14.享子と隆頼2
「え!ヨリさん、そんな所に住んでるの?会社遠くない?」
「うーん、そうですか?僕は別に平気なんですけど」
翌朝、二人は享子の部屋で、テーブルを挟み朝食を食べていた。
「はいコーヒー」
「ありがとう!」
「じゃウチに来るのも結構時間かかるよね…」
「気にしないでください。僕が勝手にしてたんですから」
「そういうわけには…」
「あ、キョーコちゃんに聞きたかったんですけど」
悩みはじめてしまった享子に、隆頼はわざと話題を変える。
「ん?」
「やっぱり、今まで彼氏とかいなかったんですか?色々はじめて…っ!」
バシッ
隆頼が言い終わる前に、享子は顔を赤くして隆頼を殴った。
「うるさい!…軟弱な男しかいなかったのよ!」
享子はフンッとそっぽを向いた。
「キョーコちゃんの愛情に堪えられなかったんですね」
なんだか嬉しそうな隆頼に微笑まれる。
「うるさい…!」
殴るとさらに隆頼が喜ぶため、享子は我慢して赤い顔のまま隆頼を睨むにとどめた。
隆頼は享子のそんな姿も微笑ましく、楽しそうに微笑むのだった。
「あ、そうだ、もうヨリさんじゃなくて隆頼って呼んでください」
「う…うん」
「あと、好きって言って欲しいな」
「もう、何回も言ったじゃん…」
享子はボソボソしゃべりながら視線をそらした。
「夜はあんなに素直だったのに…」
途端に隆頼は肩を落とし、しょんぼりしてしまう。
「もう…。言う!言います」
享子は箸をテーブルに置くと、深呼吸した。
「…好きだよ、隆頼」
「嬉しい…!キョーコちゃんキスしてもいいですか?!」
瞳を輝かせた隆頼は素早い手つきで、テーブルを脇へ移動した。
ドスッ
「うっ!」
享子は迫る隆頼の腹に、いつものように一発おみまいした。
「ダメ!もう!キスだけじゃ止まらないでしょ」
「あぁ…キョーコちゃんの愛ですね…」
「隆頼…やっぱりあんた変態でしょ…?」
いつものごとく、隆頼は悶えながらも、嬉しそうに笑っていた。




