16.相手の三人
(えっと、キョーコちゃんは…)
享子達三人がカフェに集まって話しているころ、隆頼は部屋で一人で待つのも退屈なため、内緒で享子を追ってカフェまで来ていた。
(いたいた!)
店内でちょうど向こうからは柱に隠れて、享子達を観察しやすい席を隆頼は取れた。
コーヒーを飲みながら三人をチラチラ観察する。
(あぁ。あの子が由子ちゃんですね。ん?もう1人は男なんですね…)
秋路に少々嫉妬心を抱きながら、暇なので何気なく広い店内を見回すと、自分と同じ席を見てる人物が他に二人いる事に隆頼は気がついた。
(気のせいでしょうかね…?)
そんなワケないだろうと思いつつも、その二人はまったく別に座っているが大変目立つ人物だった。存在感ありすぎて、享子達よりそっちの方がなんだか気になってしまう。
それも、一人は可愛いらしい女の子。もう一人はとてつもない美形だ。
美形の方は、店内の女性の客や店員にずっと見つめられている。
先ほどなどは女性客に話しかけられていた。
こんな二人がなぜ同じ三人組を見てるのだろうか?と隆頼は不思議に思い、暇なためこちらも観察することにした。
「…あのすみません」
「はい?」
しばらくして、享子達三人の話が盛り上がってきたかなというころ。
隆頼は突然声をかけられ、顔を上げると、例の美形が側に来ていて、内心驚く。
「あちらの席の三人とお知り合いの方ですか?」
美形は少し小声で言って、享子達を指差した。
「あ、はい、そうなんです。あの…やっぱりあなたもですか?」
隆頼は暢気に笑って言った。
「はい。それで…あの、もしよろしければ、席ご一緒させて頂けませんか?」
美形はなんだか少し困ったように微笑んだ。
「ここにですか?いいですけど…」
隆頼の席は他がいっぱいだったため、四人掛けの席なので問題はない。だが、少々不思議に思っていると、美形はやっぱり困った顔をして話し出した。
「あなたの席が一番観察しやすそう、というのもあるのですが…。本音を言いますと…どうも一人でいると、人に声をかけられてしまって…。さすがに断るのに疲れてきたんです。すみません」
美形は申し訳なさそうに項垂れた。
「ふふっ、なるほど。あなたはカッコイイから大変ですね。どうぞ座ってください」
確かにこの美形は、今までの時間、何人もの女性に声をかけられていたのだ。隆頼は納得してしまい、少し笑ってしまった。
「ありがとうございます!」
美形はもとの席から飲み物を持ってくると、隆頼の向かいに座り、申し訳なさそうに言った。
「この席は、店内でも目立たないので、自分が一緒でも大丈夫だと思います…。その、本当にありがとうございます」
頭を下げる美形に、隆頼はいえいえと、暢気に笑った。
「あ、でしたら、あの子も呼んでみてもいいですか?」
隆頼はもう一人、同じ目的であろう人物の存在を思い出し、例の可愛らしい女の子の方へ視線を向けながら言うと、美形もそちらへ視線を向ける。
「あぁ、なるほど…。いいですよ」
美形は女の子を見て、なにやら納得すると、頷いた。
「じゃ、ちょっと聞いてきます」
隆頼は女の子の席にコッソリ近づき声をかけた。
話すと、どうやら女の子も同じ目的でカフェにいたらしく、女の子は嬉しそうに頷いた。
飲み物を持って移動し、隆頼の隣に座ると、女の子はペコッっと頭を下げて微笑む。
「お邪魔します。誘って頂いて嬉しいです」
女の子の花のような笑顔が眩しい。
隆頼は途端に緊張してきた。
(なんだか、凄い人達と一緒になってしまった…!)




