神様
『僕』がいなかったら、どれだけの人が、苦労しなくて、嫌な思いをしなくて済んだんだろう。
今まで、神頼みなんてしたことがない。
そんなものは偶像の産物、存在するはずがないんだから。
でも、今は、神様に頼ってみたいと思う。
天も地も統べるんでしょ?
何だってできるんでしょ?
なら、聞いてよ、この願いをさ。
『僕』は、出来損ねなんだ。
何にもやる気を出せない、人に言われたことすらもまともにこなせない。
いるだけで、みんなの迷惑になる。
邪魔者なんだ。
居ちゃ、いけないんだよ。
だから、神様、『僕』という存在を消してください。
これ以上、誰にも迷惑をかけないように。
『僕』のせいで困る人がいなくなるように。
『僕』という出来損ねを消してください。
殺してください。
何だってできるんでしょ?
じゃ、容易いことだよね、『僕』一人を抹消するくらい。
全部が嫌になった、なんて甘ったれたことを言うつもりはない。
ただ、迷惑を掛けたくないんだ。
『僕』のせいで、人が嫌な思いをするのが、それを見るのが、嫌なんだ。
ただ、それだけなんだ。
だから、神様。
お願いだよ。
『僕』を消して。
『僕』を殺して。
精神的に壊すんじゃなくて、肉体的に壊すんでもなくて、跡形もなく消し去ってよ。
これまで生きていた、って証拠も残らないくらいにさ。
ねえ、神様――
『僕』がいなくても、世界は回っていられる。