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Counter!!  作者: 大和尚
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「誰?」

「さぁ?」

「あの子かわいくね?」

「おう!マジ好み」

「やべーよな!」

「やべー!!」


「転校生とか?」

「まだ入学式からそれほど経ってないぞ?そんなんあるんか?」

「ある時にはある、無い時にはない」

「したり顔で言ってるけど、それ当たり前だからな?」


「男子うざい」

「ねー」



 朝のホームルーム時、担任が一人の女の子を連れて入った来た。

長い黒髪が特徴的な子だ。

腰まである髪、手入れが大変そう。

日本人形みたいなイメージ。

大和撫子ってこんなんかもね。

途端に騒ぎすクラスメイト達。

可愛い女の子だったので男子が色めき立つ。

こんな時期に転校生なんてあるのかね?

ふむ。


 そして女子が少し怖い。

嫉妬でしょうか?

あ、テレパス持ちですか?俺を睨まないでください、漏らしてしまいます。

俺は視線を逸らした。

俺の目つきの悪さなんて可愛いもの、そう思った。




「静かにしろー!」



 担任が手をパンパンと叩き、大声を出す。

徐々に静かになる教室。

学級崩壊はしていない。

当たり前か。




「学校が始まって結構経つが、席が一つ空いていたのは知っているだろう?彼女は入院していて学校に来れなかったんだ。大友、自己紹介してくれ」


「はい。私は大友愛菜(まな)と申します。体が弱く入院していました。仲良くしてくださいね」



 担任が女の子に付いて説明する。

確かに入学からこっち、ずっと開いていた席がある。

彼女の席だったのか。

入院なんて可哀想にダチを作る大事な時期だったのにな……えっ?おれ?俺は……詩織がいるよ!?

ほっといてもらえませんか?

クラスで話した奴はいたけど、その後はなぁ……。

でも部活にはしゃべる相手はいるんだぜ?ダチまで、もうすぐのはず!きっとそう!


 大友愛菜。

頭を下げる所作の美しさといい、礼儀正しそうな子だ。

落ち着いた雰囲気。

仲良くしたいです。


 ん?視線が……隣の席からだ。

詩織。

何ですか?

見つめ返す。

にらめっこになった。

この日のために鍛えた変顔!喰らえっ!




「斉藤一樹……お前は何をしてるんだ?」

「……スンマセン」



 前から丸見えだった模様。

先生に怒られましたとも。

近くの席の奴らに笑われました……先生の言葉で注目を浴び、変な顔をお披露目してしまった。

あ、大友さんも笑ってる!

つ、掴みはオッケー!結果オーライ!

仲良くなりましょう!

でも今はハズカチー。



 それからホームルームが始まった。

今日の放課後、俺と詩織には大事な仕事がある。

信兄とともに殺人者を追う。

危険なので信兄が来るなと言ったが詩織は聞かなかった。

一度決めたら、簡単には引かない詩織。

シスコンとは言え、妹を危険には晒したくない信兄も頑張ったが、結局折れた。

だから放課後、一緒に動く予定。


 あの暗い目をした黒いスーツの男……野放しにしておくには危険すぎる。

俺の中で警鐘が鳴りっぱなしだった。

そもそも、あいつは行動がおかしすぎる。

人を後ろからずっと見ているとか、怖すぎんぞ。

やり過ごしたと思ったら後を追ってくるし……。

殺人の証拠がないのが痛い。

でもあいつの住処や勤務先ぐらいわかるだろう。

まずはそこからだ。









「大友さん、大人気だね」


「あー、野郎どもが集ってんな。囲みすぎだろう……」


「ね」

「しおりんが助けてあげたらいいと思うのー」

「わざわざ助ける必要なんてないわよ。上手くあしらってるみたいじゃない」


「確かに……」



 授業あと一つで放課後。

詩織が話しかけてきた。

大友さんの話。

彼女の席の周りに六人ほどの男子。

仲良くなりたい連中なのだろう。

だが包囲網はやりすぎだ。

俺がそう言うと詩織も同意してくる。


 詩織の席の周りで話をしていた前田と柴田も話に加わって来た。

柴田の言う通り、大友さんは笑顔で男子をあしらっているのが見える。

ガードは堅そう。

なんか鉄壁って感じだ。

俺はシャイだから行っていない。

根性なしだからではない。

本当だ。




「まぁ、いいでしょ。それより詩織、今度の休み、買い物に行こうよ!部活休みだからさ」

「わたしも行きたいかも。早いけど水着欲しいー、あるかなぁ?」


「それなら行きましょうか。どっかに出る?」


「んー、どうしよっか?」

「偶には大きい街に行こうよぉ」


「どこがいいかなぁ……やっぱり神宿?それとも渋夜?」

「もっと近場でいいんじゃない?立河とかさ」


「じっくり相談しない?せっかくだしぃ」

「なら後でメッセ送るね!」

「はーい」

「うん」



 女三人よれば姦しい。

そして話題がコロコロ変わる。

既に大友さんの話は終わっていた。

おいちゃんはついていけないよ……えっ?お呼びでない?これまた失礼しました!

うん、俺は隣の席に座っているだけだね。

柴田と前田の眼中に俺はいなそう。

ただの置物。


 俺は頬杖を付いた。

何気なく外を見る俺。

窓の外の青さが目に染みる。

でも梅雨も近いはず……っ!?その視界の端に変なモノが映った……あれって!マジか!?嘘だろ!?


 俺は思わず席を立った。

そして窓際に向かう。

柴田、前田と話をしていた詩織が俺の突然な動きに反応していた。

だが彼女が何かを言う前に俺は離れていた。



 窓の側、あまり目立たないように立つ。

コッソリと外を見る俺。




「間違いない……光の柱……あいつだ!何で!?」



 俺の呟きは誰にも聞こえていない。

俺の目は黒いスーツの男を捉えていた。

昨日会った殺人者。

俺が残した数字がそれを証明している。

何でこの学校に?

俺の頭はその事で一杯になった。


 いや偶然か?

出来過ぎだろう。

やっぱり俺を追ってきた?

どうやって?

頭の中に次々と疑問が湧き上がる。


 黒いスーツの男は昨日と同じ恰好に見えた。

そしてグラウンドの外周に張り巡らされているネットの外を歩いていた。

校門の方へ向かっている。

俯いて歩く姿が何だか怖い。


 あいつスーツを着ているけど、また手ぶらだ。

社会人じゃないのかな?

それも怖さを助長した。

失う物のない奴は強い。

何でも出来る。

そう思った。




「カズちゃん?」

「うわぁっ!?」



 そんな俺の背後から掛けられた声。

詩織の声……俺は叫んでいた。

口から心臓が飛び出しそう!鼓動が速い。

俺は黒いスーツの男のせいで怖がっていた。

だから突然の声に驚くのは無理もなかろう。

誰が責められるというのか!!




「ど、どうしたの?顔青いよ?」



 俺の驚きが詩織を驚かせたようだ。

そして俺の叫びで周囲の目も集まっていた。

また注目を浴びてしまった。

奇行子として名を馳せそうで怖い。

俺、怖いものだらけだな。


 俺の顔色が真っ青らしい。

さもありなん。

それだけの衝撃があった。


 まだ心臓がバクバクいっている。




「あれ……あいつ、昨日の奴」


「えっ?」


「あそこを歩いている奴」

「黒いスーツの人だ!」



 俺は窓の外を指差す。

何を言っているのといった感じの詩織。

詩織には光の柱が見えないもんな。

俺が再度教えると詩織も理解した様子。


 詩織の手が俺のブレザーの袖を掴んだ。




「何で?どうして!?」

「理由は判らないけど、偶然じゃないだろう」

「追ってきたの?どうやって!?



 先ほどの俺と同じような反応をありがとう。

自分より慌てている人が側にいると逆に冷静になれるって本当かも。

少し落ち着いてきた。

その代りに詩織があわあわしている。

泡姫ではない。

うん、やっぱり動揺は隠しきれない。




「詩織、信兄に電話かメッセを頼む。状況を説明して、予定より早いけど来て欲しいってさ」

「うん。送る、直ぐ送るね!」



 俺が送ってもいいけど詩織に頼んだ。

シスコン兄には効果的なはず。


 ポケットからスマホを取り出す詩織。




「はーい、みんな席に着いてー」



 そこで英語教師である冴子先生が教室に入って来た。

みんなが動き出す。

俺達も例外ではなかった。

今の所、説明のしようもないからな。

詩織と一緒に席に戻る。


 もう一度だけ外を見た。

しかし光の柱は視界に入ってこなかった……言いようのない不安が押し寄せてくる。



 偶然通りがかっただけかー。


 そんな能天気でいられたらどんなに楽だったか。

どこで何が起こるか判らない。

だが最悪を想定しておくべきだろう。

少なくとも心構えは必要。

席に戻った俺は、そんな事を考えていた。



 詩織が俺に向けてサムズアップ。

信兄と連絡が付いたのだろう。


 信兄、早く来てくれ!

俺は祈るような気持ちで真っ白なノートを見ていた。

英語の授業なぞ頭からすっ飛んでいた。


 そんな俺に詩織がノートを見せて来た。

そこにはこう書かれていた。


『制服から調べたんじゃないかな?』と。




 ……情報化社会にも困ったものだ。





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