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寵愛の精霊術師  作者: さとうさぎ
第三章 少年期 ディムール・エノレコート戦争編
74/96

第74話 永遠の伴侶

本日は2話連続で更新しています。

第74話はその2話目になります。

前話である第73話は多少鬱な描写があるので、苦手な方は第73話を飛ばして読んでいただいてもさほど問題ありません。





 ――懐かしい思い出に浸っていた意識が、現実へと帰ってくる。


 そうしている間にも、カミーユの胸に突き刺さっている『常闇の蔓』はその数を増やし、彼女の存在を食らっていった。


「あとは、任せましたよ……」


 驚愕に目を見開くエーデルワイスの姿に、カミーユは場違いな感傷を覚える。


 思えば、『憤怒』に覚醒してから、エーデルワイスとはずっと共に過ごしてきた。

 よき友人だった。


 『色欲』の魔術師エーデルワイスならば、必ずこの世界の罪を裁くことができる。

 そう信じて、『憤怒』の魔術師カミーユは、その瞳をゆっくりと閉じる。


 自身の中から、徐々に『憤怒』が抜け落ちていく。

 それは紛れもなく、何本もの『常闇の蔓』によってカミーユの存在が削られている感覚に他ならない。


「おや?」


 もはや光など無くなったはずの視界に、一点の光が差し込んだ。

 光は、徐々に人の姿を形作っていく。


 その姿が明瞭になると、カミーユの頬から一筋の雫がこぼれ落ちた。


「……そうですか。一緒に、来ていただけますか」


 その呟きは誰にも聴こえることなく、闇に溶けていく。


 返事が来ることなど望まない。

 ただそこにいてくれさえすれば、それで十分すぎた。




「愛しています。あなただけを、いつまでも」




 万感の想いを込めて、目の前で微笑む愛しい夫の手を取り、カミーユは暗い奈落の奥底へと沈んでいく。




 その手を最後まで離さないまま、カミーユの意識は霧散した。


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