結和
ぺら、り。
静かな室内に、ページを捲る音が響いた。
高い天井に薄いピンク色の壁、あたたかな木の床。家具も壁とおそろいのパステルピンクで揃えられた子供部屋のような広い部屋で、小柄な少女がひとり、熱心に絵本を読んでいる。
色素が抜け落ちたかのような長い白髪が、彼女が少し頭を動かす度にさらりと揺れた。絵本を見つめる瞳もまた、色素の薄い金色がかった茶色。ページを捲る小さな手も、日に当たったことがないとでもいうように真っ白でしみ一つない。
着ているものは家具のパステルピンクに合わせたようなパステルカラーの薄紫のネグリジェ。袖口や裾が柔らかいフリルで飾られており、幻想的な少女の美しさを引き立てている。
ふと、ページを捲る手が止まる。何かを察知した小動物のように、彼女は小さな頭を上げた。
ちりんちりんちりん。
軽やかな鈴の音が鳴る。少女ははっとしたように目を見開き、絵本を放り投げて立ち上がった。
「ただいま」
少し低めの柔らかい声が響く。
少女はとたとたとドアへ駆け寄り、何故かそこでじっとドアを見つめたまま止まる。その表情はプレゼントを貰った子供のように嬉しそうだ。
ドアには何の反応もない。
数十分ほど経った頃。
少女の目の前のドアが、やっと開く。
その瞬間彼女は喜色満面でドアの外の誰かへ勢いよく飛びついた。
「おかえり、おかえりなさいっ!!」
泣きそうな声でそう言いながら力いっぱいに抱きつく彼女の頭を、少し細い大きめの掌が撫でる。
柔和そうな印象の、眼鏡をかけた白人の青年である。
「ただいま、結和。」
先程の低く柔らかい声で、青年が優しく少女に声をかけた。少女は顔を上げる。
「待ってたよ。いい子にしてたよ。…おかえりなさい、幸仁。」




