─20日目 クリスマス・パーティー(前編)─
「メルゥゥゥイィィィィークリスマアァァァァァスッ!!」
「朝っぱらからやかましいわ!!」
おはようさん、カオルです。本日はクリスマス…つまり、今このテンションが少々イカれてる生物……もとい俺の妹サクラが提案したクリスマスパーティーの日なのです。
「いやープレゼントを二つも置いてってくれるなんて、今年のサンタさんは太っ腹だったね!最近流行りのメタボリックってヤツ?」
「限り無く意味を取り違えてるぞ」
自分が太ったからプレゼントを増やすサンタが何処にいる?
「それとな、サクラ」
「うにゃ?」
色々と誤解してそうなので片方は母からのプレゼントだと説明してやった。
「じゃあこれがママからの…?」
「多分な。俺にもあったし」
「いつの間に持ってきたのかな」
「知らん。母さんは神出鬼没だから見当もつかないな」
昔からそういう人だったからな。
「そっか……とにかく!昨日は昨日、今日は今日!パーティーの準備しないとね」
「昨日の事で騒いでたのはお前だけだろ」
「過去は振り返らない!」
突然部屋へと走っていったサクラを見つつも俺はパーティーの料理の準備を始めた。
母さんは、サクラが小学生になった頃から年に数える程しか家に帰らなくなった。仕事が忙しくなった為、海外にもしょっちゅう行っている。
そのせいでサクラには母さんとの思い出があまり無い。さっきの行動もそれが理由だったりする。
でも、それでもサクラは、母さんが大好きなんだ。それだけ信頼されてる、って言うのかな?
「…頑張るか」
母さんの分も俺がしっかりしないと!
先ずは今日のクリスマスパーティーだ!
「よっしゃ!」
─夕方。
「メリークリスマース♪」
思ってたよりも早くカヨちゃんが家に来た。俺が玄関に行った時には既にサクラが笑顔でそれを迎えていた。
「カヨちゃんいらっしゃーい」
「久しぶりだねカヨちゃん」
「サクラちゃんにカオルさん、こんにちわー」
ぺこりと頭を下げられたのでこちらもつられてぺこり。
「もうすぐしたら準備終わるからコタツにでも入って待ってて」
「はーい。それじゃお邪魔しまーす」
「お邪魔されまーす」
「俺は今までお前に邪魔されてたんだけど?」
「過去は振り返らない!」
気に入ったのかそれ?
「振り返らないの!」
「はいはい…」
「カオルさんカオルさん」
サクラを軽くあしらっていると、ちょいちょいとカヨちゃんに呼ばれてるのに気付いた。
「どうかした?」
「ちゃんと頼んでおいてくれましたか?」
「ああその事か。大丈夫、しっかり言っておいたから」
「そうですか。ありがとーございます」
「いえいえ。俺だって一応アイツの兄貴だしさ、これくらいはしないとね」
「二人で何コソコソ話してるのさ?」
「何でもないよー」
俺達を怪しむサクラだったが、カヨちゃんの笑顔と話術に流されそのままコタツにて待機する形に。カヨちゃんすげぇ。
「今日は鍋なんだー」
「私が頼んだんだよ。『心も体も温まるものを!』って。そしたら鍋に」
「不満があるなら食べなくてもいいぞー?」
「ビバ鍋!天晴れ鍋!」
「あはは、サクラちゃん面白い」
そんなこんなで雑談しつつも準備が整い、
「ちわーっす」
「来たぞー!」
タイミング良く残りの二人もやって来た。
「お、来たか」
「カイトさーん!」
俺が出迎えようとした時には、またもやサクラが玄関にいた。足速くなったなぁ…って感心してていいのか俺?
「メリークリスマス!サクラちゃん」
「メリクリですカイトさん!あとこっちの人は…ハテ?どっかで会ったよーな」
「さ、サクラ!?何でお前がカオルの家にいるんだ!?」
「あ、会長知ってたんスか?サクラちゃんのこと」
「何でって…私の家でもあるんだし」
「…は?」
「??ま、メリークリスマス!ってことで」
「そ、そうだな!メリークリスマス!!ってことだ」
「メルゥゥゥイィィィィークリスマアァァァァァスッ!!ってことだよ」
「おいそこの話が噛み合ってない奴らさっさと上がれ」
何かキリが無さそうだしさ。
「あ、サキさんだ。思い出した」
「今頃!?」
「良かったっスね会長」
「何がだ!?」
「初めましてー」
「誰だ!?」
「カヨです」
「私はサキだ!」
「セイトカイチョーなんだよ」
「へー」
「良かったっスね会長」
「だから何が!?」
「性と快調さんって面白い人なんだね」
「字が違う!ホントに小学生かお前!?」
「「さぁ??」」
「否定するなよ!サクラまで!」
「良かったっスね会長」
「お前さっきからそれしか言ってなくないか!?」
「あ、バレました?ボイスレコーダーでずっと再生してただけなんで」
「私の扱い酷くない!?」
「ハイこれ。サクラちゃんに上げる」
「家宝にします!」
「それ言い過ぎだよー」
「遂には無視か!?」
「「「メリークリスマス」」」
「何で!?」
「やかましいわぁっ!!」
来て早々コイツらは…少しは一人黙々と食器並べてる俺の気持ちを考えようと思わないのか!
「ん?サクラ、この妙に痛め付けたくなるぬいぐるみは何だ?」
「猫ボコだよ」
「殴っても?」
「のーぷろぶれむ」
「せいやっ!」
ズドンッ!と鈍い音に遅れてぶにょっ。
「おーなんかスッキリしたぞ!」
「さすが快調さんですね」
「だから違うと!」
「あれ?んじゃあこっちのは何だ?」
カイトが手にしているのは黒い胴長の猫のぬいぐるみ。俺…じゃないか。サンタさんがサクラに渡したクリスマスプレゼントだ。
「…弟?」
何故に弟。何故に疑問形。
「そっか弟か」
「なるほどー」
「そう言われると見えなくもないな」
「でしょ?」
何故に皆納得。いや別に気に入ってくれてるなら良いんだけどね?
「殴り心地はあんまりだった」
当たり前だ。殴る用のぬいぐるみなんざどっかの幼稚園児のお母さんだけが持ってりゃ良いんだよ。
「でも蹴りにはもってこいだった」
ちょっとぉぉぉぉぉ!?
「なんてのは冗談で。枕代わりに使えるよ」
ずっこけた。冗談に聞こえなかったから余計にずっこけた。
「確かにもふもふしてるしねー」
「今度貸したげるー」
「ホント?ありがとーサクラちゃん」
「なんのなんの」
「じゃ、じゃあ私にも」
「サキさんはダメ」
「ホワイ!?」
何故に英語。
「一日でズタボロになって帰ってきそうだから」
「うそぉ!?」
や、確かにそーゆーイメージありますよアンタは。
「俺も最近寝不足でさ。良かったら貸してくんね?」
「ハイ喜んで!!寧ろ私も」
「カイトは良いのに…私はダメ…」
「まーまー、人生色々ありますって」
…何だこの光景。鍋持ってくタイミングが全く見付からんじゃないか。
え?俺が今何処にいるかって?
台所から傍観してるんですよ。たまにはこうしてのんびりと…
「それはそうと鍋遅い!」
「カオルまだかー?」
出来ないのは解ってますよチクショウ。
「はいはい今持っていきますよ」
なべつかみで持ってコンロまで…ん?コンロはいずこ?
「私の名はコンロ仮面」
「えーからさっさと置けや」
「すいません」
しっかり真ん中に合わせて…と。
「じゃ食べますか!」
「カオル兄、火」
「おぅ」
カチッとな。
……しーん。
「あれ?ガスボンベ取り換えといた筈なのに」
「私の名はガスボンベ男爵!!」
「アンタ女だろうが。さっさと返せ」
「つい出来心で」
出来心で小学生と同レベルってどうなのよ高校生。
気をとりなおしてカチッとな。
うん、今度は問題無し!
「それじゃあ」
皆で手を合わせて、
「合掌」
「葬式か!」
「つい出来心で」
「またアンタか!」
「「「いただきます」」」
「「俺(私)ら無視か!?いただきます!!」」
何だかんだでようやく鍋を食べ始めた俺達。
「んまっ」
「おいしー」
「う、うまいはふはふはふはふ」
「カイトうっさい」
「俺、猫舌、なんすよはふはふ」
「そうか。でも黙れ」
「無理っスはふはふ」
「会長命令だ!」
「はふはふ」
「ぐっ…これでも無理か」
「ところで今回は無難に寄せ鍋にしてみたけど…どうかな?」
「文句無し!」
「うまうまです」
「はふはふだ」
「おかわりだ!」
「…まぁ全部誉め言葉として受け取っとこう」
─そして鍋を食べ始めてから約10分が経過しただろうか。
「おお、そう言えば差し入れがあったんだ」
会長が箸を止めて隣に置いてたスーパーの袋を取り出した。
「え、そんなわざわざ良かったのに」
「いいってことよ。飲み物だしさ、みんなの分コップに入れてやる」
「ごっちゃんです」
「それちゃんこ鍋だよー」
「はふはふ」
会長が台所へ向かったその時、
何かよく分からないけど、
物凄く嫌な予感がした。
「どすこい」
「それもちゃんこ鍋ー」
「はふはふ」
…気のせいだと良いんだけど。
え、これ続くの?初めてのパターンだな。
「何か言ったカオル兄?」
「いんや何でも」
──後半に続く。多分。
初めての前編です!ぶっちゃけあんまり書く時間がなかったので次回に持ち越す形に…(汗 今回も多少雑な表現が…(汗×2 とにかく今日言えるのは一つ!! 皆さんメリークリスマス!