─28日目 すげぇ。─
「どっさりだね」
「どっさりだな」
どっさりなんですサクラです。何がどっさりかって?
「毎年スゴイ量だよね、年賀状」
今私が言ったように年賀状がなんですよ。
「恐らく今年も半分以上は母さん宛てにだろうな」
「それなんだけどさ」
毎年気になっていたので私はカオル兄に聞いてみた。
「ママって知り合い多くない?」
「多いよ。世界中にいるだろうから」
「ワールドクラス?」
「そんなとこだ」
ママすげぇ。
「先ずは年賀状を分けないと。サクラ、手伝って」
「合点承知の助!」
「…そのボケ書いたら漢字だらけで伝わりにくいな」
─数分後。
「よし、終了!」
「早っ!!カオル兄早すぎでしょ!」
軽く五百枚を越える年賀状を数分で分けて、その上番号も全部メモしたんだよ!?
「毎年させられてるんだから慣れてるんだよ」
「カオル兄は慣れすぎ!」
「サクラだってあと半分だけだろ?」
「そうだけど…」
「ほら頑張れー」
「むぅ」
─更に数分後。
「終わったー!」
私も年賀状を分け終わり、二人でそれらをまとめた。
出来たハガキの山は四つ。私、カオル兄、ママにそれぞれ届いた分と家族宛てに届いた分だった。
「…パパ宛てのが無いね」
「ああ、それなんだけどな」
いつもはあるのに、と思っていた私にカオル兄が口を開く。
「昨日取りに来たんだ」
「え?いつの間に」
「サクラが寝てからだな」
「昨日は半日以上寝てたからそれじゃ解んないよ」
大晦日に夜更かししたから眠かったの。
「夕方だったかな。イキナリ来て自分のと母さん宛ての数十枚持ってったんだ」
「…なんでママのも?」
「『これは直ぐに届けないといけない!』とか言ってたから、多分仕事関係の人からのを」
「ふーん」
「さ、それよりも俺達は俺達のを整理しないとな!」
「おー!」
こうして年賀状整理は第二段階へ突入した。
「今年はこんなもんか」
私に届いた年賀状は約二十枚。大半は未だ名も無きクラスメイトからのもので構成されている。
「あ、カヨちゃんからだ」
中身も扱いも微妙な年賀状達に紛れていたカヨちゃんからの年賀状を発見。
そこにはこう書かれていた。
「『必勝』」
直筆で、墨汁で。
「???」
流石の私にもわかんにゃい。どういう意味?
「今度聞いてみよっと」
さーさーお次は…ん、サキさんから?
「『明けましておめでとう!!』」
書いてる事は普通。
代わりに写真がおかしかった。
「牛を背負ってる」
言葉の通りです。背負ってるの。サキさんが、牛を。
「…次」
がさごそがさごそ。
「あ、カイトさん!」
可愛らしい丑の絵と『今年もよろしくね!』とメッセージが。
「大事にとっとこー♪」
カイトさんからの年賀状を毎年机に保存してあるのは内緒だったり。
がさごそがさごそ。
「ん?」
ママ宛てのが一枚混じってる。
「…?カオル兄ー?」
「ん、どしたよ?」
「この黒人さん誰?」
その年賀状にはどっかで見た顔をした黒人さんの写真が印刷されていた。
「…サクラのクラスメイトか?」
「居たら怖いよ」
「俺も怖いよ」
「じゃあ何で言ったのさ」
「…字数稼ぎ?」
「なにそれ」
「忘れろ。…ぁ」
「?」
「これ見てみ」
「どれどれ」
カオル兄が指差した黒人さんの下の方には『Yes we can』って書いてて…うにゃ?
「私これ聞いた事あるよ」
「世界の八割が知ってるよ」
「有名人?」
「ハンパなく有名人」
「ママの知り合いなの?」
「マジでありそうだから逆に分からん」
「へぇー…」
やっぱりママすげぇ。
「そういえばカオル兄には何枚届いたの?」
「百枚ちょっと」
「どんだけー」
カオル兄もすげぇ。
─それから。
『もしもしー?』
「もしもしカヨちゃん?」
『サクラちゃん?どーしたの』
「年賀状なんだけどさ、あの『必勝』って一体?」
『必勝?なにそれー』
「…ほえ?」
『私そんなの送ってないよー?普通の年賀状だと思うけど』
「で、でも…」
『あ、ごめんサクラちゃん。今家が騒がしいから、じゃーね』
「ち、ちょっとカヨちゃ」
『プツッ』
「…………」
「おーいサクラー。これポストに入ってたぞ」
「え?」
「カヨちゃんからのだ。良かったな」
「ぅ、うん…」
あの年賀状は誰から送られたんだろ……。
でも新年早々こんな奇怪な年賀状が届くなんて………、
ある意味私もすげぇ。
皆さんは家に届いた年賀状の中に面白い一品はありましたか? そんな気の効く友達がいる人、すげぇ。かもしれない(笑)