4-7 アンゲル ヘイゼル エブニーザ クー
アンゲルが部屋に戻ると、ヘイゼルがソファーでぐったりと寝込んでいた。
「自分の部屋で寝ろよ!」
アンゲルが怒鳴ると、ヘイゼルがとつぜん目がさえたように飛び上がった。
「耳元で怒鳴るな!」
「ここは俺の部屋だぞ!」
「まだ言ってんのか!?」
二人が言い合っているところに、エブニーザが部屋から出てきた。
「図書館に行きます」
とだけ言って、二人を止めずに部屋を出ていった。
「こんな時間に図書館?」
「勉強したいんだろ?誰もがお前みたいに遊びたいわけじゃないんだよ、ティッシュファントム!」
「ティッシュファントムじゃない!シュッティファントだ!」
「大して変わらないだろ!」
「全然違うだろうが!」
ヘイゼルは完全に目が覚めてしまったらしい。そして、アンゲルも機嫌が悪い。
言い合いは深夜まで続いた。
エブニーザは、いつもの資料室で薬草辞典(シュタイナー邸に同じものがあったが、ヘイゼルに没収されて最後まで読めなかった)を眺めていた。
そこにクーが現れた。衣装は美しいが、疲れた顔をしている。
「フランシスとパーティじゃないんですか?」
「どうしてそんなことを知ってるの……ああ、そうだ、予知ね?」
エブニーザは黙ってうなずいた。クーは向かいの席に座り、つぶやいた。
「フランシスは飲み過ぎて眠っちゃったし、エレノアは疲れてるみたい」
エブニーザがお気に入りのレモングラスの話を始めると、クーは
「ハーブティーは嫌い。歯磨き粉の味がするから」
とそっけない返答をした。そして、エブニーザにこう聞いた。
「エレノアの歌を聞いていたでしょう?才能があると思わない?」
「思います」
「美しいと思わない?」
「思います」
クーはどこかさみしそうな笑みを浮かべていた。
「どうしたんですか?」
「何でもないわ。エレノアがうらやましいだけ。美しくて、自由で、強くて……」




