─15日目 昨日の真相─
休日の朝って良いもんですよねー。寝坊しても文句言われないし。
あ、どうも、さっき目を覚ましたばっかのカオルです。昨日は何かよく分からない言動をしてしまったみたいで…もう大丈夫なんで心配しないで下さい。
「ん〜っ」
体を起こし、手を上で組んで伸ばしてみる。これ結構気持ちいいんだよね。
「それにしても…どうしようか…」
そう、昨日俺が言った通りクリスマスパーティーのメンバーが一人増えたんです。しかも多分サクラ達とは面識が無い人…。
どうしてこんな事になったのか?イヤ俺は別に構わないんだけど。
全ての真相は昨日…俺達の通う学校にあったのです……。
──昨日。
「うーっす」
「おー」
通学中、俺はたまたまカイトと遭遇した。
「昨日は驚いたぞ。イキナリ電話で『クリスマスに来い!じゃないと色々暴走しちゃうんだよ!!』とか言われたんだもんな」
「あー、悪かった。慌ててたからな」
夢であんなの見たからですなんて言えない。
「まー良いんだけどさ。俺なんかが行ってもいいのかよ?」
「むしろお前が来ないとダメなの」
「何でだ?」
「成り行きでだ」
「はぁ」
夢であんなの見たからですなんて(略)。
「んじゃあその日は空けとくわ」
「おう、頼んだ」
「ところでよ」
「何だ?」
カイトが少し困った表情をしている。
「ウチのクラスでも似たようなのするとか言ってなかったか?」
…ん?
……んん?
………んんん!?
「初耳か?」
「初耳だ!」
ホントに初耳なんだけど!
「あーお前あの時死んでたもんな」
「あの時?」
あの時…あの時…、
ああ、あの時か。
皆は分かるかな?
「誰に言ってるか知らねーけどさ、どうするんだ?」
「んな事言われても…」
今更パーティー中止になんてできないしなぁ…。
もし、もしそうしたら……。
死ぬな。確実に。
「カオルー、体震えてんぞー?」
だって寒気がするんだもん。
「ま、そんな気にする必要無いだろ!自由参加らしいしさ」
「それ先に言えよ!!」
本気でビビっただろ!
「や、そこまで動揺するなんて思わなかったしよ」
「するよ!」
「カーオールーッ!!」
どどどどどどどどどど!!
「カオル!今日こそ我が空手部に」
うるせぇ!!!
ドガ!バキベキボキグチョドゴダンプー!!
「のおぉぉぉぉぉぉあ!?」
「…ん?今何か音しなかったか?」
「知らん」
因みに今の人は……説明めんどくさいし別にいっか。
「でも…カオルが行かないって言ったら皆がっかりするだろな」
「は?何でだよ」
「お前女子より料理上手いし気が利くし便利だし」
「ちょっと待て最後のはどういう意味だ」
「とにかく頑張って説得しろよー」
「はいはい。頑張らなくてもできますよーだ」
そして教室ー。
「おはよー」
「よっ。朝から突然だけど発表!」
「ん?」
「何だ何だー?」
席に着いてカイトが早々に全員の注目を集めた。そして、
「クラスでやるクリスマスのパーティーみたいなやつさ、俺とカオルパスするんでよろしく!!」
俺の代わりに言っちゃったよアイツ。でもまぁこれで問題は解決…
『何ぃーーー!!?』
…あれ?
「カイトはともかくカオルがパス!?」
「カオル君来ないのー!?」
「カイト様もどうして!!」
アルェー?
「料理はどうすんだよ!」
「カオルカムバーック!!」
俺って必要とされてたり?
「空手部にもカムヒアー!」
うっさい黙れアンタは学年すら違うだろーが。
「落ち着け皆の衆!!」
その時、教室の入り口が思いっきり開くと同時に女性の声がした。
ここの学校の生徒なら、誰もが一度は聞いた事のある声だった。
その主は……、
『生徒会長!!』
肩甲骨まである、後ろで結んだポニーテールの髪に凛々しい顔が特徴的な我等が生徒会会長だった。
「あ、会長。ちわっす」
カイトがひらひらーっと手を振りながら挨拶をすると、会長はずんずんと俺達の所まで歩いてきた。
「よーカイト。相変わらず一々カッコいいな、鬱陶しいぞ」
「褒めてんのか貶してんのかわかんねッス」
「なら両方だ」
「なるほどー」
よく解らない会話を交わした二人。実はカイトは生徒会に入ってたりするので、彼等は互いにお知り合いなのです。
「んで会長、何の用で?」
「いや、廊下を歩いてたらみょーに騒がかったんでな。面白そうだったから乱入したのさ」
「そんなんで良いのか生徒会」
「学校は面白い場所であるべきだからな!私が面白ければそれでOK!!」
ぅおい。
「さて、話は大体聞いたぞ。クリスマスパーティー大いに結構!だからカオル、お前休むな」
「無理ですよ。ウチでもパーティーやるんですから。俺はそっちを優先します」
それだけは絶対に譲れない、俺の命の為にも。
「じゃこっちの料理どうすりゃいーんだよ!?」
「そーだそーだ!」
「五月蝿いぞ生徒その1その2!!」
野次をとばした生徒に会長が吠えた。名も無き生徒相手に容赦なく。
「料理なら今日の昼からカオルに作らせる!」
「え!ちょ、何勝手に」
「会長命令だ!」
「俺は生徒会じゃねぇ!」
横暴だしさっきから馴れ馴れしいなこの人は!
「知るか!なら多数決でも取ってみるか?」
「うっ…」
周りの視線が正直痛い…。くそぅ…数で対抗なんて卑怯だぞ。
「…分かりましたよ」
空気に耐え兼ねた俺は渋々その条件を呑んだ。
「よーし!なら早速準備だ!!」
「いやいやいやいやいやいや!授業ありますって!」
まだ先生すら来てないよ!?しかもさっき昼からって言ってたよ!?
「知るか!会長命令だ!」
会長に襟を掴まれずるずると調理室へ引き摺られて行く。
「おーぼーだーっ!」
「はっはっは!そんなに褒めるな!!」
ダメだこの人、俺じゃ勝てねぇ。
「おーそうだ!私もパーティー参加しよう!勿論お前らの方だがな」
「え、いやでも」
「会長命令だ!」
「……はぃ」
そして俺はそこから約7時間も料理の下ごしらえその他諸々をさせられたのだった……。真っ白に燃え尽きてたのはコレのせいだったりもする。
しかも生徒会長が俺の家に来る事になったし…何かややこしくなりそうだな。
……でも俺のこの時の軽い考えが、
後に見事的中するなんて、
思いもしなかった。
いや、だからってあんま期待するなよ?大したことじゃ無いからな?
…ホントだからな!
会長命令だ!って響きが私は好きです(^^# 一度実際に聞いてみたいなー(笑)