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緩やかに(作:猫)
彼は緩やかに動く。
人混みの中。緩やかに人を避けていく。
人にぶつかることはない。
するりと人混みを抜けていく。
グラブで。
彼はゆったりと曲に任せながら踊る。
決して激しくはない。
髪の毛をかきあげる仕草もゆったりとしている。
周りから浮き立っていく。
皆が彼を見る。
いつの間にか中心に。
そしてゆっくりと波が引くように人混みを抜けていく。
夜のネオン街。
彼は目立つ。
際立った容姿。
それよりも動き。
酔っぱらいを避けていく。
捕まえられそうになっても、するりとかわす。
そう、まるで陸に上がった人魚のように。
どことなく漂う不思議な空気をその現場にいるかのように感じられました。
現代にひっそりと隠れ住んでいる人魚、すごくいいですね!このお話をもっと読んでみたいと思いました。