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─3日目 マンゴー甘党桃プリン─


「マンゴープリンが食べたい」


突然俺の部屋のドアが開き、その言葉が耳に入る。


「はぁ」


ども、食べたいられたカオルです。自分で言っといて何だが食べたいられたってなに?


さてはてこの新語の原因である発言者、妹サクラが今度は何を言い出すのかと思えばマンゴープリンですかい。


「その前にノックぐらいしろ。勉強中だぞ俺」


来週辺りからテストだからやってるのだ。受けるの嫌だけど。


「カオル兄の心のドアにはノックしたよ」


真面目な顔してなにを言うとるんだこのアホウは。


「そうか、なら一度近くの病院のドアをノックしてこい」


「間に合ってるからいい」


目一杯アウトだっての。まあ何時までも相手にしてたらキリがないので話を戻しましょうか。


「んでマンゴープリンがどうしたって?」


「食べたい」


「あっそ」


「さっきテレビで写ってたの見たら急に食べたくなって」


「成る程、じゃあ買ってくれば?」


「買ってきてよ」


状況把握ぐらいして欲しい……無理だったな。正直そこまで期待はしてなかったけど。


「あのなぁ俺今勉強中なの解る?」


「見りゃ解るよ、何言ってんの?」


何言ってんのはコッチの台詞だよチクショウ。


「なら自分で買ってこい」


「ひどいカオル兄!こんな暗い夜道をか弱い女の子一人で歩かせようなんて!」


安心しろ、夜道でお前をどうにか出来るのはゴリラくらいのもんだ。


とは流石に言えないので訂正。


「今まだ夕方だじょ!?」


時刻は四時、冬とはいえまだ陽は沈みきって無い……あと舌痛い、噛んだよ噛んじゃったよ。


「でももう沈みかけだじょー?」


コノヤロウ俺が噛んだからってマネをしやがる。それだとどっかの国民的アニメの某キャラクターみたいな喋り方じゃん。


「とにかくっ!外も寒いし俺全然関係ないし嫌だからな!!」


「誤魔化したねカオル兄」


不必要な時だけ鋭いなー…全く、親の顔が見ていたいもんだ。って俺の親でもあるんか。


「ハイハイわかりましたよ私が自分で買ってきますよー」


ここにきてサクラが漸く折れた。最初からそうしてくれればよかったのに…。


「……あ、それからもう一つ」


「何でしょーか」


突然思い出したかのようにサクラはスカートのポケットを漁り始める。スカートにポケットってあったんだなー意外な盲点。


「これ」


そして出てきたのは一枚の写真……ってうわぉい!!?


「何で俺の入浴シーンがほわいほわっつ!?」


「んーこないだ撮ったの」


こないだ!?何時だ!?


「まぁこれは置いといてさ」


「置いとけるかぁ!」


「どうする?マンゴープ」


「買います買いに行きます行かせて下さいサクラさん」




くそぅ……そんな訳で買いに行かされた可哀想な俺。でも一体どうやって撮ったんだアレ。


さて…問題のマンゴープリン求めてやってきたのは近くのケーキ屋さん。


その名も『甘党通り』。見る度思うがなんちゅー名前だ。実際にこんな通りあったら儲かりそうだよなぁ歯医者。


あ、今人出てきた。彼女もこの砂糖の匂いがこべりついた道を通ってしまったのか…俺ももうすぐ同じ目に合うんだけど。


えーいもういい!さっさと買って帰って写真奪い返してやる!


いざ甘党の門をくぐらん!


「いらっしゃいませー」


…あら、中は普通なんだねー、店員さんも営業スマイルで迎えてくれたし。うん、雰囲気は良い。


「えっと…マンゴープリンってまだ売ってます?」


一応確認はしとかないとな。恥かきたくないし。


「あーマンゴープリンですか?それが……」


「へ?」


「先程完売いたしまして…本日分はもう売り切れてしまったんですよ。」


おーまいごっど。


まさかのすれ違いで売り切れとは……。


なら仕方無い。手ぶらで帰るのも悪いし、代わりに何か買ってってやるか。


「んーそれじゃあ……」




──10分後。


「ただいまー」


「おかえりーマンゴープリン」


「マンゴープリンかよ」


今は俺よりマンゴープリンが上ですか?そっか…。


……や、誰も落ち込んでないよ?グスンッ。


「それよりカオル兄!ただいま、じゃなくて『ただいマンゴープリン』でしょ!?マンゴープリンに失礼だよ!」


どこまでマンゴープリン要求するんだ!?しかも食い物に対して失礼とかあるのか普通?


「あるよ!」


「イキナリ!?俺口に出して言ってないぞ!?」


でもやっぱあるよな…マンゴープリンごめんなさい。


「顔に書いてるもん」


ほーどれどれ鏡で確認を…ってバカ!


「んじゃ言ってやる!ただいマンゴープリンは売り切れだったんだよバカヤロー!!」


「なんですとーっ!?」


ホントですとー。


「そ、そんな…ならその中身は何なの!?」


サクラが涙目で俺が手に持っている袋を指差す。


「ああ…これはな」




時は遡り甘党通り店内にて。


「マンゴープリンに限りなく近い食感のヤツ下さい」


「食感…ですか?」


「はい。味はなんでも構いませんから」


マンゴープリンが無いならせめて食感だけでも…と思った俺は店員さんにそう頼んだ。因みに男なんだよこれまた意外。


「それならコレとかどうですか?『桃プリン』。美味しいですよ?」


「確かにこれなら食感もマンゴーに近いかも…」


けど桃ってこの時期あんまり入荷しないんじゃありませんでしたっけ?どうやって作ったんだか…。


「この桃実家で育てた桃なんですよねー」


成る程納得。ビニール栽培でもやってんのかな?詳しくは知らないから何とも言えないけど。


ん?


実家で育てた?


それを商品に使ってる?


普通の店員には難しいんじゃ?


つまり?


「貴方が店長?」


「はいーそうですよ」


自分のネームプレートをちょいちょいとしながら言った自称店長。うわ、マジで店長って書いてる。この店レジとか店長がやってるのかよ。


「私は細かい作業苦手でしてー」


なら何故こんな仕事してる。


「……まぁいいや。桃プリン二つ下さい」


「はい只今ー♪」




「─と、いう訳だ」


一通りの説明を終えて袋から取り出した箱を開けて噂の桃プリンをサクラに見せてみる。


「うーんでもマンゴー…」


「今日は諦めろ。また明日に一つ特別に作ってもらうように頼んどいたから」


「ホント!?」


サクラの瞳の輝きが増した。単純だなー。キラキラ効果音鳴ってるよすげー。


「おう。でも自分で買いに行けよ?」


「わかってるわかってる♪」


鼻歌混じりに桃プリンのフタをめくってる…マンゴーの代わりが務まって良かったな、桃。


「それじゃあ」


「はいはい」


「「いただきまーす」」




─翌日。


「ただいまー…ん?」


「おかえりー。どうかした?」


「何でだろう?桃プリンがテーブルの上に」


「私が買ったの」


「マンゴープリンは?」


「今日学校で『桃プリン美味しいよねー。マンゴープリンよりも』ってカヨちゃんが言ってた」


「…さいですか」


とっても流されやすい妹でしたとさ。


あと頼んだマンゴープリンはその日に電話してご臨終となった。ちーん。



…俺の労力返せーっ!


桃ってどうやって育てるんだろうねー(笑)

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