9-15 エレノア クーに誘われる
エレノアとケンタが女子寮の前で、クーの黒塗りの車を発見した。
「遅かったわね!うちにいらっしゃい!」
車の窓から顔を出したクーが叫んだ。エレノアとケンタは顔を見合わせた。
「なんで?」
「フランシスが部屋に友達を泊めるんですって、だから、あなたは代わりにこっちに来るのよ」
「えっ?」
「ずいぶん横暴な話に聞こえるけど?」
ケンタが怪訝な顔をしてつぶやく。クーがレズだということを知っているので、エレノアと二人きりにしたくないのだ。
「あら、あなたも来る?ゲストルームはたくさんあるもの」
二人が驚いていると、黒服の男が出て来て、車のドアを開けた。
「とりあえず二人とも乗って!レストランに行くから!」
「でも俺金ねえ……」
「おごるから安心して」
エレノアとケンタがしかたなく高級車に乗りこむと、車はゆっくりと発進した。
「ポートタウンに向かいます」
運転手が低い声で言った。エレノアとケンタは困惑して顔を見合わせたが、クーはそんな二人を見て楽しそうに笑っていた。
「ゲストルームのドアにカギがかかるか、まず確認したほうがいいよ。かからなかったらタクシーで帰るんだ」
ケンタがエレノアの耳元でつぶやいた。
エレノアは、セカンドヴィラで起こったことを思い出し、全身をひきつらせた。




