颯爽
ご意見、ご感想を頂けたら幸いです。というかください(笑)
「雨、降りそうだな・・・」
そう呟やいた時には遅かった。
お墓参りを済ませて帰ろうとしていた。ポツリ、と一滴が落ちたとたんいっきに降ってきた。こんなの漫画やアニメでしかないと思ってたのに本当にあるなんて。
もちろん傘なんて持って来てはいない。だって今日の天気予報では
「気持ちの良い快晴です」
って言っていたのだから。天気予報で雨と言われようが雪と言われようが外出時には傘を持たないのが自分の性格だけれどもこれにさすがにまいった。
「あのお天気おねぇさん、いいのは顔だけか・・・・・あ」
今のが自分に対しての失言だった事に気づく。なにかを思い出す時はいつも突然だ。それが例えいい事だろうが悪い事だろうが。
「今のは痛かったな」
と苦笑する。でもお墓参りに来ている時点でそれはもう思い出していた。
「時間だよー!」
一階から母の声がする。今日は月曜日。土日が休日の人にとってこれほど最悪な日はないはずだ。
「うーん」
今日も目覚めが悪いところから始まる自分の一日。布団から出てカーテンを開ける。
「うわっ」
朝日がうっとおしいほどに眩しい。階段を下りると母が朝食の準備をしていた。それを急いで食べて頭と顔を洗ってから歯磨きをする。毎朝寝癖がひどいので顔の他に頭も洗わなくてはいけないのだ。
大きなあくびをしながら学ランに着替える。そうしているうちにもう家を出なくてはならない時間になった。
「行くよー!」
今度は外から母の声がする。家から学校まで13キロもあるため毎朝母に車で送って行ってもらっている。入学当初は自転車で通っていたのだがそれも限界に達したため結局こうなった。自分はもう高校生だから原付の免許も取れるはずなのだが親が否定的だったのでやめた。それにもともと自分も取る気はなかったし。
「へーい」
そう返事をすると靴を履いて急いで外に出た。
「着いたよ!」
「ん・・・あぁ」
学校に着いたらおこしてくれと頼んで車の中で寝ていた。
「仕事に遅れるから早く降りて」
母に促されて渋々車を降りた。
「帰りはメールちょうだいね、そんじゃ」
季節は冬。もう11月の後半だ。朝起きた時には晴れていたけれど雪が降っていた。マフラーを巻きなおして校門へ歩きだした。
学校に入り靴を履き替える。周りはすでに他の登校してくる生徒達でいっぱいだった。学校へ着くと教室ではなく真っ先にトイレへ向かう。自分が登校する時間は送迎の関係で比較的時間が早いので教室へ行っても仲の良い友達はまだ誰も来ていない。それに髪のセットもあるし(笑)
今日も鏡の前で髪を整える。うーん今日はうまく行きそうだ。
「あ、凛おはよう!」
「はいおはよ」
こいつが来る時間って事はもう教室に行かなきゃならない時間だ。そう思い急いでヘアワックスやらヘアスプレーを片付ける。
「そういえば今日って転校生来る日だよな?」
「ん?あぁ、何組にくんの?」
「3年2組。お前んとこ」
転校生なんて都会のほうのイメージあったからこんな地方では珍しい、というのが自分の考えだ。それは他のみんなも同じらしい。
「なんか緊張する」
「しかも女の子だってよ!楽しみだな!」
「ん〜俺は別に」
まったく興味がないわけじゃなかった。むしろ興味深々なほうだ。ただミーハーなのは嫌いなだけ。
キーンコーン、カーンコーン
始業のチャイムが鳴った。
「そんじゃまた後でな!」
「うん、また」
チャイムが鳴ったところで別に急ぐ必要はない。ようは間に合えばいい。むしろ遅刻してもいいくらいの気だった。そんなに急いだっていいことないし、個人の自由って事で。
教室に入ると先生はまだ来ていなかった。内心ほっとする。当然のごとく教室中転校生の話題で盛り上がっていた。
「なぁ、可愛い子だったらいいな」
「う〜ん高望みはしないほうがいいじゃん?」
自分で言うのはなんだけど友達は多いほうだ。男友達だけど。中学生の時は女の子の友達もたくさん居た。だけど高校生になってからあまりできなかった。自分は元々そこまで積極的じゃないし、新しくできた男の友達だって向こうから話かけて来てくれてのがほとんどだった。
だから転校生が女の子だと聞いた時今度こそはと思った。ある意味一番高望みしているのも、一番嬉しいのも自分だと思った。
「はーい、全員揃ってるね?遅刻してる人もなしね?」
いつもどおり勢い良くドアを開けて先生が入って来た。朝から元気が良すぎる。だから男ができないのかな。それは関係ないか。
「前に言ったとおり今日から転校生が来ています。はーい入ってきて」
前フリなしのじらさないとこがこの人のいいところだと思う。
ガラガラと音がしてドアが開く。
颯爽と一人の少女が入って来た。
第一印象は・・・
「今日からこの学校に転校、いや編入のほうが正しいか。椎名輝希さんです、椎名さん自己紹介よろしくお願いします。」
「椎名輝希です。よろしくお願いします」
第一印象は無愛想。緊張してんのかな。でもなんだか懐かしい気がする。
「椎名さんは東京の学校から編入来ました。東京からいきなりこんな田舎に引越してきたから何かと不便かもしれません、だから何かわからない事があったら何でも聞いてください。みんなもいい?」
「「はーい」」
「それじゃ椎名さんの席はあそこ、窓際の一番後の席ね」
「はい」
それだけ言うと席まで歩いて行った。
「結構可愛くね?」
「うん、確かに」
確かに可愛い。けどそんなことよりもこの懐かしい気持ちはなんだろう。今は気にしないでおくか。
お読み頂きありがとうございます。これからも飽きずに読んでくださいね(笑)