、シューティング、スポーツ、テーブル、パーティ、etc……。


どんなゲームでも五分。カップ麺の総製作時間と何ら変わらない。RPGなんて主要人物の顔見ただけで話の流れと各キャラの技の系統が分かるらしい。最早超能力の域だ。ゲーマー?なにそれおいしいの?って感じだ。


だから料理も大丈夫だと思う……アレ?どうしてだろ。


台所の辺りから虹色の光が放たれているのは。


「よーし出来た!」


その光の中から笑顔で現れたチヅルさんの手には見た目普通、味は未知数の料理が盛られた人数分ある皿。


手の震えが止まらないのは気のせいだろうか?


「それより何時までそうしてるのさ。ほれ」


チヅルさんの右手がブレたように見えたと同時に縄がほどけ自由となった俺。


「とっとと…」


床に着地した俺は天井を見てみる。


「……アレでやったのかよ」


そこには二本の爪楊枝がしっかり刺さっていた。チヅルさんはあの爪楊枝を投げて(俺を縛ってる部分と天井に吊るしている部分の)縄を切ったのだ。


「爪楊枝だし天井の傷も目立たないでしょ?」


「そりゃそうですけど」


気を遣うならせめて昨日からにして欲しかったですホントに。


「ほらサクラ〜、朝御飯食べるよ〜?」


「うー…」


コタツから出されぷらーんとチヅルさんに持たれてるサクラは実に眠そうな顔をしている。






こうして虹色の光が収まったのを確認してから、朝食を頂く事にした。


「今回は和風にしてみた。二人ともそっちのが好きだったよね?」


確かに目の前には白米、味噌汁、焼き魚等々、和の朝食を代表するものばかりが並んでいる。


「まぁパンよりはご飯派ですね」


「私もー」


「ささ、腕が上がった私の料理を召し上がれ〜」


「…覚悟は決めたか、妹」


「勿論だとも兄者」


誰だお前は。あと渋い顔してるつもりか知らないけど愉快な表情になってるからやめろ。


「では!」


「いざ鎌倉!」


「「いただきます!!」」


魚をぱくり。


サクラも魚をぱくり。


もぐもぐもぐもぐ。


ごくん。


………………………。


我が家に沈黙が走る。


ずずーっ。


味噌汁を飲む。


ごくんっ。


………………………。


「…美味しい」


その味は、俺達が想像していたものとは180度違っていた。


普通に美味しい。それが素直な感想だ。


「ふふふ、これが私の実力だよ!」


得意気に鼻を伸ばすチヅルさんは放っておいて。正直驚かされた。期待はしてなかったけど…まさかそれを遥かに凌駕するなんて。流石は天才といった所か。






「「ごちそうさまでした」」


「お粗末さま〜」


朝食を食べ終えて食器を台所へと運ぶ。


そして一つの素朴な疑問が浮かんだ。


「さっきの光は何だったんだろう……」


チヅルさんが調理している最中に台所から放たれた虹色のアレである。


「台所は無事みたいだな」


一応外傷、故障は無さそうだ。


…皿洗いを俺に任せてサクラとぴーえすつりーで遊んでいるチヅルさんに聞いた方が手っ取り早そうだな。


「ねーチヅルさん」


「ん?なに〜?」


「朝食作る時に何かやらかしませんでした?」


「?別にしてないけど〜」


「うにゃにゃにゃにゃ!」


「お、やるようになったなサクラも!久々に少し本気を出してみようかな〜♪」


「……………」


もう聞かないでおこう。これ以上聞いてもロクな事がなさそうだし。あと今二人がやってるのは新しいソフトで格ゲーだ。何となく名前は伏せておこう。


「ああそれとね〜」


「はい?」


「私月曜までここに泊まるから、ね!」


「わ、やられた!」


「あっはっは〜、まだまだツメが甘い」


「むぅ、もう一回!」


「良かろう。何度でも相手になってやろうぞ!!」


「………」


ナンデスト?


こんな日があと二日も待ち構えてるんですか?


「ありえねぇ…」


どうやら今週の休みは彼女によって無意味な物となりそうです。


──敬具。











おまけ。


「あーまた敗けた!」


「ふっ、もう終わりかな?」


「じゃあ次は俺が相手だ」


「ほほぅ」


「カオル兄!私の仇を!」


「おうよ!こんな才能のカタマりに負けてたまるか!」


「やれるものならやってみなさ〜い♪」






結果。


「や、やっと勝った…ぞ」


「あちゃ〜油断しちゃったよ」


「ゆ、指の動きが見えなかった…」


戦績:1勝274敗。


ありえねぇ……。


出だしに拝啓と書いたら最後には敬具と書かないとダメらしいですね。テレビを見て知りました(^^ そして数日前に誕生日を迎えた私。また一つ大人の階段を登り、自身の何かが変わる切っ掛けになれば良いなーとか思ったりしてます笑

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