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10-21 エレノア オペラを見に行く
エレノアは一人で、ポートタウンに向かっていた。オペラの公演を見るためだ。
イシュハ歌劇の古典とも言える、今のエレノアの心情にふさわしい悲劇で、代表曲も「私には絶望しかない」という、どん底の歌である。
エレノアは、オペラの間中、ずっと泣いていた。
公演が終わっても、エレノアは立ち上がれなかった。
涙が止まらなかった。
やっぱり歌いたい!
でもどうしたらいいんだろう?
いつまでもいつまでも嗚咽が止まらないので、不審に思った会場の係が近づいてきて、エレノアを外のタクシー乗り場まで連れて行ってくれた。
「彼氏にでも置き去りにされたのかい?」
不審に思った運転手が聞いて来たが、エレノアはずっと泣きじゃくっていて、何も答えられなかった。




