─13日目 言い方変えたら7日前─
「一週間前だよカオル兄!」
「んー…なにがだよぅ」
毎度どうも、カオルです。学校から帰り夕飯の準備も済ませ、一段落着いたので昼寝でもしよっかなーって思いそれを実行した瞬間、部屋の扉が勢いよく開かれました。
やったのは間違いない。マイ妹、サクラです。
「だから一週間前なんだってば」
「だからなんのー…くー」
意味わからん事言われたというのもあってか俺の眠気は益々旺盛になりまして…。
「すー…」
寝た。
「どーん」
どーんっ!
「ぎゃんっ」
起きた。この間実に7秒。
「一週間前だけにね」
「だから何のだ!?あと人の上に馬乗りするんじゃありません!」
俺が聞くとさも知ってて当然かのような表情をするサクラ。
「何のって…今日は12月18日だよ?」
カレンダーを指差していたので見てみると、確かに今日は18日のようだ。
んでこの一週間後って事は……?
あーそっか。
「クリスマス、か」
「そうだよ!赤い不審者が来る日だよ!」
「サンタと言え!それに来るのはイヴだ!!」
そりゃ見知らぬおっさんが全世界の子供達の枕元にやって来てプレゼント置いていったら、大人からすればど偉い脅威だけど。
「だってカヨちゃんがそう言ってたんだもん」
カヨちゃん……君、そんな娘だったか?
「ん…まぁ間違っちゃ無いけどさ」
ここは取り敢えず肯定しておこう。ヘタに否定したらコイツの中にある純粋な信仰心(?)を奪い兼ねないしな。
「という訳で質問です!」
ハイ!と右手をぴんと天に突き上げるサクラ。
「はいサクラさん、何でしょう?」
名指し指差しで聞き返す。
「人に指差すなんて失礼だよ!」
ノった途端にこの仕打ちって酷くね?
「すいません…で質問って何だよ」
「サンタさんは何者?」
「は?」
情けない声を出した俺に対してサクラは至って真剣な顔で続ける。
「や、だってさ。サンタさんは子供達の枕元にプレゼント置いていくでしょ?」
「おう」
そういう設定で通ってるな、世間では。
「ならどうやって家に入るの?もし勝手にならスゴいよ。泥棒も顔負けのピッキング力だよ?世界チャンピオンも夢じゃ無い!」
ピッキング力て。しかも他人の家の鍵を開ける技術のチャンピオンってその肩書きどうなのよ?
「家族に許可貰ってるなら…!まさかカオル兄もサンタさんとグル!?」
「グルって言うな。サンタさんに失礼だろが」
「ごめんなさい。そして真相は如何に!?」
うーん困った…どう返事しようか?
…テキトーでいーか。コイツ正直バ…もとい素直だし。
「いや、俺はサンタさんとグルじゃ無い」
あ、グルって言っちゃったじゃん。
「じゃあ不法侵入?」
「それも違う」
「???」
ワケが解らないのか、サクラは頭の上に沢山の?マークを浮かべている。ま、普通そうなるわな。
「実はな…」
「実は?」
「サンタさんは元メジャーリーガーだったんだ」
「メジャーリーガー!?イチローとかあの類いの!?」
「ああ、あの類いのだ」
「ホント!?」
「ホント」
ウソだけどな。
「それとプレゼントに何の関係が?」
「サンタさんはプレゼントを子供達の枕元に投げ込むんだ」
「えぇ!?投げ込むの!?」
「それも19万マイルでだ」
「19万回もニコニコしながら投げるの!?」
それはスマイル。
「マイルはアメリカでの速さの単位だよ。それから19万回もニコニコしてたらキリが無いわ」
「19万マイルってどのくらい?」
「光の速度くらい」
「ハンパねぇ!!」
確かにハンパねぇ。速さもお前の言葉遣いも。
「でもさ、プレゼントを光速で投げても意味無いんじゃないの?ガラスもあるし」
「あー、こっから少し理科のお勉強な」
「ほえ?」
許せ。お兄ちゃんはこんな方法でしかお前を納得させられないんだ。
「ところで時間の流れも光の速さで進んでるって知ってるか?」
「そーなの?」
説明簡単に済ませたいからテキトー言いましたすいません。
「で、光速越えて動く物体って時間戻れんのね。つーか次元越えんだよ」
「ふむふむ」
「つまりな。プレゼント投げて光速越えて次元も越えて枕元にタッチダウンってこと」
「おー」
なんか感心されちゃった。てへっ。
「つまりプレゼント投げて高速道路越えてタッチダウン!おぅいえーってこと?スゴいねサンタさん」
「所々改造施されてるけどそんな感じだ。サンタさんはスゴいんだよ」
これ全部引っくるめると全身ムッキムキ、金髪でガムクチャクチャ噛んでるサン・タグロース(42)の出来上がりってワケだ。うわー見てみてぇー。
「そーだ!」
ぴかーん♪と何かの音と共にサクラが閃いたようだ。
「…何考えてる」
「クリスマスパーティーを開こう!」
「クリスマスパーティー?」
また唐突に…予定というもんを知らんのか?
「だから今から予定を聞いとくの」
「あ、そか」
驚かない。もー驚かないよ?
「カヨちゃん大丈夫かな?」
「さーねー。明日にでも聞いてみな」
「うん」
「折角だし俺も誰か誘うか」
「カイトさん!!」
「…な?」
目をギンギラさせながらサクラが叫んだ。
「カイトさん呼んで!!」
「カイト?んーでもアイツ」
「よ・ん・で!!」
「は、はい…」
…む、そういや皆さんは事情知らないから分かりづらいか。コイツね、カイト大好きなの。悔しいけど。
「えっへへー楽しみだなー♪」
部屋中をくるくる回りながら笑顔を見せる。別にまだ来るって決まってないのになー…。
「お願いね、カオル兄!」
ふと呼び掛けられ気付く。
ああ。
俺、信頼されてるんだ。
なんか嬉しいなコノヤロウ。
「おう、任せとけ」
可愛い妹の為に一肌脱いでやろうじゃないの!!
……来なかったら可愛くなくなるしね。
──来週はクリスマス。
不安と期待が渦巻く中で、
果たしてどうなる事やらって心配しながら、
「くー…」
俺は夢の中へと飛び立った。
─その夢の中で。
「カオル兄いぃぃぃぃ!カイトさんなんで来ないのおぉぉぉぉあ!!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
……絶対頑張ろう、俺。
来週はクリスマス! 一体どーなるんでしょーかねーウフフフ♪(^^#←