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11-7 アンゲル エブニーザ
アンゲルはエブニーザを連れて、自分がかつて通っていた学校へ行った。
休み中なので、誰もいなかった。こっそり校舎に侵入して中を歩くことにした。
「だめですよ、こういうの」
塀を乗り越えようとしているアンゲルに、エブニーザが真面目に注意した。
「大丈夫だって。お前入ったことないだろ?管轄区の小学校」
「ないですけど……」
不満げだったが、エブニーザも柵を超えて、アンゲルについてきた。
時間をかけて、興味深そうに、時々立ち止まりながら校内を見回しているエブニーザを遠くから見ていたアンゲルは、
失った時間を埋めようとしているみたいだなあ。
と思った。
もしエブニーザが人さらいにあわず、普通に親元で暮らしていたら……どうなっていただろう?もっと明るい人間になっていただろうか?普通の人間に?
でも、管轄区で普通って、ただのつまらない奴だよなあ……。
みんなで同じ格好して、同じ時間に置き、同じ時間に寝て、同じことを考えて、同じ女神に祈る……。




