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Counter!!  作者: 大和尚
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 授業が終わると同時に教室を出た俺と詩織。

後ろで柴田と前田が何か言っていたが放置。

俺達にはやる事があるのだ。

現状の確認。

これをしない事には身の安全と、これからの展開に差しさわりが出るだろう。




「くっ、思わぬ弱点だ!」


「どうしたの?カズちゃん」


「数字、光の柱を見るためには見晴らしのいい所にいかないとダメって解った。建物の中だと見える範囲でしか判らん」


「そっか、なるほど」




 俺と詩織は通路を小走りに進んでいる。

話しながら周囲の様子も伺っている。

あいつに付けたままの数字、それを見るためには屋上など周囲を見渡せる場所に行く必要があると解った。

俺が建物の中にいると、あまり役に立たない。


 学校周辺に、あいつがいる可能性は高い。

偶然とは思えないからな。

昨日の今日、お互いの事なんて知りもしない間柄。

やはり俺を追って来たと見るべきだろう。

詩織が教えてくれたように、ブレザーから学校を特定したと思われる。

まったく気にしてなかった。

いつも着ているものだから、当然すぎて考えが及ばなかった。




「屋上に入れる学校で良かったね!」

「おう。最近は閉めっぱなしの所も多いらしいからな」

「良い眺めなのに、もったいないね」

「だな」



 俺達は屋上に向かっている。

玄関から外に出てもいいのだが、関係者以外が入りにくい学校内の方が安全だと判断したからだ。

念には念を入れる。

詩織もいるのだから無茶は出来ない。

そんな事をしたら、信兄にぶっ飛ばされてしまう。

おばさんにも泣かれちゃうかも。

やはり無茶は出来ない。


 他の教室からも人が出始めた。

木を隠すなら森の中。

あいつが俺を追っていたとしても学校内であれば見つけられまい。

同じ様な年頃、恰好をした者達で溢れかえっているのだから。

光の柱の位置次第では、もっと生徒の多い場所への移動も考えなくてはならない。

紛れ込む。

そうして安全を確保する。

あいつは危なそうな奴だったが、学校内までは来れないはず。

少なくとも退校時間までは無理だろう。



 俺と詩織は階段を駆け上る。

そして屋上へと続く扉を開けた。

まだ風に冷たさが少し残っている。

そんな時期だ。

だが天気は良い。

青い空が俺の目に入って来た。




「どこだ?どこにいる?」



 俺は下から見えにくい場所で光の柱を探す。

最悪の事態を想定しての行動。

下から目撃される可能性があるのだ。

俺の隣には詩織。

スマホを操作している。

きっと信兄と連絡を取っているのだろう。


 どこだ……俺は順に視線の先を変えていく。




「あれ?」



 光の柱が見えない。

正面、左右、見当たらない。

俺が消さない限り出続けるはずなんだが……。


 光の柱は俺達の背後、校舎内にあった。




「マジかよ……校内か!?」


「えっ!?うそ!?」



 距離感が掴み難い。

だが近くに光の柱はある。

校内、もしくは学校の敷地内だと思われる位置。

俺の言葉を聞いて驚く詩織。

俺の背後にピッタリとくっついてくる。

俺達を追っているのが確定したと言える。

そうでなければ、あいつが校内に来る理由がない。

詩織が怖がるのも当然。

俺も驚いてるし怖い。

想定しなかった訳ではないが、まさかねぇ……というぐらいの気持ちだった。




「黒いスーツだったから学校関係者に見えなくもないか?アロハシャツとかじゃないもんな」


「スーツだから先生に見えるかも……」


「あいつ鞄を持っていなかったから変装とかは出来ないはず」


「誰かの家族を装って入って来たとか?」


「あり得るな……」



 俺と詩織は可能性について考えた。

あいつが学校内に入って来た方法をだ。

この学校のセキュリティについては入ったばっかりなので判らない。

昨今、厳しくなってると思うが、どうなのだろう?




「俺達の学年や名前はバレてないはず」

「うん。タイの色も同じだし見た目では判断できないと思うよ」


「鞄に名前を入れている訳でもない」

「誰かに聞いて回る事も出来ないね」


「光の柱は少しずつ動いている」

「何かあてでもあるのかな?怖いよ……」



 俺達を特定できる可能性も考えてみた。

昨日、あいつに会った時……制服姿で鞄を持って駅へ向かって歩いていた。

何がある?

いやないはずだ。

顔しか解るまい。

絶対大丈夫だ!


 そう解っていても動いている光の柱は俺を不安にさせている。

いくら自分に言い聞かせても不安は取り除かれない。




「信兄は?」


「えっとね……車で移動中みたい」


「いつごろ来れそう?」


「たぶん四時過ぎじゃないかなぁ」


「そっか……」



 信兄は移動中か……。

早く来てくれ!

俺はそう祈った。

焦る気持ち、不安、そんな感情が渦巻いている。

俺は神様を信じてはいない。

そのくせ、こんな時には祈ってしまうのだから笑ってしまう。

実際に笑っている余裕はないのだけれども。


 光の柱は動き続けている。

俺の方へ直接向かっていないのが救いだろう。

超能力があるという訳ではなさそう。

って俺と詩織にはあるんだよな……未だ慣れないけども。




「どうする?ここだと逃げ場がないよ?」


「そうなんだけどさ……光の柱の位置を見れなくなるのはヤバイだろ。いきなり遭遇する可能性だってある。俺はツイてない男だからな」


「カズちゃんは色々ツイてないよね。二分の一だとほぼ外すもんね」


「逆に詩織は当てるよな。俺の運を吸い取ってないか?」


「えへへー、カズちゃんの運は私のものー、私の運も私のものー」


「どこのガキ大将かっ!!」



 詩織がこれからの行動に付いて聞いて来た。

確かに屋上は出入り口が一つだけ。

逃げ場がない。

でも……位置情報がとれなくなるのはヤバイ。

適当に動いて見つかる可能性の方が高いだろう。

それでも簡単に見つかるとは思えないが……。


 そして詩織は俺の運のなさに付いても言及してきた。

そう、俺ってツイてないんだよな……。

暗闇でTシャツを着ると、前後ろ逆に着ちゃう。

タグを確認しろって?

面倒じゃん!

着直す方が面倒とか言わないでくれたまえ。

クジとかはたまに当たる。

俺だけで完結しない運だからだと思う。

俺より運のない人達が先に引いてたかも知れない。


 詩織は俺のためにわざと明るく振る舞ってくれている。

そんな気がした。

顔色が良くないからな。

無理しているように見える。

やっぱり詩織を危険な目にあわせる訳にはいかない。

これは決定だ。




 俺は光の柱、その動きを追い続けた。

見逃せない。

やはり適当に歩き回っている気がする。


 建物の中から立ち上がる数字。

高低差は判らない。

だから上に向かって移動しているのか判らないのだ。


 これ以上、光の柱が俺達に近づいてこない事を祈るのみ。




「来た!」



 焦燥感が募る中、詩織が見ていたスマホから顔を上げた。

言葉が意味する所は一つ。

俺達が待ち望んでいた人が来たのだ!

信兄!!

出来過ぎ君かと言われるくらいの人、信兄。

出番には遅れない。

主人公になれる人だ。




「ふぅ、来てくれたか!!やった!!」



 俺は安堵の息を吐いた後で返事をする。

少し声が大きくなってしまったのは勘弁してくれ。

興奮してしまったのだから仕方がない。

それだけ待ち望んでいたのだ。

詩織も笑顔になっている。

きっと俺も笑っているはず。




「時間がもったいないから電話するね!」

「おう!頼む」



 詩織の声が更に元気になった。

俺達素直だなって思う。

感情がそのまま出るのだから……。

詩織が信兄に電話をかける。




「お兄ちゃん!うん、いるの。そう。私とカズちゃんは屋上にいるよ!早く来てね!!」

「よしよしよーしっ!!」


「やったね!メッセも来てた……お兄ちゃんだけじゃないみたい。他の人も来てるって!」

「お、さすがに殺人者がいると聞けばお仲間も呼ぶか。ありがたい」

「ねー」



 俺と詩織の声が屋上に響く。

学校内では割と静かな場所かも知れない。

グラウンドの方から歓声も聞こえるが、屋上には俺と詩織だけ。



 だけのはずだったんだが……開く扉。


 確かに少し目を離してはいた。

信兄の到着で気が緩んだのもある。

嬉しそうな詩織が見れて良かったって思ったのもあった。

それでも急展開すぎる。




「マジか……」



 俺の呟きは相手に聞こえてしまっただろうか?

暗い目をした相手、黒いスーツの男が扉の所に立っていた……俺は詩織の前に出た。

黒いスーツの男は持っていた段ボール箱を下に落す。

何やら紙束が入っていたようで、落ちた衝撃で数枚が箱からこぼれ出た。

さっき見た時は手ぶらだった。

何でそんな物を持ってたんだ?


 だが考える暇も意味もなかった。

男が黙ったまま俺達の方へ足を進めて来たからだ。

怖すぎる……無言の圧力。

ゴクリと俺の喉が鳴る。

俺は思わず後ずさってしまった。


 いつの間にか俺のブレザーを掴んでいた詩織。

その手に力が入ったのが解った。

俺が気押されている場合じゃない!

詩織を守らねば!




 俺は萎えかけていた気力が戻ってくるのを感じた。



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