第1章8話、最終話
「ゲッホゲッホ…」
伍長は右手で口を覆いながら、階段を1段1段しっかり踏みしめながら登っていた。
火とはご存知の通り、上へ上へと向かう習性がある。そして今回の火元は爆発が起こった3階。そして非常階段は中に設置されている。さらに運が悪いことに爆発の影響なのか2、3、4階の防火扉が正常に作動しておらず伍長は煙を浴びながら30階まで登っていた。
ただ救いなのは非常階段の踊り場に、窓が設置されていたことで、固定式だたが爆発により粉々になったため、煙を出すことが出来ていた。
「あと、1階…。ここか!」
伍長はフラフラ危うい足を右に思いっきりスライドさせ廊下へ転がり込んだ。
「VIPルームは…あそこか」
看板を確認しVIPルームへと向かう伍長。
なお、30階のフロアは少々特殊な作りになっており、エレベーターや階段があるホールへ1週できる構造だそうだ。
つまり、鬼ごっこすれば永久に捕まらず、グルグルグル回ることが出来る変な構造。更に! 部屋への入り口は反対側! 誰だ! 避難しづらい構造にした中の人は!
伍長は時計回りで向かったが、別に反時計でも行けるというね…。
「はぁはぁはぁ」
息切れがすごい。
いや、伍長さんはおそらく40過ぎのおじさんだし…
やっとの思いでたどり着いた伍長さんは、鍵が開いているVIPルームへ入っていった。
「何方かいらっしゃいますか!」
部屋の中、立派なソファがある部屋で伍長は大声で叫んだ。
立派な部屋だが煙が充満し火の遅延が早かったのか燃えていた。
「何方…くそっ!」
VIPルームはもうほとんど入れない状態だった。
くまなく探したが人っ子一人見つからなかったので、伍長は地震の体力の限界を感じたので時計回りで帰ることにした。
部屋を出て角を曲がったその時!
「! 大丈夫か!」
一人の子供が廊下で倒れていた。
歳からして10代だろう。妙に長い白銀の髪にその容姿から彼は直感的にこう思った。
「少女?」
なぜこんなところに少女が?
だがそんな疑問を伍長はすぐに薙ぎ払い、その気絶しているのかわからない少女を抱っこして彼は脱出を試みた。だが…
「くそっ!」
廊下はすでに火が回っていた。
火がもうすでに伍長や少女たちの行く手を遮っていたのである。
伍長は急いで回れ右をしその場を立ち去ろうとした、だがその刹那!
「あっ…」
壁が崩壊してきた。
そして、ここで彼の意識はなくなったという。