10.ある日の二人
「ちょっとどいて」
「はーい」
またある日の休日、享子はクリーナーで部屋の床を掃除をしていた。
どいてもらった床を掃除し終えて享子がその場を離れると、隆頼はまたそこへ座り直す。
休日、隆頼が家に来てコーヒーを出したあと、各自自由にしているのがいつもの自然な流れになっていた。
享子は隆頼が来る前に洗濯を済ませ、来た後は掃除をしたりパソコンをしたりと、必ず家で過ごし、隆頼は持ってきた雑誌を見たり、本を読んだり、勝手にテレビを見るなどしている。
「あの、キョーコちゃん。今日の夜ご飯はこれ食べたいです」
そして、いつも夕方が近づくと、隆頼は料理雑誌を開いてリクエストのメニューを指差す。
バシッ
「もう!ちょっと!また作らせる気?」
享子は隆頼の肩を軽く叩いた。
「はい!キョーコちゃんの手料理、また食べたいです」
そして隆頼は何度叩いても、嬉しそうに暢気に笑っている。いつもその笑顔を見るとなんだか苛立ちが萎んでしまう享子は、面倒くさそうな顔をしつつも、その料理雑誌を手にとる。
「…しょうがないな。で、どれが食べたいの?」
「これこれ!」
嬉しそうに隆頼がにこにこと料理を指差す。
「えぇ?こんな材料一人暮らしでは使わないわよ~」
雑誌のレシピを見た享子はぼやく。
「じゃ一緒に買いに行きましょう!僕が出しますから、ね?作るお手伝いだってしますから」
嬉しそうに微笑まれて言われてしまうと、逆らえない享子はしぶしぶ二人で買い物に出掛けるのだった。




