6-10 アンゲル ヘイゼル 男子寮の部屋
アンゲルはソファーに横になっていたが、眠れない。
エブニーザが帰って来たが、アンゲルを見たとたん、部屋を飛び出して行ってしまった。
「何だよ?」
ヘイゼルも帰ってきていないようだ。アンゲルは眠ろうとするが、さきほどクーの部屋で見たヌード写真が頭から離れない。
「うわああ、だめだ、だめだ」
と一人うめく。
管轄区では、婚前交渉どころか、女性の裸を『想像するだけ』でも罪だということになっている。当然だがポルノがない。(ただし、ヘイゼルが言った通り、売春婦の数は世界一である)
明日から忙しくなるんだから、眠れ!眠るんだ!
アンゲルは自分に言い聞かせるが、ますます目がさえるだけだ。
起き上がって本をめくり始めるが、数ページ読んだだけで『ああ~だめだ!うわああ』と本を閉じて頭を抱えてしまった。
そこにヘイゼルが帰ってきた。
「なんだ、こんな時間までお勉強か?」
「今までどこで何をしてたんだよ!」
「シグノーの別邸でお説教だ。また白ひげだぞ?思い出したくもない」
ヘイゼルは部屋に直行。
アンゲルはまた本を読み始めるが、やはり『だめだ!だめだ~!』とわめいたため、ヘイゼルが出て来て怒鳴った。
「うるさいぞ!何時だと思ってる!?」
「お前の怒鳴り声の方がうるさい!ティッシュファントム!」
「ティッシュファントムって言うな!」
真夜中に怒鳴り合いが始まってしまった。
隣の部屋の学生が事務に苦情を言ったため、事務の職員がかけつけてきて、
「またお前たちか」
と、1時間近くお説教をされた。
戻ってきたエブニーザは、その間、廊下で待つはめになった。
結局、三人とも、この日は眠れなかった。




