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アンゲルとエレノア  作者: 水島素良
第四章

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4-9 エレノア エブニーザ 図書館

 数日後。

 エレノアが図書館の資料室を覗くと、エブニーザが、こんどは古代の鉱物事典を熱心に読んでいた。

「古代には、宝石に魔力があると言われていたんですよ。薬みたいに、使い方が書いてあるんです」

あいかわらず本から目を離さず、無表情だ。

「宝石……あまり縁がないわ」

「そんなことないでしょう。こないだもピンク色のトルマリン……」

 エブニーザはそこまで言って言葉を切った。

「トルマリン?何の事?」

「何でもありません」

 エブニーザは本から視線をそらし、窓の外を見つめる。エレノアも窓を見るが、特に変わったものは見えない。

「どうしてこんなものに興味を持ったの?こんな、天使みたいな顔してるのに」

 エレノアがそう言うと、エブニーザはとたんに不機嫌な顔になった。

「どうしてみんなそういうことばかり言うんですか?顔だけ見てあとを追いかけてきたり、騒いだり妬んだりする。それは僕自身とは何の関係もないことなのに……」

 最後の方は小声でぶつぶつとつぶやいていた。

 かなり根暗な性格だな、とエレノアは思ったが、自分も思い当たる節があったので、

「私も、歌を聞いてもらいたいのに、顔ばかり見られて困ってるの」

と言った。そして、旅先で追いかけてきた男たちの話(私が好きだっていうくせに、私の歌なんかまじめに聞いてないのよ!)をした。

「私は歌手なの。歌いたいの。歌を聞いてほしいの。顔を売りたいわけじゃないのよ」

「そうですか」

 エブニーザはあいかわらず無表情だが、何か考えているようにも見えた。

 外は曇っている。

「雷が来ますよ、帰りましょう」

 エブニーザが立ちあがった。二人で一緒に図書館を出た。

 エレノアが寮の部屋に着いた時、突然、夕立のざあっという音と共に雷鳴がとどろいた。

「ほんとに、雷が……」

 エレノアが窓から外を見た。街全体が薄黒い雲に覆われていた。

 黒魔術のことを聞き忘れた!と思いだしたが、遅かった。



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