第2章3話
なんか…某問題にそっくりだけど…
「フェルトベルク、皇宮財閥総CEO兼国土運輸省国有地担当局局長」
国家評議会両院議会議事堂の予算委員会で一人の少年? 少女? が手を挙げ議長に名前を呼ばれた。
そう、長そうでそうでもないこの肩書を持った彼こそ、フェルトベルクその人だった。
なんと御年13歳
今日はきちんとスーツに身を包み、ピシっとしていた。まぁ白銀のあの髪の長さでスーツってのは似合わないのだが…。
っで、この肩書だが、もちろん名誉職なんかじゃなくてきちんとした職務がある。
最初の皇宮財閥総CEOだが、まぁこれは名前の通り皇宮財閥という頭のおかしいのか…? って疑問に思われるほどの資源財力がたんまりあるこの国のインフラを牛耳る存在の財閥の総CEOだ。
総とつく理由は簡単で、皇宮財閥は連邦企業…。まぁ簡単に言うと4つの財閥で構成されて皇宮財閥が成り立つので、それをまとめる立場こそ総CEOなのだ!
なお、総CEOは皇族しかなれない模様…。独裁じゃねぇか!
で、問題の次の肩書だが、これが予算委員会に呼ばれている理由である。
国土運輸省国有地担当局局長…。その名の通り、ス連邦を形成する惑星にはいまだに開いている土地が数知れず存在する。
それらは国の土地となっており、それを統括するのが国有地担当局局長だが…
「えー、閣下が言われましたようにこの国有地の売却の件ですが、担当局としましては適切に売却されたと国家財務省の国有地売却委員から報告されましたので、我が方で売却許可を下ろさせていただいたわけであります…」
何やら一生懸命答弁しているが…与党議員たちはその姿を温かい目で見守っていた。
なぜ彼が予算委員会で質疑されているか…。それはある出来事がきっかけだった。
【海森学園の国有地売却問題…】
一見すればどこかの国で同じような問題が今も取り上げられているが、まぁ、これも同じようなもんだ。
海森学園はスウェットハーヴェン特別地自治区のある国有地を学園建設のために購入したのだが、それが不当な価格で売却されたのでは…? という問題だった。
しかも、調べを進めるにつれ、現内閣総理大臣の八田部 仁造の妻が建設中の海森学園の名誉校長で、国有地売却は中央連邦政府が不適切にかかわったんじゃないか!? といま大問題へと発展してしまったこの問題。
で、その国有地売却の時の国有地担当局局長がフェルトベルク氏だったわけ…。
まぁこの問題の何が大変かって、一昨年の2月の予算委員会で総理が…
『この問題に僕や妻、もしくは大臣の誰かでもかかわっていたのなら、任命責任のある私の責任でもある。もしかかわっていたのなら、内閣の単独辞職か総辞職する!』
と、堂々と発言してしまったものだから…、もう担当の官僚達は大慌て。
売却に関する資料を洗い直し、それらしいことが書かれていないのを確認した、まぁ書かれている部分は改ざん…ゲフンゲフン、修正しておいた。だがこの発言を聞いた野党は政権を下ろすチャンスだ! ってことで、今議論に白熱がかかり何年も引きずっているので国民も諦めムードが増えてくる…。
「………君」
「いえ、ですからね。局長は国有地売却委員会が明らかに不適切な値段で報告されたのに、なぜ疑いもなくこの値段で売却したのですか? そこを教えてください」
連日の国会予算委員会での答弁で疲れ果てても、頑張って答弁する…。おそらく普通の子がやれって言われたらぶっ倒れると思う。
というか、ありゃりゃ…。
席に座った瞬間、ウトウトし始めちゃったよ…。
同僚に揺さぶられ、何とか意識を保つがすぐに崩れてウトウト…
「…! ……! フェルトベルク皇宮財閥総CEO兼国土運輸省国有地担当局局長、起きていますか?」
「?! あ、はい」
どうやら議長が起こしてくれたらしい。
「大丈夫ですか? 眠いなら特別退場も許可しますが…」
「いえ、大丈夫です」
「では、続けますが、答弁はできますか?」
「はい」
「ではフェルトベル皇宮財閥総CEO兼国土運輸省国有地担当局局長」
「はい」
ちょっぴりフラフラしながらも、質疑応答に応じる。
「失礼しました。えー、閣下のご質問の答えですが、我が方でも少々安すぎるのでは? と思い委員会に問い合わせたところ、この国有地にはゴミや旧戦略防衛軍…現在の宇宙航空軍の軍事演習場がございました場所なので、空の砲弾や空薬莢などが落ちていると回答がございましたので、それなら…と許可した次第であります。」
「…………君」
「分かりました。私からは質疑を終わります」
今日も国家評議会の予算委員化では野次や怒号やらが聞こえ荒れている…。