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アンゲルとエレノア  作者: 水島素良
第六章

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6-24 アンゲル ヘイゼル エブニーザ 男子寮の部屋

 エブニーザが暗い顔で部屋に戻って来たかと思うと、

「学校をやめて、シュタイナーのところに帰る」

 と言いだした。

「アホか!」

「だって、ここにいてもできることなんてないし、みんなに迷惑をかけてるし……」

「そう思ってるんなら黙って学校に行ってろ!」

「でも……やっぱり僕には合わないんですよ」

「『合わないから行きたくありません』なんて話が通ると思ってるのか!?」

「でも……」

 ヘイゼルが怒鳴りつけ、延々と文句を言い続けたが、エブニーザの決心は固いのか、なかなか考えを変えようとしなかった。

 勉強するふりをしながらそのやりとりを聞いていたアンゲルは

「逃げようとしてるな」

 とつぶやいた。

「まわりが自分に気を使うから嫌になったんだろ?さっきエレノアから電話が来てたぞ。機嫌が悪そうだったから、自分が何か気に障るようなことをしたんじゃないかって。心配されるのが嫌だったら自分がしっかりしろ。それが無理なら、人の好意をはねつけるなよ。簡単に逃げ帰るような奴に女の子なんて救えないな。問題なのはお前の病気でも弱さでもない。そういう逃げ腰の態度だろ?」

 エブニーザは傷ついた表情をして、部屋に戻ってしまった。

 そして、めずらしくドアを乱暴に、音を立てて閉めた。

「わお。そろそろ反抗期かもね」

 アンゲルが笑うと、

「性格変わったな、エンジェル氏」

 とヘイゼルが驚いたような、呆れたような顔をした。



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