─19日目 サンタさんって─
「ばっちこーいサンタ!!」
「食事中にイキナリ喋るな」
もぐもぐしつつのこんばんわ、カオルです。今は正に現在進行形で夕飯を食べてます。
で、俺の目の前でさっきから吠えてはご飯を口からこぼす妹、サクラなのですが…、
「カムオンカムヒアサンタクロース!!」
「シャラップ!!」
テンションが変なのですよ。いや、元々変なのは百も承知ですけどね?コイツが英語使うなんて可笑しすぎるでしょ違和感バリバリでしょ?
確かに今日から冬休みだしその日にサン・タクロース(42)が『俺のプレゼントを受け取りな!HAHAHAHA!!』とかほざきながら子供達の枕元に光速越えたスピードで投げ込むんだもんな。
…自分で言っといて何だが、プレゼント光速で投げたりしたら消し炭になるんじゃねーの?あーあー子供達の夢が……。
「だってサンタだよ!?サンタクロースだよ!?サンタでクロースなおじ様がやって来る日なんだよ!?」
「まーテンション上がるのは解るけど食ってからにしろ。これ以上汚されたら堪ったもんじゃない」
「うん」
もぐもぐもぐもぐごっくんちょっと。
「あーサンタさん早く来ないかなー…」
コタツに移動した後もサンタで頭が一杯なようで。
「お前が起きてる内は来ないだろうな、確実に」
「そう、それだよカオル兄!」
びしっと人差し指を立てながらサクラが言った。
「何が?」
「どうしてサンタさんは子供が寝てる時にしか渡しに来ないのさ?」
何かたまにめんどくさい質問するよな。それなら納得のいく答えで対応してやろうかのぅ。
「恥ずかしがり屋だから」
…誰だ今「しょぼっ」って言った奴。
「サンタさんが赤い服を着てるのは?」
まだ来るか。ここはちょいと捻った答えを…。
「幾つもの戦場を駆け抜け、反り血を浴び続けたからだよ」
「マジっすか!?」
「マジっすよ」
ホントは嘘っすよ。
「じゃ、じゃあ元々の色は!?」
「緑色だったらしいぞ」
「マジっすか!?」
「マジっすよ」
今度はホントにマジっすよ?
「し、知らなかった…」
逆にそこまでサンタを知ってる小学生がいたらこえーよ。
「トナカイにソリを引っ張らせてるのは?」
「真っ赤な鼻がライト代わりになるからだろ。夜道って暗いし」
「何で鼻が赤いの?」
「ケチャップばっか食べてたんじゃね?」
「じゃあテッカテカだね」
テッカテカよりネットネトの方が正しい表現だろうな。
「サンタさんは何処に住んでるの?」
「フィンランド辺り」
サンタの村というものまで在るらしい。村人が皆真っ赤な服着たジジイばっかって…平均年齢高そうだなぁ。
「じゃあそこにトナカイもいるの?」
「トナカイはカナダに住んでるよ」
ツンドラ地帯にかなりいるらしいぞ。鼻は赤く無いと思うけどな。
「どうしてサンタさんはソリに乗るの?」
「飛行機で移動するのは恥ずかしいし、車とかも環境に悪いからだ」
「へー、サンタさんも色々考えてるんだね」
夜空を真っ赤な服でソリ乗りながらトナカイに走らせるのは恥ずかしいとは考えなかったのかサンタよ。…あ、恥ずかしがり屋設定つけたの俺か。
「それにしてもカオル兄、サンタさんにやたら詳しいね」
「ん、まぁな」
小学校の自由研究で発表したくらいだからな。それにその時、父さんに無理矢理ヨーロッパに連れて行かされて『サンタの気持ちになれ』とか言われながら振り回されたっけ…はは、今となっては良い思い出だ。
「へー…じゃ私はそろそろ寝ようかなー…」
サクラがむにゃむにゃと眠そうに言ったので時計に目をやると…あら、もう十時を回ってる。今日は食べ始めたのが遅かったからかな?
「あれー…カオル兄はトナカイさんー…?」
「なんでやねん」
幾らサクラでも小学生なのに変わりは無い。この時間となると何時も寝ぼけて意味不明な言葉を放つようになる。
「俺のプレゼントを受け取りなぁー…」
「はいはい、受け取るのはお前だろうが。早く部屋戻って寝ろ」
「くー…」
「…寝たか」
小さな寝息を立てて眠るサクラ。何時ものコイツからは想像し難い可愛らしさがあるもんだ。俺って兄バカ?
「よっと」
とにかくコタツで寝られたら風邪を引くので、ひょいとサクラを抱き抱えて部屋へと運んでやった。
そんでそのついでに…。
「今年は何が欲しいか言ってなかったからな…」
喜んでくれると良いんだけど。
「むにゃ…」
「…………」
こうして見ると普通の女の子なのに…。
とか思いながらも、
この小さな頭を撫でながら、
「メリークリスマス」
妹の幸せを少し願っていた俺なのであった。
─翌日。
「んむ……」
時計の音と同時に体を起こす。何か無駄に目覚めが良い朝だ。それと、
「………ん?」
枕元に見覚えの無い…包装された謎の物体Xが。
「何だこれ…」
丁寧に包みを剥がしていき中身を確認すると、そこには携帯用のストラップが入っていた。シンプルなデザインで俺の好みの造りだった。
そしてもう一つ、小さなカードが出てきた。手書きで『メリークリスマス♪』と書かれている。
「……母さんか」
カードの字を見ればすぐに判る。これは間違いなく母の字だ。
「あの人いつの間に…でも感謝はしないと、だな」
俺は自然と笑っていた。もう自分は“あげる側”だと思っていたのに、まだ“貰う側”だったから。
何時まで経っても、俺達は母さん達の子だもんな。
「母さんには敵わないや」
ふとその時、小さく舌を出して笑ってる母の姿が、
俺には見えた。
…もしかして末期か俺?
──貴方の元には、
サンタクロースは現れましたか?
そうだった人にも、
そうでなかった人にも、
これからの幸せを願って。
──メリークリスマス。
イブなので今回はサンタのお話でした! サンタさんの住んでる所がフィンランド辺りなのかは…正直分かりません(^^;