今津麗・教習所入所
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
バイクに乗るために高嶋高校へ入学した麗。免許取得の申請は通ったのだが、バイク通学の申請は受け付けて貰えなかった。バイク通学の許可は何に乗るのかも記入して申請しなければいけない。買うバイクが決まっていない時点ではどうしようもないのだ。
「何かパトカーが多いね」
「何だろう?それはさておき、今日は真旭で降りるんやったっけ?」
「真旭から送迎の車が有るんやって」
教習の受け付けは誕生日1か月前から。教習はスムーズに行けば2~3週間で検定となる。検定の時点で満16歳になっていれば卒業検定を終えて免許を取得できると言った寸法だ。
「順調に行けばゴールデンウイーク明けにバイク通学ね」
「順調に進めばね」
「あ~あ、学校の授業が終わってまた授業か」
麗・瑞樹・四葉の3人は揃って教習所へ入所することになった。
麗はお兄ちゃんに言われてMTで取ることにしたが、瑞樹と四葉はAT免許。
「私と四葉ちゃんはATだけど、麗ちゃんはMTで取るの?大丈夫?」
「うん。せっかく取るんだからどんなバイクでも乗れる様にね」
「私もAT。こっちの方が安いもん」
自転車代わりと思えば原付免許でも良いが、湖周道路は気持ちが良くてついつい飛ばしてしまう。簡単に取れる代わりに色々な制限が有る原付免許より、せっかく許可されている事だから小型自動二輪を取れと言うのが親と学校の勧めでもある。
真旭駅で送迎バスに乗り教習所へ着いた3人は受付を済ませ、視力等の適性検査を受けて教室で待っていた。四輪の免許のシーズンは終わり、周りの席は小型自動二輪免許を取りに来た高嶋高校生が多い。
「ウチの学校の生徒が多いね」
「お母さんが言うには『高嶋高校バイク科』だって」
「分校って言う人も居るけどね~」
性格診断や学科教習・実技教習の説明を受けて初日は終了。
帰りも真旭駅から電車だと思っていた3人だったが、安曇河駅行きの送迎バスが出ていたのでそちらに乗った。電車を待つより直接送ってもらえるのが色々と安心だからだ。
安曇河駅まで数分、3人は運転担当者から今年は大人しい教習生が多いのだと教えられた。
「今年は今都の生徒が少ないって聞きました」
「今年は倍率が高かったみたいやで。必死に勉強したもん」
「高倍率って言っても10人くらいしか落ちてないみたいやけどね」
瑞樹と四葉が言うには普段なら『名前さえ書けれ落ちない』と言われている高嶋高校。
今年に限っては受験倍率が1.0を超えたらしい。
「私はお兄ちゃんの漫画を見てバイクに乗りたくなったの」
「ほう!お嬢ちゃんもか?おっちゃんの家の子もそんな事言うてたぞ」
「運転手さんもですか?」
「いや。うちのはライトノベルやったかな?ネット小説からみたいやけどな」
アニメや映画、そして小説の影響は10代の若者には影響が大きいらしい。
「おじさんの娘さんはMT免許ですか?」
「いや、ウチのは小型AT限定や。カブに乗るんやと。おっちゃんバイクやのになぁ」
麗たちの感覚ではスーパーカブは少しクラシカルな可愛いバイク。
運転手のおじさんの感覚では銀行の外回りや田の見回りに使われるバイク。
「可愛いのに?」
「可愛い?あんなお年寄りが乗るバイクが?」
麗たちの年代ではスーパーカブは『ず~っと作られている可愛いバイク』なのだが、運転手さんが言うには『お年寄りのバイク』である。ちなみにスーパーカブ登場時を見ていた大島の師匠は『凄いもんが出た、これは時代を超えるバイク』と思ったらしい。
そんな事を話しているうちに安曇河駅に到着。3人はお礼を言ってバスを降りた。
ここで麗は2人とはお別れ。
「じゃあね~また来週」
「「またね~」」
2人に別れを告げ、麗はホームへの階段を上った。教習所の送迎バスは30分に1本しか無い電車に合せて運行されているのだろう。数分待つだけで来た電車に乗る事が出来た。
「もうすぐ電車通学は終わりかな?バイク通学が楽しみだなぁ…」
電車に揺られながら麗は思うのだった。