2-23
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「やぁ!」
「そこはハーイとかじゃねーの?」
「ハーイ!」
「素直かっ!」
「そうデース」
「語尾がわざとらしいな」
「そうですか」
「……」
「カズちゃん、いつの間に仲良くなったの?」
「違うからな?初対面も同然だし」
「そうデース」
「……」
登校、学校の敷地内へ足を踏み入れたと同時に門の陰から声をかけられた。
片手をあげて爽やかな笑顔。
転校生の金髪君ことジョージであった。
俺はイケメンが好きではないので挨拶を返さなかった。
ぐぬっ……こいつ良い性格してやがる。
ことごとく躱される。
そんな俺とジョージのやり取りを隣で見ていた詩織が言ってくる。
仲いいねと。
そしてジョージ、本当に良い性格をしている。
爽やかな笑顔がまたイラつく。
「サイトウカズキ君とオダシオリさんですネー!ジョージですヨロシク」
「おう……よろしく」
「よろしくねージョージ」
「ハイ」
改めて自己紹介をしてくるジョージ。
面と向かってされたら、さすがに無視できない。
一応返事をする。
詩織は特に思う所もないようで、普通に返している。
「で、なんでこんな所で?待ち伏せ見たいな事を?」
俺はジョージをジロリと睨みながら問いただす。
「サイトウカズキ君、睨まないでくだサーイ!目つきが怖いデース」
「そのしゃべり止めろ、うざい」
「申し訳ありません。不徳の致すところであります」
「くっ」
外人っぽく両手を広げて首を竦めるジョージ。
様になっている所がまたムカつく。
そしてわざとらしい語尾。
指摘すると、一転した口調。
この野郎……。
「カズちゃん、なんでそんなにケンカ腰なの?ダメだよ?」
「うっ……」
「オダシオリさん!あなたは素晴らしい人ですね!」
「そうかなー、褒められちゃった」
「素晴らしい女性です!」
「えへへ」
俺の様子を見ていた詩織に怒られた。
俺も自覚があるだけに言い返せない。
そんな俺を見てか、ジョージが詩織を褒める。
詩織も満更ではなさそうに笑っている。
確かに詩織は良いやつだ。
人間が出来ている。
俺と違って……。
ってそんなんはどうでもいい!
「待ち伏せの件を説明しろよ」
「教室だと女性に囲まれて動けないのデース」
俺は出来るだけ怒りを抑えて再度聞いた。
また詩織に怒られたくはないからだ。
イケメンだから嫌いなんて説明もしたくない。
そんな俺の思いに気づきもしないジョージがサラッとイケメン自慢をしてくる。
悪びれもしない態度。
本当に困っているといった感じなのが俺をイラッとさせてくれる。
だが返す言葉を俺は持たない。
何を行っても無駄。
嫉妬にしかなりそうもない。
わざとらしい語尾には悪意を感じる。
煽ってきているに違いない。
さっき俺が怒られたからかも知れない。
おのれ……。
「はいはい、そこまでー」
パンパンッと手を叩いて登場したのは大友さん。
どうやら俺達の話を聞いていたようだ。
だが俺にとっては救いでもあった。
頭に登った血を沈める時間が欲しい。
「オウ、オオトモマナさーん!おはようございマース!」
「おはようございます。ジョージさん」
「ジョージと呼んでくだサイ」
割って入って来た大友さんに挨拶するジョージ。
ちゃんとフルネームで覚えているんだな……俺達の事もそうだったけど。
ジョージが胸に手を当てて呼び捨てにしてくれと言っている。
「お話は放課後にコーヒーでも飲みながらしましょう」
「あの喫茶店に行くの?何のケーキを食べよっかなぁ……」
「ハイ」
大友さんはジョージの要請には答えないで予定を決めて来た。
詩織は大友さんの提案をすんなりと受け入れている。
もう頭にメニューを思い浮かべてそう。
ジョージも素直な返事。
俺は頭に疑問符を浮かべながらも断らなかった。
大友さんは何かを知っているのだろう。
俺はそう思ったからだ。
何人かの女子に見られながらも校舎へ向かう俺達であった。
視線の先は転校生の金髪君。
ええ、判っていましたとも。
少し頭が冷えて来た。
イケメンだからって突っかかり過ぎた。
反省。
▼
「ごゆっくりどうぞ」
「はーい」
「はい」
俺達の前に注文の品を置いて一礼して下がっていくマスター。
詩織は嬉しそうに紅茶とケーキのセットを見つめている。
今日のケーキはフルーツタルトですね。
色とりどりで光沢があり、とても美味しそう。
俺もコーヒー以外に頼めば良かったかな?
でも英二との夕飯で箸が進まないってのダメだ、うん。
俺、詩織、大友さん、そしてジョージのメンバーで喫茶店に来ていた。
コウゾー、ユッキー、吉岡さん、《東洋会》のメンバーと初めて会った時の喫茶店だ。
俺とジョージがブレンドコーヒー、詩織と大友さんは紅茶、そして詩織はフルーツタルトも頼んだ。
登校時に大友さんが提案した通りになっている。
それがこの場である。
学校にいる間に、再びジョージから話しかけられる事はなかった。
「なかなか美味しいデース」
「悪くない」
「ええ」
「むふふー、フルーツタルト、美味しい!」
話の前にそれぞれ飲み物、食べ物に手を出す。
詩織が待ち切れなそうにしていたからだ。
俺も気持ちを抑えるためにコーヒーを飲んだ。
冷静に、冷静にだ。
「《WW》、《ワールド・ワード》」
大友さんが紅茶を一口飲み、カップをソーサーに置いた所でポツリとしゃべった。
ダブリューダブリュー?ワールドワード?
はて?
俺は謎の単語に思いあたらず、大友さんの顔を見た。
無表情。
大友さんの顔からは感情を読み取れない。
「フゥ、さすが《東洋会》の魔女さんですネ」
「お互い調べは付いていたようですわね」
ジョージが笑顔のままで溜息を一つ。
そして大友さんが所属している組織の名前を口にだした。
大友さんは組織の名前を出されても動揺していない。
落ち着いた声で返事をしている。
お互い?調べ?
《WW》、《ワールドワード》は組織の名前か!?
あぁ、頭文字をとった通称って事か!
何となく解って来た。
ジョージはそういう組織の一員なのか?
大友さんが言うのだから魔法使いの組織なのかも知れない。
俺と……フルーツタルトを口に運んでいる詩織を他所に話が進んでいく。
「ええ、ボクは《ワールドワード》の者デス。下っ端ですケド」
「ご謙遜を……気まぐれな天才って二つ名はこちらにも聞こえていますわ」
「ハハッ!気まぐれは否定しませんが、天才は本当の天才に失礼ですヨ」
「そうかしら?」
「そうですトモ」
ジョージが苦笑しながら名前ではない自己紹介。
大友さんは色々と知っているようだ。
気まぐれな天才……何だか大物感溢れる二つ名だ。
謙遜するジョージ。
返答まで大物っぽい。
余裕を感じさせる。
「ジョージは魔法使いなのー?」
詩織はフォークを置いてはいないが話に加わった。
話を聞いていたんだな……目的は忘れていなかったか。
興味ある話だったって事だろう。
直球だ。
「ハイ。ご存じでしょうが、うちは魔法後進国です。しかし国として対応出来る力は必要ですからネー。遠くない未来に追いつき追い越しますヨ」
「確かに最高峰ではないですが精神防御系には目を見張るものがあります」
「お褒めに預かり光栄の極みデス」
「パレードで力の片鱗は見ましたから」
「オゥ!そうでしたか!照れますネー」
「そうなんだ、凄いね!」
大統領の国から来ているというジョージ。
あっちは魔法後進国だったのか……知らない事ばかりだ。
大友さんがジョージの言葉を聞いて頷きつつ褒めている。
精神防御系?
確か攻撃魔法が廃れて魅了だの思考停止だのといった精神攻撃系が主流になりつつあるんだったな。
それに対する防御が得意なのかな?
大友さんに褒められたジョージが大げさな身振りで返す。
どうやらパレードにジョージもいたらしい。
そして何か防御系の魔法を発動していた模様。
まったく解らなかった。
まぁ、俺は魔法使いじゃないから当然だ。
でもアゲハもタイヘーも何も言ってなかったな……まったく系統が違うのかね?
それとも俺に言う必要がなかったのかな?
うーん。
何となく全ての術は似た所がありそうなんだよなぁ……得意分野が微妙にずれているだけでさ。
あれだ、出発点は同じなんじゃないかな?進化の系統が違って呼び方が変わったとか……そんな気がする。
パレードでジョージが何かをしていたと聞いて凄いと褒める詩織。
あ、フルーツタルトの攻略に戻った。
その程度の興味だったらしい。
「それじゃ……うちに転校して来た理由ってなんだ?」
「そうね。それは聞きたいわね」
ようやく俺も話に参加出来た。
そんな魔法使いが何でうちに来たのやら……。
大友さんも身を乗り出してきた。
「とある人物を探せとの命令を受けていまス」
コーヒーを一口飲んだジョージはそう言った。
ジョージの視線は大友さん、詩織、そして俺と順番に移っていった。
とある人物。
そこで俺は信兄の言葉を思い出した。
「あちらさんが大掃除の立役者であるカズを調べ始めたようだ……」
大統領の国が俺を調べ出した事を……。
表に出る事のない情報。
それを知る者。
それが俺だ。
きっとジョージが探しているのは俺の事だろう。
俺はジョージから視線を外さなかった。
幸い詩織も大友さんもジョージの言葉で俺を見たりはしなかった。
あからさまに答えるような事はしていない。
もっとも大友さんが探し人を俺だとは思っていまい。
俺の力については教えていないのだし。
それに探し人が俺だと確定した訳でもない。
「大統領暗殺計画。いくつかは国で調べがついていましたが現場ではそれ以上の容疑者が発見されましタ」
「みたいね」
「それを成した人物……それがボクの探すとある人物デス。心当たりはありませんカ?」
「うーん……知らないけど知っていても教えられる関係にはないわね」
「ハッハァ!これは手厳しいデス!」
「わざわざ天才が動くような相手なのか?それ」
「天才かどうかは置いておいても、動くような事でしょうネ」
「それは無理もないでしょ。私も興味あるわ」
「さいですか……」
ジョージがぶっちゃけてきた。
俺達に心当たりがあるだろと言わんばかりの物言い。
転校してきたんだからある程度の調べ、標的は絞られているとみるべきだろう。
そして今、テーブルを囲んでいるメンバー……それが絞られた標的に違いない。
俺はゴクリと鳴る喉を誤魔化すようにコーヒーを飲む。
大友さんは俺の力を知らない。
知っているのは詩織の力、その一部だけだ。
詩織の力だって全てを教えてはいない。
効果範囲や、どの程度の衝撃で起きるのかなどは教えていない。
俺は皮肉も交えてジョージに質問する。
ジョージも大友さんもパレードで悪者を見つけた力に付いて真剣に受け止めているのが解った。
大友さんとジョージは魔法関係の話に移った。
俺は黙ってそれを聞き、詩織は俺と半分こにしようと言って追加のパフェを頼んだ。
チョコパフェ、定番ですね。
これからジョージに付きまとわれるのかな?
どうせならボンキュッボンの美少女を送ってくれれば良かったのに……。
今日のコーヒーは前回より苦い気がした。




