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人探し~鳥取編~  作者: 夏目 碧央
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空港~

 佐藤律子は鳥取空港に降り立った。別名コナン空港とも言うその空港は、名探偵コナンの人形と一緒に写真が撮れる。

 律子は同僚の警察官と共に空港を出て、タクシー乗り場へ移動した。エントランスの前には、目につくものは何もない。タクシーも列をなしているわけではない。2台並んでいた。

「すみません。警察の者ですが、少しお話よろしいですか?」

タクシーの運転手は少し驚いた表情をした。

「何でしょうか。」

「この少年を乗せた覚えはありませんか?昨日、なんですが。」

律子の同僚、佐伯良平は、一枚の写真を出して運転手に見せた。

「さあ、乗せてはいないと思いますよ。」

 二人は、もう一台のタクシーに近づき、同じように写真を見せた。

「ああ、昨日乗せましたよ。やけにイケメンだったので覚えていますよ。」

律子と良平は、このタクシーに乗った。

「その少年がどこへ行ったか、覚えていますか?」

律子は思わず勢いをつけて尋ねた。

「ええ。白兎海岸です。私ね、空港から直接海に行くとは思わなかったんでね、“白兎会館”って言われたのかと思ったんですよ。白兎会館っていうのは、教職員関係の宿泊所なんですけどね。そこへ向かっていたら、そのあんちゃんに、方向が逆じゃないですかって言われてね。それで空港に引き返して、そこでメーターをリセットして、それから海岸へ向かったんです。」

「なるほど。では、白兎海岸へ向かってください。なるべくこの少年が下りた場所と同じところで下してください。」


 律子と良平は、警視庁の捜索専門の部署に属している警察官である。律子は45歳。良平は25歳。東京で捜索願の出された人物を探しに全国へ出かける。今回は「佐藤優哉」という17歳の少年を捜索しに訪れていた。彼が昨日の午前中に東京の自宅を出て、鳥取空港へ降り立ったことは確認済みである。携帯電話は自宅へ置いたまま、数枚の着替えとお金を持って出かけたことはわかっている。

 タクシーは、ほどなくして白兎海岸に到着した。

「ここで下しましたよ。」

運転手に言われたのは、白兎神社の前にある、道の駅「神話の里白うさぎ」の広い駐車場だった。国道9号線を挟んで、白兎神社と白兎海岸は向かい合っている。今は夏の初めなので、海水浴客もちらほら見受けられた。国道9号線は、さほど広い道路ではないが、それでも車の往来は盛んだった。今日は土曜日である。

 二人はタクシーを降り、道の駅へ入った。二階建ての建物で、一階は土産物が売っていて、二階は食堂だった。昼食には早い時間だったので、客はまばらだった。その食堂に入る。窓際の席に通された。海岸がすぐ目の前だ。

「佐藤優哉は、海岸に昼頃に着いていると思われますね。ここにも寄った可能性がありますね。」

良平は手帳を出して言った。とりあえず腹ごしらえのため、名物の白イカが乗った海鮮丼を注文した。そして、佐藤優哉の写真を出し、店員に見せた。

「この少年がこちらに来たかどうか、分かりますか?」

「ああ、はい。昨日いらっしゃいましたよ。背が高くて、すごくかっこいい子でした。若いのに一人で来店したので、珍しいなと思ってよく覚えています。」

店員の女性はそう答えた。

「何を注文したか、覚えていますか?」

律子が聞くと、

「お客様と同じ、白イカの海鮮丼でしたよ。」

と答えてくれた。

「どんな様子でしたか?思い詰めている感じとか?」

良平が聞くと、

「そうですねえ。海を眺めていましたねえ。思い詰めていたかどうかは・・・。」

店員の女性は少し考えこんだ。

「ただ、お食事はすべて召し上がっていて。そうそう、私ね、おいしかったですか?って聞いてみたんですよ。そしたら、少しにこっとして、はいって言ってくれました。それほど思い詰めていたとは思えません。」

「そうですか。ありがとうございました。」

良平はそうお礼を述べた。

「何の目的でここに来たんでしょうね。」

店員が去ってから、律子に向かってそう言った。律子はただ、

「うーん。」

と言って窓の外を見た。


 一階へ降り、また写真を見せて店員に少年の行方を聞いて回ると、バスを待っていたという証言を得た。近くに屋根付きの待合室があるバス停があった。そして、その待合室の屋根には、ツバメの巣があり、ひなが3羽いた。

 さて、バスで少年がどこへ向かったのか。とにかくバスに乗ってみることにした。そこへ、外国人がバス停へやってきた。そして、二人に話しかけてきた。日本語で。

「ツバメのひな、可愛いですね。」

「日本語お上手ですね。ご旅行ですか?」

律子がそう尋ねると、

「いえいえ、近くの高校で英語教師をしています。今日も出勤でした。」

外国人はそう言った。

「あの、昨日の午後、この少年を見ませんでしたか?」

「見ましたよ。一緒にバスに乗りました。高校生くらいだと思ったので、話しかけてみたんです。」

「それで、その少年はどこまでバスに乗ったか、分かりますか?」

「さあ、僕が降りる時にはまだ乗っていたので、どこまで乗ったかはわかりませんが、鳥取駅の近くである事は確かですね。僕は鳥取駅行きのバスに乗って、駅の二つ前のバス停で降りましたから。」

「そうですか。ありがとうございます。」

鳥取駅に向かったということは、そこから電車に乗ったのか。それともその辺りで宿泊したのか。二人はバスに乗り、鳥取駅へ向かった。


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