2. 享子の決意
(ヤバ。なんかマズイ感じね…)
享子が社食に到着すると、いつも待ち合わせている由子が知らない男性社員と一緒にいた。最近は由子を一人にしないよう、先に社食にいるようにしていた享子だが、今日はやはり彼女より遅かったようだ。
「由子?」
「あ、きょーちゃん!」
享子の姿を見つけると、すぐに由子は駆け寄ってきた。
側に来た由子を見ると、やはり表情はひどく困っているようだった。
「どうしたの?あの人、知ってる人?」
言いながら、享子は少し離れたところで取り残されている男性社員を見る。
「ううん、今さっき話しかけられたの…」
「そう。わかった…」
(あーもう!また!?)
享子は心の中でぶちギレながら、すぐさま男性社員に近づくとにっこり微笑んだ。
「あの、用件なら私が伺いますが?」
「いや、べつに…」
享子の凄みのある微笑みに、男性社員はたじろいで、すぐにその場を去った。
(ああ…骨が折れる。やっぱもっと睨みをきかせておかないとよね。何かもっと良い方法は無いかしら…)
滅多にしない微笑みをして、享子はどっと疲れを感じるのだった。
「きょーちゃん、ありがとう」
男性社員が去ると、由子が近寄ってくる。
「なんだか、しつこくて困ってたの…」
「しつこい?」
「うん、今度ご飯行きませんかって」
「あの野郎…」
「き、きょーちゃん?」
「ああ!なんでもない。ご、ご飯食べよ?」
「うん!」
素の呟きが出てしまい、享子は慌てて誤魔化すと、素直に誤魔化されてくれた由子と並んで歩き出した。
「定食、売り切れてないかな?」
「…!」
その時由子の笑顔の可愛さに、おもわず享子はドキリとする。
(これじゃあね…。いきなりご飯に誘う荒業もしたくなるか。
一体、どんな野郎がこの子をこんなに可愛くさせたのか…。
でも由子は幸せそうだし、きっといい人なんだとは思う。
でも、由子を私から拐っていっちゃうの?
ああ…なんか腹立ってきた!)
「由子、今日仕事終わったあと付き合って!」
「え?もう夜ご飯の話し?」




