第1章7話
遠征中のため、別端末からの投稿です。
ビジネスホテルのロータリー。そこに溢れんばかりの人だかりが出来ていた。その彼らが見つめる先に衝撃的な映像が広がっていた。
3階だろうか?窓ガラスが飛び散り、黒い煙をもくもく出している。光り輝いていたホテルは一瞬にして真っ暗な…いや少々赤いホテルへと変貌した。
そのホテルを見つめる伍長達。
伍長はホテルを唖然と見つめ、首相はおじいちゃんを担ぎながら、ルールに至っては怪我人の治療をしている真っ最中だった。
「ってか、ルール。お前医師免許持ってたんだな…」
「いえいえ、持ってませんよ。ただ皇帝陛下のお歳的な都合上、少々のけがを治さなければ侍従長失格です」
何とも仕事熱心な人だった。
とその時、ルールの部下だろうか、顔色を変えて近づいてきた。
「どうしました?」
「じ、侍従長!大変です!皇帝陛下のお姿が見えません!」
「なんですって!?」
ルールは顔色を変えた。
それを訝しむ伍長。
「おい、ルール。どうした? 何があった?」
「たたたた大変だ! ここここ皇帝陛下のお姿が…!」
「何!?」
「は、早く探さねば…」
ルールは右手に包帯を持ちながら燃え上がるホテルへ駈込もうとしていた。
だが、そのルールの手を止める者がいた。伍長である。
「伍長さん! 放してください!」
「いかん! お前はけが人の治療中だろ! ………私が行く」
「そんな…」
伍長はルールを自分のほうへ引き戻し、その反動を使い震えている足に力を入れホテルの正面玄関へと走り出した。
それを呆然と見つめるルールは、慌てて
「伍長さん! 陛下は30階のVIPルームにいらっしゃると思います! 宜しくお願いします!」
と大声で叫んだ。
伍長は軽く右手を挙げ、そのままロビーへ消えていった。
なお、VIPルームが30階にあるということは、最上階であるラウンジが何階にあるんだ? って思うかもしれんが正確には32階。
とちょうど伍長がロビーへと消えていったその時、
ウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ
遠くのほうでサイレンが鳴り響く。
そしてそのサイレン音は徐々に大きくなっていきその音は人々にとって希望とも聞こえる音になった。
「消防だ!」
誰かがそう叫ぶ。
だがルールはそれを訝しんでみていた。それもそのはず、ス連邦の消防庁の緊急サイレンは空襲警報に近いような音を出す。でも空襲警報じゃない。じゃぁなんだ!?
こんな警察のサイレン音のような音は出さないはずだ。
だが、ルールは見えてきた車両を見て、疑問に思っていたことの答えがわかったような気がした。
そう、このホテルの爆発事件に来たのは…
「陸軍…だと!?」
ス連陸軍だった。
これにはホテルにいる人々にも動揺が走った。
「なぜ陸軍が?」
「えっ? 消防じゃぁ…」
などなど様々なお声が…
サイレンを鳴らしながらやってきたのは、以下の戦力だった。って! 戦力ちゃうやろ!
MRT-120・旧式第7世代型主力戦車 12両
MRS-2・多方面使用装甲車 11両
だが、この戦力、不思議なことに戦車などに青と白色の五芒星がかけられていた。
人々が訝しむ中、一人の男が走行車より降りてきた。世界でもお馴染みのAKを持ちながら…おそらくこの部隊の隊長だろう。
「ス連特務軍第2連隊の者です。この中にホテルの支配人の方は…」
「わ、私ですが…」
一人けがの治療を受けている40代の男性が手を挙げた。
隊長らしき男は手を挙げた男に近づき、こう言った。
「今回の事件は大天皇帝の暗殺の容疑があります。ホテルのことを詳しく聞くために少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか…」
「! わかりました」
この一言に周りの人々がざわめきだした。そりゃそうだろう、ホテルに泊まっていて爆発炎上したと思たら、軍がやってきてそれを皇帝暗殺なんて聞かされたら…。おお、おそロシア。
「あと、ルーズルート侍従長!」
「は、はい」
「貴方も来ていただけませんか?」
「わ、わかりました…。あの!」
「はい?」
「こ、皇帝陛下がまだ中に…」
「なんですって!?」
今度は兵士たちが絶叫した。
悲鳴にも近いような声を上げていたから相当なものだろう…。
「お、おい! すぐに突入準備だ!」
「了解!」
特務軍の人たちはあわただしく動いていた。