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18.おむかえ

「橋田の再会も濃いなぁ、俺は始めて秋子さんに会ったのはコンビニのトイレの個室の中だったよ…」

「えぇ?なんで一緒の個室!?」

「それはなぁ…」

「キョーコちゃん」

享子達三人のテーブルへ隆頼がそっと近づいて声をかけた。するとその三人が同時に振り返る。

「ヨリさん?…なんでいるのよ?」

途端に享子の目付きが悪くなり、隆頼は覚悟を決めた。

「…せっかくの休みですし、早くキョーコちゃんに会いたくて、ついてきちゃいま!」

ドスッ

「うぅっ」

「そ!そんな恥ずかしいこと、へらへらしながらみんなの前で言うんじゃないわよ!」

享子は赤くなって立ち上がり、隆頼を素早く殴った。

「もう、か解散よ!ヨリさん、帰るわよ」

享子は隆頼の腕を引いて、ずんずん出口へと向かう。

「なんかすごい!キョーちゃん」

享子の迫力に由子は瞳を輝かせる。

「じゃ、悪い俺も呼び出して帰るな」

「え?あきちぃも?」

店内を見回した秋路は、険しい顔をし、言いながら携帯で電話しはじめる。

「…出ない」

なかなか相手が出ないのか、イライラしたように秋路が呟く。

「…あ、もしもし?秋子さん。…隠れてないで出てきて下さい。まだ店内にいるのはわかってるんですよ?」

秋路は携帯を切り、顔を上げると死角になっている席から秋子が歩いてくる。

「…ごめん」

秋子は秋路の前に申し訳なさそうに立つ。

「言ってくれれば一緒に来たのに」

「ダメって言われると思って…」

「俺には何でも言って下さい。お願いですから…」

「もう解散になったので一緒に帰りましょう」

秋路は最後に優しく微笑むと、立ち上がった。

「…うん」

「あれ、橋田はもう本当に帰ったのか…」

見回してもすでに店内に享子達の姿はなかった。

「じゃあ由子、俺らも帰るな。また会社でな」

「あ、うん!二人ともまたね」

秋路と秋子は由子に手を振ると並んで帰っていった。

「みんな連れてきてたんだ…」

「由子さん」

最後にひょっこりあらわれたのは智光だった。

智光は由子の空いた向かいの席に座る。

「せっかくミツ君を紹介しようと思って、一緒に来てもらってたのにぃ」

「でも、何でそんな時に僕はこの格好なんですか?」

智光はスカートの裾をつまんだ。

「だって、可愛いし!今日は私とミツ君の服、色違いでお揃いにしたし。みんなに見せたくて」

「それが実は…、お二人の相手の方々と席をご一緒させて頂いて、自己紹介しちゃいました」

「え?良かったね!ミツ君」

「はい、恥ずかしさでゾクゾクして楽しかったです…」

「ああ!その時のミツ君、見たかったなぁ。ちょっと残念」

ぐぅぅ〜。

「あ、ミツ君…」

それは由子の腹の虫が鳴いた音だった。

由子は途端に物欲しそうな顔で智光を見つめる。

「ふふ。もうすぐ夕方ですもんね。じゃあ、お買い物して帰りましょうか」

「うん!あ、帰りは上着交換しない?」

上着を着ようとした智光に由子は自分の来てきた上着を差し出した。

「あ、そうですね。家を出る前、ずいぶん上着で迷いましたもんね」

そう言って智光はいつものように優しく微笑んだ。

「…可愛いなぁ」

思わずつぶやく由子の表情もとろけるように優しかった。


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