ポート研磨
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
最近バイク雑誌を見ていたらポート研磨の記事が出ていた。
OHV時代のカブ90のエンジンを修理する企画でボロボロのエンジンの修理。
ハーレーのチューナーさんがカブのエンジンを修理していた。
「おっちゃん、ポート研磨って良いん?」
「ポート研磨…良いと言えば良いけんど…」
ウチでも昔はバルブガイドまで削って吸排気の流れをスムーズにすることをやっていたが、この数年、商売としてはやっていない。バルブガイドまで削ると寿命が縮まるのも理由だが、最大の理由は手間がかかる割に効果が実感できない事だ。
自分の使うエンジンなら戯れに削るのも良いが、商売でやるとなれば割に合わない。
加工賃だけで1万円くらい貰わないと商売にならない。だから誰もやってくれと言わない。
「…という訳で、ヘッド加工賃だけで1万円や。どう思う?」
「コストパフォーマンスが悪いですね。ハイカムの方が良いかな?」
「おっちゃん、説明が長い」
長々とした説明を速人は興味深そうに聞いていたが、理恵は混乱している。
「それにな、変にポートの形を変えるとパワーが出んようになるかもしれん」
シリンダーとピストンだけを換えるノーマルの50用シリンダーヘッド対応ボアアップキットの場合はある程度吸排気孔を広げてやると息詰まりした感じが減る。
ところがポートを広げてもバルブ径が小さい。バルブを大きくするのは加工が大変なのでカムシャフトを交換してバルブが開く量を大きくしてやると更に良くなる。これに使うカムがハイカムってやつだ。
以上はカブ系の50㏄をボアアップした場合の話。
「でもな、ウチでやってる70・90ベースは最初っからバルブとポートが大きい」
「それでも効果は有るんじゃないですか?実際やってますよね?」
「アレはバリ取り。ポート内の加工が荒い所を均してるだけや」
「形状は変えていないんですか?」
「鏡面仕上げ?ピッカピカにはせんの?」
なるほど、速人や理恵の中ではポート研磨は吸排気通路の形状変更や鏡面仕上げのイメージなんやな。
「鏡面仕上げが絶対良いかはおっさんにも分からん」
鏡面仕上げをするにはポート内を削る必要がある。削ればポートは広がる。凹凸も無くなるから理屈の上ではガスの流れが良くなってパワーが出るはずだが…
「鏡面になるまで磨いてポートを広げ過ぎると、低速が弱くなる気がする」
多分、流速とか充填効率とか難しい話が分かれば説明出来ると思う。
キャブレター車だとガソリン霧化の為にある程度凹凸が有った方が良いとか、
ゴルフボールみたいなディンプル状の凹凸が有ると流速が上がって充填効率が変わると聞いた事は有る。
トヨタのツインカムエンジンは2種類ある。スポーツ車に使われる普通のツインカムと実用車に使われるハイメカツインカムと呼ばれる低速重視のエンジン。どちらもDOHCだけど、バルブの角度とか駆動方式が違っている。ポートが燃焼室に対して立っていると充填効率が上がるとか、角度が緩やかだと吸排気の抜けが良くて高回転でパワーが出るとか色々有るみたい。抜けが良ければ良いという物では無いらしい。
「要するに速くなっても乗りにくくなるって事?」
「調整が要るかもしれんな」
理恵は難しい理屈を分からんなりに直感で理解している様だ。
「普通に使うなら軽く均すくらいで良いって事ですか?」
「削るのは簡単に出来ても盛り直しは大変やからな」
どちらかと言えばメカの事は速人の方が理解しているように思う。
例えばだけど、速人と理恵がコンビを組んでバイク店をすれば、理恵は可愛らしさと噛み砕いた説明で接客側、速人は手が器用だから整備とマニアックなお客さんの対応をするのが向いていると思う。
「で、おっちゃんは何をやってんの?」
「ポート研磨。鏡面仕上げ」
「さっき言ってたのと違うじゃないですか」
「これはおっさんの趣味や。スーパーノーマルを作るんや」
「「スーパーノーマル?」」
チューニングパーツを使わずに丁寧に組む。細かな粗を落として磨き上げた部品で
とことん精度を追及しての『組み』重視のチューニング。
手間がかかる割に性能に劇的な変化は無い。
『あ~今スム~ズに吸排気が流れてる~』って自己満足するだけだ。
「ええんや。これはおっさんが趣味で組んでるエンジンに使うんやから」
「おっちゃん、そのヘッド…私のゴリちゃんに付けたいなぁ♡」
言うと思った。今回はゴリラを買った時みたいにはいかへんぞ。それに、これは50㏄のヘッド。理恵と速人の70ベースのエンジンに使うとピストンが当たる。当たらなかったとしても圧縮比が高くなってハイオク仕様になってしまう。
「去年、葛城さんと4人でイベントに行ったやろ?パワーチェックしたな?」
「うん、雑誌にも載った。私の方が速人のエンジンより良かった」
「あれは僕のエンジンが慣らし中だったから」
「そうや。今やったら同じくらいかもしれん」
「じゃあ、そのヘッドに換えたら速人よりパワーアップ出来るやん!」
考えが甘い。交換すれば良くなるという物では無い。
「おっさんが『趣味で』やる作業や。自分が乗るバイクにしかせん」
「もしかして…」
「お前のゴリラに乗ってるエンジンはヘッドチューン済み。ポート研磨済みや」
「やっぱりそうか…」
理恵のゴリラは俺が乗ろうとコツコツ仕上げていたバイク。ヘッドも手を入れてある。
それなのに速人の組んだエンジンと大差無いパワーでショックだった。
「手間と作業賃の掛かる割に効果はイマイチ。自分でやるんやったら止めんけどな」
◆ ◆ ◆
「ふ~ん、ハーレーのチューナーが組むOHVカブねぇ」
「OHV繋がりで組んだんやって。一流の職人のする遊びやな」
ハーレーの世界的チューナーが組むOHVカブ。面白い。実に面白い。
宮大工がこっそり柱に名前を書く様な感覚だろうか?
「で、今回も不思議に思うんやけどな、何でそこに座るんや?」
「本を読む時はこうするんじゃないの?」
風呂を掃除して洗濯機を回している間の暇つぶし。
ポート研磨の記事を見せようとリツコさんに声を掛けたのだが…
「子供や無いんやから、何でお腹の前に座るかなぁ?」
「いちゃつきたいのよ…撫でれ、ギュッとして撫でれ」
開き直ったな。ならば御要望通りに後ろから抱きしめてやる。
「ほ~ら、ギュ~っとしてからのナデナデ」
「ナデナデ…からの?」
洗濯機が止まった。
「ちょっと待ってや。洗濯もんを片付けて来るから」
「その後で、私もポート研磨…し・て♡」
この後、リツコさんを寝室まで運んで…彼女の孔に道具を突っ込んだ。
「入れるで」
「うん…優しくしてね♡」
「あん…♡」
「リツコさん…湿ってる…」
彼女の孔は狭く、うねって…グチョグチョだった。
「あ…あんっ…そんな奥まで…ちょっと怖い…」
「静かに…手元が狂う…リツコさんの孔…狭い…」
狭い穴を傷つけない様に、俺は彼女の突き当り寸前まで棒を進める。
棒は彼女の壁面を這い回り、彼女が出した物でグチョグチョになった。
「奥は…ちょっと痛い…あ…」
「もうちょっとで出る…あ…出た…ほら、見て」
たっぷりと出たものを見せるとリツコさんの耳たぶは真っ赤になった。
「やん…こんなに…恥ずかしい…」
「今度は俺も…ほら、見て…」
攻守交代。今度は俺がリツコさんに身を任せる。太腿の感触が気持ち良い。
「あ♡大きい…凄い」
「大きかったら良いってもんでもないらしいけどな」
大きいのは我が家の血筋だ。父も祖父も大きかったと母や祖母から聞いた。
「む?…え?…あ…ぁ…スゴ~イ♡いっぱい出たね…」
「リツコさん…上手やった…気持ち良かった…スッキリした…」
「ほら、こんなに出た…我ながら良いテクニックしてるよね?」
「溜まってたから…おお~出たな~」
大きいからたくさん出る。出た物はティッシュで包んでゴミ箱へ…
この夜、俺達はお互いの耳掃除をした。もちろん膝まくらでだ。
リツコさんの耳垢は湿っぽいタイプだった。大きなのを取った後は麺棒で掃除。
狭くて大変だった。痛くならないように努力したけど、ちょっと痛かったかな?
俺の耳は祖父や親父譲りの大きな孔。だからと言ってよく聞こえる訳ではない。
耳垢はたまるしゴミは入る。大きければ良いという物では無い。
その辺りは吸排気孔と一緒だ…多分。
リツコさんはポート研磨の記事を見て耳かきを思いついたんやって。
言われてみると作業の様子は耳かきに似てるなぁ。
「やっぱり、見て掃除すると違うな」
「うん、すっごくスッキリした♡」」
お互いに大きな耳垢が取れました。めでたしめでたし。




