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大島サイクル営業中・2018年度  作者: 京丁椎
2018年5月
19/73

葛城・また振られる

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

「磯部先生、少しお時間よろしいですか?」

「はい、どうされましたか?」


「ここでは話しにくい事です。場所を変えましょう」

「わかりました」


進路指導室兼第二教務室へ行く二人の教師。

バイク通学担当者の磯部リツコと生徒指導の竹原螢一である。

どちらも高嶋高校の卒業生で同じ大学の先輩後輩だ。


「で、竹ちゃんのお話って何かなぁ♪」

「だ・か・ら、学校で『竹ちゃん』は止めてって言ってるじゃないですか…」


竹原はリツコの後輩。大学時代にバイトが一緒だったりして友人として仲良し。

大きな体の竹原だが、リツコにとっては弟の様な可愛い後輩。


「もしかして、晶ちゃんの事かな?」

「はい。やはりお付き合いはチョット…」


先日、困った生徒の事で協力してもらった見返りにリツコは竹原に女性を紹介したのだが…


「自分よりイケメンの女性と付き合うのはチョット…」

「わがまま言いやがって…でもその気持ちは分かるよ。仕方ないよね」


甘い物好きで竹原より少しだけ低い程度の高身長。お酒もそれほど飲まない晶は

可愛い後輩の相手に最適だと紹介したのだったが…


「僕はそうは思わないんですけど、近所の人に『男の人と歩いてる』って」

「それも仕方がない…」


竹原が言う通り葛城はイケメン。神様が何かを間違えたとしか思えない程だ。


「分かった。晶ちゃんには上手く伝えるから」

「ゴメンなさい…」


     ◆     ◆     ◆    ◆


「…と言う訳か」

「そうなのよ」


夕食を食べに来たと思ったら普段呑まない日本酒やウイスキーを何杯も飲んで、

晶ちゃんはベロベロに酔っちゃった。


「女の子って見られた~てのは~嬉しかったんらけどぉ~」

顔は真っ赤、呂律も回らなくなってきた。


「良くない酒やな…酒は楽しく呑まんと」

「何も食べずに酒だけなんて体に悪いよね~あ、美味しい」


今日の肴は出汁巻き卵。中さんお得意の料理で私の大好物。紅ショウガを乗せていただきます♪


「今日は冷や酒だね。中さん、苦しゅうない。近う寄れ」

「姫様、逆ではござらぬか?」


そんな私達の様子など知った事ではないとばかりに晶ちゃんはテーブルに突っ伏している。


「なぁ~んか違うのよぉ~もっと~可愛いのがぁ…グゥ…」


とうとう眠っちゃった。


「やれやれ、お布団に寝かそうか、リツコさん、足持ってくれる?」

「うん、よっこいしょっと」


ショックだったのかヤケクソか分からないけれど運んでいる途中でも何か言ってる。


「可愛い子が好きなのぉ~!」

「うんうん、次は可愛い男の子を紹介するからね~」


(晶ちゃんは可愛いもの好きだもんね…)

イケメンもベロベロになっては台無し ※葛城は女子です


「晶ちゃんにも春が来ると良いのにね…」

「まったくや…中身は可愛らしい女の子やのに…」


外見はイケメンだけど、晶ちゃんは女の子。ちっちゃな可愛い物好きでモフモフ好き。

フリフリも好きだし甘い物も大好き。中身は普通の女の子なんだけどなぁ。


「どんな男の人が合うんやろうな…」


中さんが言うには男と女はお互いにしっくりくるのが一番良いみたい。

(竹でダメか…う~ん、私も持ち駒が無いからな~)


「可愛い子が良いの~!」

その夜、布団に寝かされた晶は夜遅くまで叫び続けるのだった。



大島には葛城に紹介するような年齢の男性に知り合いは居ない。

独身の男は居るが、高齢で死別したか結婚に不向きだった者ばかり。


リツコの持ち駒も数が知れている。そもそも紹介できるような男が居たら自身が

今まで独身、しかも最近まで清らかな乙女だったはずがない。


職場でイケメン扱いされているので男性を紹介する者もいない。

自身の知らないところで詰んでしまっている晶だった。


    ◆    ◆    ◆    ◆


「中身は乙女なのよ、中身は」

「例のお友達の事ですか?イケメンの白バイ隊員でしたっけ?」


「そうよ。この子なんだけど…どう?」

「あ、タイプかも…って磯部先生、この顔で女の子ですか?」


やっぱり晶ちゃんは男の子と間違えられる。


「お……恐ろしいっ!」

「そんなに白目剥いて驚かなくっても良くなぁい?」


同僚に相談しても独身の男性は居ない。画像を見せるとこの反応だ。

リツコは何となく晶の事が可哀そうに思えてきた。


「私の従妹の旦那さんのお兄さんが独身ですよ」

「ずいぶん遠い所まで行くわねぇ…」


田舎町の高嶋市では男女の出会いが少ない。市主催の婚活パーティが在ったりするのだが、交際や結婚まで行くかとなるとなかなか上手くいかない。実際にリツコも参加した事は有るが人生の伴侶を探すには時間が足りないといったところだろうか。


「その従妹の旦那さんのお兄ちゃん…長いから『お兄ちゃん』って何歳?」

「磯部先生よりは年下ですよ。25~6かな?」


それなら晶ちゃんと変わらない。同じか上かだ。


「で?その『お兄ちゃん』に彼女は居ない訳?」

「あ~、あの人なら居ないはずですよ…あれじゃあね」


何か隠してる。スッゴイ変人とか性癖が有る人なら晶ちゃんには紹介出来ないな~。


「変わり者なの?」

「どっちかと言えば男の人にモテる方面の人?」


(そっちの人は目が肥えてるから男らしい男なのかなぁ?)

「もしも向こうがOKなら紹介したいかな?」

「じゃあメールでもしときますね~」


自身に余裕が出来たリツコは晶の幸せを願う余裕が出来た。


(晶ちゃんにも良い人が出来るといいのにな…)

そう願わずにいられないリツコであった。


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