11-6 エレノア フランシス 女子寮の部屋
数時間きつい口調で悪口を聞かされ続けた後、エレノアが疲れきって寮に帰ると、フランシスがテーブルにずらっとワインボトルを並べていた。
「どう?最悪でしょ?」フランシスが赤ら顔でワイングラスを掲げた「世界一関わりたくないタイプよ。気晴らしに飲まない?」
もうかなり飲んだらしく、空の瓶が床にいくつも転がっていた。
「飲み過ぎよ!」
エレノアはワイングラスを奪い取ろうとしたが、フランシスは立ち上がってよけた。
「あいつは悪魔よ!悪魔!」
何かのセリフのように格式ばった声でそう言うと、フランシスはグラスにまたワインをなみなみと注いだ。
「お母さんを『悪魔』なんて言っちゃだめよ」
エレノアはそう言いながらも、フランシスの気持ちがよくわかった。
「あれが悪魔じゃなかったら何が悪魔なのよ?ヘイゼル?」
「ヘイゼルは関係ないでしょう……お母様はヘイゼルがお嫌いみたいだったけど」
「当たり前でしょ!?あいつはだれも気に入らないのよ!」
逃げ出したくなるほど甲高く大きな声で、フランシスがわめき始めた。皮肉な事に、大嫌いな母親と同じ口調で、何時間も他人の悪口を言い続けた。
すっかり酔って寝込んだフランシスを部屋のベッドに運ぶ時、エレノアは、寝室のテーブルの上に、ヘイゼルと二人で写っている写真があるのを発見した。
二人とも嬉しそうな顔で、どう見ても仲のいいカップルにしか見えない。
エレノアは、写真の笑顔と、ベッドで眠っている疲れ切ったフランシスを見比べて、苦笑いした。
「もっと素直になればいいのに。でも、相手があれじゃ、無理かもね……」




