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アンゲルとエレノア  作者: 水島素良
第九章

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9-20 エレノア クー ケンタ エブニーザ

 男子寮の入口にいるソレアを、遠くの道に停めた車の中からクーとケンタとエレノアが見ている。

「本気ね。思いつめてるわね。怖いわね」

 とクーがささやいた。

「そんなにいやならはっきり嫌だって言えばいいのに、どうしてアンゲルは逃げるんだ?どっちもキープか?」

 ケンタが不満げに言った。エレノアは黙ったまま、ソレアの姿を見つめている。

 電話をかけに行ったエブニーザが帰ってきて、車に乗り込んだ。

「寝てたみたいです」

「のんきねえ」

 クーが呆れた。そのうち、寮からアンゲルが出てきたのでみな注目するが、何か話をしたあとに、ソレアが泣きながら走っていくのが見えた。

「あ、ふられたな」

 ケンタがつぶやいた。エブニーザが突然ドアを開けて追いかけて行ったので三人とも驚いたが、クーがすぐに、

「何か見えたのね、未来が」

 とつぶやいた。

「へえ、あんたにも未来の話したのか」

「だれにでもするわよ。何て言われたの」

「世界一のギタリストになる。当たり前だろ?」

 そのあまりにも自信ありげな答えに、エレノアとクーは笑ってしまった。

 車に気付いたアンゲルが近づいて来た。

「何やってんだよ」

 アンゲルはケンタを睨んだ。ケンタは、

「俺帰るよ。昨日の夜は女二人の相手で眠れなかったからな」

 ぎょっとした顔のアンゲルを置いて、あくびをしながら去って行った。クーが声を上げて笑い始めた。

「ねえ、何あれ?どういう意味?」

 慌てているアンゲルに向かって、エレノアは苦笑いするしかなかった。




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