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大島サイクル営業中・2018年度  作者: 京丁椎
2018年 6月
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中華なお猿③

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切関係がありません。

ひょんな事から手に入れたホンダモンキーそっくりな中国製らしきバイク。

置いていても誰も修理してくれないので作業に取り掛かる事にした。


「……とりあえず、ボルト・ナットに油を差しとくかな…」


とにかく錆だらけで触るたびにバラバラと錆粉が落ちる。鉄の質が悪いのだろうか?特にメッキ部分の錆が酷い。ゴム部品もボロボロ。外すのではなくて砕け落ちるといった方が正しい。浮いた錆だけでも落とそうとワイヤーブラシで擦っては箒と塵取りで掃除をする。これだけでも軽量化になったのではないかと思う。ある程度錆を落としてから浸透性潤滑油のスプレーを吹き付ける。俺の愛用品はハイルーセンだ。


中国製バイクはボルト・ナットの加工が荒い様に思う。強度はどうだろう?


「さてと、舐めずに回せるかな…んっ…嫌な感触…」


固着しているわけじゃないのに回り方が渋い。出ている部分のネジ山はワイヤーブラシで擦ったのに、これはどうした事だろう。全部のボルト・ナットの回りが悪い。


「…これは…う~ん…ボルトナットは全部交換した方が良いなぁ」


試しにフレームのネジ穴に国産品のボルトを付けようとしたけれど渋い。タップをかけてネジ山を修正したら切粉が出た。どうやらネジ山を作るのに使った工具が良くなかったらしい。ボルト自体もネジ山が崩れかかっている気がするのだが、これは錆のせいだろうか?


「工具があるから何とかなるけど、無かったら工具を買う所からスタートか」


安いと素人が飛びついてカスタムしようとしたら難儀するパターンだ。ネジと言うネジが全部回りが悪い。ネジなんてものは緩み止めが無い奴はクルクル回せて最後に『キュ』で良いはずだ。


錆びたボルトナットにハイルーセンを吹きながらの作業だから進まない事この上ない。ボルト外して変な感触だったらタップをかける。ナットを外してはダイスをかけるの繰り返し。


「配線は…ん~?…色が違う?互換性は無いな」


電気周りの配線が全然違う。ホンダのエンジンを乗せようと思ったら配線の行方を調べてからでないと怖い。そんな手間をかけるくらいなら中古の純正ハーネスを使う方がマシだ。


「タンクのキャップも互換性無し。燃料コックも…ネジ山のピッチが違う…」


いつもなら楽しいお猿さんとの戯れの時間なのに全く楽しさを見いだせない。


(似て非なるとはこの事かなぁ…触ってもあんまり楽しくない)


こればかりかまっている訳にもいかない…と言う事にして作業中断する。イミテーションと先入観があるからだろうか。全くやる気が出ない。別の形なら興味が湧くかもしれないけれど、そっくりで品質が悪いと触っているだけで嫌になる。


「なんや難しい顔してバイク触ってるなぁ」


ご近所さんにも指摘されてしまった。


     ◆     ◆     ◆


中さんに覇気が無い。こんな彼を見るのは初めてだ。


「ねぇ中さん、元気が無いぞ?」

「ん~まぁそんな日も在る」


チン!


懐かしい音を立ててオーブンのタイマーが止まった。今日は新メニューを作ったんだって。


「小説に出てたのを作ってみた」

「油揚げ?」


しかし、彼が作るのだから油揚げであって油揚げに在らず。油揚げの上に何かを乗せて焼いてある。


「醤油マヨネーズであえた雑魚(じゃこ)を乗せて焼いてみた」

「あ、これは間違いない」


雑魚に醤油マヨでも美味しいのにそれを油揚げに乗せて焼くのだから間違いは無い。


「美味しいよ?どうして元気が無いの?」

「ん…なんて言うかな…消化不良してる感じ?」


多分だけどバイクの事だ。


「なんて言うかな…同じような形やのに全然違うんや…」

「ふ~ん」


「触ってても楽しくない。心躍る感じが全く無い。不思議やな」


中国から来たお猿さんは中さんの心を盗めなかったらしい…


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