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Counter!!  作者: 大和尚
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「松永さんは、あの事件の時に頭を打って記憶が怪しくなってるらしいんだ」


「えっ?そうなの?」

「ああ」

「事件現場で会ったじゃない?あの時も何か思い出せるかも知れないという事で来ていたらしいの」

「そうだったのか……」



 警察病院の駐車場、車の中での会話である。

今日は松永さんが検査でそれなりに拘束されるから、俺達の調査にちょうどいい場所になるだろうという事で来たのだ。

病院側、上層部にも話を通してお医者さん、松永さんの姿が見える場所も確保した。

もちろん、隣の部屋から扉をこっそり開けて松永さんの背後から覗くのだ。

まだ大っぴらに出来る話ではないからね。

うちが調べている事を知られる訳にはいかない。


 松永さんは総理大臣を守りながら犯人を射殺したとは聞いていたが怪我もしていたらしい。

その怪我で記憶障害になっていると信兄が言っている。

事件現場で松永さんを見た時には怪我を思わせる包帯なぞしていなかった。

浅井さんは俺達が松永さんに会った時の状況を教えてくれた。

記憶喪失なのかね?記憶を取り戻す鍵を探しているってのか?

大事だと思いますが……。





 車を出て仕事をする部屋に向かう間にも松永さんに関わる話を聞いた。

真面目で正義感の強い人。

上司、同僚、部下、誰の評価も大きくはズレていなかった。

俺の第一印象も凛々しくて頼りになる男だった。

でも異常数字は確かに頭上にあった。

何かがおかしい。


 いや人間には裏の顔もあるか……。

人は考え、演技だって出来るだろう。

それが徹底している人なのかも知れない。




「またジョージに会ったんだって?」


「うん。《アンデッド》って存在の情報を貰ったよ」

「それも聞いた」

「ジョージ……あのストーカー野郎は行く先々に現れるんだよなぁ……」



 今日のメンバーの一人である林さんが俺に声をかけて来た。

俺、詩織、信兄、浅井さん、そして林さんの五人で警察病院へ来たのだ。

林さんが言っているのは占い館か喫茶店での事だろう。

それも、って言っているんだから最初の占い館で会った話かな。

温泉旅館もそうだったけど、意味ありげに来るんだよなぁ、あいつ。

情報をくれたメリットは解るけど、一々姿を見せて来た理由は教えてもらえなかった。

笑って誤魔化されたんだよなぁ……。




「あぁ、それは衛星で追跡したんだろう」


「えっ!?衛星!?」

「なにそれ凄いね!」



 俺がジョージについて愚痴ると、林さんが何てことないって顔で教えてくれた。

いやいや!俺はビックリなんですが!?

詩織は楽しそうに声を上げた。

驚きより衛星って名前から来る壮大さにワクワクしてそう。




「あちらも国家の組織らしいからね。衛星くらい使えるだろうさ」


「軍事衛星とか?」

「種類は判らないけど、衛星からの見える地表映像は驚くほど鮮明なんだよ?」

「マジっすか!!」

「わぁっ!!」


「本当よ?私も見た事があるけど結構細かい所までハッキリしてたわ」

「ですね」



 ジョージが所属している《ワールドワード》は私設組織ではない。

林さんが言う通り俺達と同じような組織だと調べがついている。

もっとも、あちらさんも本気で隠してはいないらしく割と簡単に調べられたそうだ。

組織の看板だけは適当につけてあった。

うちでいう所の《広報三課》だね。

魔法、信じたい人は信じればいいと言うスタンスなのかも知れない。

だから本気で隠さないのだと思われる。


 林さんが衛星の事を教えてくれる。

そして浅井さんも衛星写真を見た事があるらしい。

俺のイメージとしてはボンヤリとした人型が解る程度の解像度だったんだがなぁ。

認識を改めなくてはいけないようだ。

はっ!?まさか……覗き放題!?って対象が俺かも!?昨夜、カーテンを閉めてなかったような!?やべー、マジやべー。




「カズちゃん、顔色が悪いよ?どこか痛い?ちょうど病院だし見てもらう?」



 林さん、浅井さんからもたらされた情報は俺の顔色を悪くさせたらしい。

詩織が俺の変化を見て心配してくれている。

うん、正直には答えられない。




「だ、大丈夫。問題ない」

「本当?やせ我慢してない?」

「本当だ。ちょっと想像が飛躍しすぎただけ!」

「飛躍……」


「まぁ、衛星で追跡されてると思ったら考えちゃうよね」

「そういう事だったのね。顔色悪いわよ」



 俺は問題ないと答えた。

それでも心配そうな顔で俺の顔を覗き込んでくる詩織。

優しさが痛い。

気にしないで欲しい。

俺の言った飛躍って言葉から林さんが一般的な想像をしてくれた模様。

浅井さんも納得してくれている。

俺の悩みは、一般的なのとはちょっと違ったんだけど、まぁいいや。


 しかし衛星……覗き放題……俺も使ってみたいですぞ!

覗かれていたのなら逆に、俺にも使う権利があるのではないだろうか?

ジョージに要求してみるべき?

中々良い考えではないだろうか。




「あ、ちょっと顔色が良くなったよ」


「本当ね」


「うい」



 俺達は薬臭い病院の中を歩くのであった。






「ここだな」


「ちょっとした倉庫みたいだ」

「そんな感じだねー」



「カズが調べて詩織さんが記録します。僕は関連した情報をその場で調べていきます」


「頼む」

「お任せください」



 扉を潜り入った部屋は棚と箱だらけの部屋だった。

そのせいか割と広い部屋が狭く感じた。

薬剤などはなさそう。

書類置き場といった部屋だった。


 林さんは早速仕事モード。

俺が力で調べて詩織に伝える。

それを詩織がパソコンで記録していくのだ。

林さんは話を聞くだけで記録できるが他の媒体にも必要という事だろう。

そして林さんはIT関係に強いので、ここでも仕事をしていくつもりのようだ。



 俺達は隣の部屋が覗ける扉に近づいた。

扉には小窓が付いている。

俺はそこから隣の部屋を覗いた。

ちょっとドキドキする。

おぉ!上手い具合に備品が配置されている!その隙間を縫って松永さんとお医者さんの二人が見えた。

松永さんは背もたれのない椅子に座って俺に背中を見せている。

これはいい。

時間と手間をかけて場を作ってもらった甲斐があった。

感謝。




 では俺も仕事に取り掛かりますか!

まずは固定した数字の解除をしてっと……。




「『カウンター』『《降臨の家》幹部で知っている人の数』……二十七人」



 俺は大きな声になりすぎないように注意しながら条件と答えを伝える。

俺の背後でカタカタと鳴る音が聞こえた。

詩織のパソコンだろう。

ペンが走る音も聞こえた。

信兄か浅井さんだろう。


 やはり松永さんと《降臨の家》には深い関わりがあるようだ。

ここまで幹部を知っている人はいなかった。

まさに重要人物といえるであろう。

っと、推察は後だ。

時間は無限ではない。

仕事仕事。




「『カウンター』『《降臨の家》の依頼で仕事をした回数』……ゼロ?あれ?」


「ゼロか……意外だな」

「だね……前はこの条件で数字が出た人もいたんだけどなぁ」

「まぁいい。考察は後だ、続けてくれ」

「あい」



「『カウンター』『《降臨の家》に所属している呪術師の数』……二人」

「『カウンター』『《降臨の家》が持つ《エンジェルラダー》工場の数』……一」



 俺は事前に打ち合わせしていた調べるべき条件を上から順に調べていく。

松永さんは《降臨の家》関係者で間違いない。

内部情報、しかも詳しい事を知っているようだ。

幹部か若しくはそれに準ずる人だと思われる。

重要人物だ。


 俺は隣の部屋にいる松永さんの背中を見ながらそんな事を考えていた。

今の所は問題無く調べられている。

特に気づかれた様子もない。

異常数字の持ち主、不気味な存在なのは間違いないが隠れて調べている俺達を見つけられるような超人ではなさそう。

ちょっと安心した。

相手は人間、そう思えた。


 俺達の調査は続く。










「『カウンター』『拳銃で射殺した回数』……千二百六人」



 もう数字に反応していられなくなった。

異常な数字だとわかっていてもだ。

疲れたが今はチャンスタイム、ボーナスステージである。

踏ん張りどころであろう。




「カズ、拳銃という条件を外して射殺で調べてくれ」

「あい」



「『カウンター』『射殺した回数』……八千五百十三人」


「……刺殺、撲殺、薬殺でも頼む」



 信兄が何かに引っかかったらしい。

ここまでにも何回かあったやり取りだ。

調べていく。

射殺が一番多かった。





「射殺が思ったより少ない気がする」

「それ以前に銃器はどうしてたのかしら……」

「押収品とかでしょうかね?いやそんなはずはないか、多すぎますよね」

「連射出来る銃も使ってそうだな」



 異常な殺人数。

その内訳に信兄が興味を持っていた。

浅井さんはそれを成した武器に注目している。

林さんも考えている……だが納得のいく答えには辿り着けていないようだ。



 ふぅ……。

俺は議論しだした信兄達を横目に一つ息を吐いた。

疲れた。

そんな俺にペットボトルが差し出された。

お茶である。




「カズちゃん、お疲れ様」


「おー、ありがと、詩織」

「うん」



 詩織の優しさが身に染みる。

良いやつだよなぁ、ホント。

俺の隣でキーを叩き続けていた詩織も疲れているだろうに……。

頭を撫でてやりたくなる。




「ね、私も気になった事があるんだぁ」

「なんだ?」

「あの人って何歳なんだろうね?」

「見せてもらった資料だと三十四歳だったはず」

「そうなんだけど……毎日、数字を稼ぐとして何日かかるんだろうなって思ったんだ」

「年齢を誤魔化してるって?」

「見た目は合ってるとは思うけどね……」

「信兄達は忙しそうだから、調べてみよう」

「うん」



 詩織から提案があった。

松永さんの年齢を調べようという提案。

確かに除霊でないと判明した今、戦争ぐらいでしかあの異常な数字は出せまい。

チラリと信兄達を見たが忙しそうに話し込んでいる。

ちょっと調べてみよう。

えっと……条件は……。





「『カウンター』『誕生日を迎えた回数』……千……百八回……えっ!?」


「えっ!?」



 俺は思わぬ数字を見て驚きの声を上げてしまった。

同じ驚きの声は詩織からも上がった。

お互いに顔を見合わせてしまう。

部屋は静かだった。

信兄達も議論を止めて俺達に注目していた。


 千歳以上!?不老不死……ジョージの話が思い出された。

《アンデッド》はここにいた!?

まさかと思っていた存在を目の当たりにしているのかも知れない。

とある情報屋からの情報の確度、半々程度といった感じだった。

少なくともジョージからはそんな風に読み取れた。

だから俺達の中でも頭の隅に置いておこうという話になっていた。

俺としてはジョージに踊らされている感があったので、それでいいと思っていた。

だって悔しいじゃんか。

みんなで打ち合わせて出来た調べる事リスト。

その中には今の条件もあったが調べる時間があったら程度の条件だったのだ。

重要度は高くなかった……それなのにだ。


 松永さん、《アンデッド》説、濃厚。

それはそれで謎が増えたと思う。

西洋人には見えないとか戸籍とかさ。

《降臨の家》の情報が吹っ飛ぶほどの新事実。



 詩織の疑問から判明した事実。

新たな異常数字が発見されたのであった。

しかし千歳を超える歳には見えない。


 俺の目に映るスーツの背中がとても恐ろしいモノに見えた。

そしてこの場から早く立ち去りたいという気持ちが湧き上がって来てもいた。

人の形をした怪物……未知の存在に対する恐怖。

誰が俺を責められようか……。





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