13-9 アンゲルの両親 帰りの車内
両親たちは先に帰って行った。……というより、ヘイゼルが追い返したのだが。
ヘイゼルの両親も、フランシスの両親も、あまり子供には関わりたくないようだった。そして、アンゲルの両親も、居心地が悪くなったのか、帰って行った。シュタイナーが帰りの車を出してくれた。
アンゲルの両親は、帰りの車の中で、こんな会話をしていた。
「あのお金持ちのご両親たちは、アンゲルが毎日勉強していて素晴らしいとか言ってたけど、それって特別なことじゃないわよね?」
ようやく緊張が解けたのか、アンゲルの母が不満を言い始めた。
「学生なんだから、毎日勉強するのは当たり前だ」
アンゲルの父も怪訝な顔で答えた。
「そうよねえ。そんなことで褒められてもねえ……しかもご両家とも、子供の悪口ばかり言っていたけど、育てたのはあなたたちでしょうって思わない?」
「全くだ」
「しかも、お嬢さんの方でしたっけ?薬を飲ませるなんて。人間、泣き叫ぶ時には何か事情があるものでしょう、子供ならなおさらそうですよ。そういうときこそ親がそばについていてやるものでしょう?それを薬を飲ませて済まそうだなんて」
「全くだ」
両国の溝は、なかなか深い。




