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19.職場提案

「それで、何で今日はついてきたりしたんですか?夜からコンビニがあるのに…。早く帰って寝た方がいいですよ?」

店を出た秋路と秋子は駅に向かって歩いていた。

「うん…、由子さんが来るって聞いたから…」

「確かに由子と橋田と会うって言いましたけど?」

秋路は思い出しながら首をかしげた。

「だって、由子さん可愛いし。前、好きだったみたいだし…」

「え?えぇー?秋子さんやきもち…ですか?」

「…みたい」

「だとしても、そんな身を削らなくても…。今日だって、結構たくさんの女性に捕まったんじゃないですか?」

秋路は心配そうに尋ねる。

「…だって、気づいたら君を追いかけてたんだ。気にならなかったよ。さすがに店内では色々困ったけど」

「あぁ、見ました…。でも…由子さんと橋田さんの相手の人に同席させてもらったから、少し助かったよ」

「え!?話したんですか!?」

「うん、面白い人たちだったよ…」

「ん?秋子さん、なんでそこで赤くなるんですか!?」

「いや…、なんでもないよ」

「そんなわけないでしょ!?」

秋路に強く腕をつかまれて、彼が焦った表情をしてるのを見た秋子は観念した。

「ただ…、この見た目で仕事を辞めた話をしたら」

「…したら?」

「その二人に、無理に働かなくていいんですよって。…君に養ってもらえばいいって言われたのを思い出したんだ」

「え?そんな話を?…やっぱり、男が考える事は一緒なんだろうか…」

秋路は立ち止まり、なにやらぶつぶつと呟いた。

秋路の呟きが聞こえなかった秋子は気にさせてしまったのかと慌てる。

「あんまり気にしないで!苦労はするだろうけど、私もまだ働いてみたいし…」

「秋子さん何かやりたい仕事があるんですか?」

「え?いや…これっていうのはまだないけど」

「それなら…!」

秋路は秋子に向かい合い、彼女の両の腕を掴む。

「専業主婦はどうですか?」

「…え?」

掴まれる強さで秋路の真剣さが伝わってきた。

「今話を聞いたからじゃなくて、前から考えてたんです。あなた似の子供なら欲しいです…」

「え…!?」

秋子は一瞬で顔が熱くなった。

こんな外見でこんなことを言ってもらえる日がくるなんて思ってもみなかった秋子は嬉しさに目頭が熱くなる。

恥ずかしさをこらえて真っ赤な顔でつぶやく。

「…私は君に似た子供が欲しいな…」

「えっと、それって…」

「もう、道の真ん中でなんて話はじめるのさ!」

「え…あっ!」

立ち止まっている道は人通りは少ないが、明らかに恥ずかしい状況に秋路は今頃気がつく。

「とにかく帰るよ、続きはそれから」

「はい!」

そして笑い合う二人は並んで歩きだした。


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