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白と黒の国で  作者: 紅 紅
第二章 黒騎士
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お嬢様と黒騎士 2

 飲み物を飲んで落ち着いたお嬢様はあと一つ買い物をして帰ると休んでいたベンチから立上がった。

「はい、何のお店に行かれますの?」

 新しいドレスは注文済みで、合わせる小物も済んでいる、あと何を買われるのかと訊ねようとすると、お嬢様は私の手を掴んで歩き出す。

「お、お嬢様?」

 なんというか、石畳の道を踏みしめるように歩いてらして、こう……足音がしそうなくらいの歩き方で、無言でどんどん進んで行かれる。

 ド派手なピンクの店構えをした店にとお嬢様は入って行き、そこで漸く私の手を離す。

「お嬢様、このお店は……」

 入り口を入った所にピンクに塗られた?大きな木が飾られていて、木の枝には金色や銀色、瑠璃色や赤色とりどりの珠が飾られて、まるで宝石を実らせた果実の木のようで、思わず見惚れてしまう。

「この店で一番大きなのをちょうだい」

「はぁーい、ありがとうございますー。メッセージはどうなされますかぁ?」

 私を無視して店員に注文してしまうお嬢様。

「……メッセージは……そうね、無しで」

 メッセージ? 何だろう。

 今は答えてくれなさそうなのに、黙って何が出てくるのか、何を買われたのかを眺めてぼうっと扉の前に立っている私。

「届け先は、騎士宿舎のアズール殿で」

 はい? お嬢様がアズール様にプレゼント?

「そうね、メッセージカードには宛名だけで、花を一輪それっぽく付けて……そう、そんな感じで」

 店員がカードに宛名を書いて、黄色のバラを一輪添える。

 用意された贈答用の箱の中には鮮やかなピンクで飾られたケーキらしき物が入っていて、蓋がされてピンクのリボンでカードとバラが差し込まれる。

「うわぁ、なんですか、可愛い贈り物ですね」

「ふっふっふ…見てなさいよぉ……」

 え、お嬢様お顔と声が怖いですよ?

「……お、お嬢様?」

 聞いても答えてはくれず、代金を支払って、店の外にと促される。

「あー、これでちょっとはスーッとするかも」

 お嬢様、ひょっとしてまだアズール様の事を怒ってたんですか?

「今日の夕方には届くらしいから楽しみねぇ……」

「……で、お嬢様何を贈られたんですか?」

「うんと辛いケーキ」

 にこにこと嬉しそうに言うお嬢様、……辛いケーキ? あのピンクのケーキが?

 あまりにも意外な答えが返って、しかもものすごく楽しげな笑顔に開いた口が塞がらない。

 きっと数秒そのまままぬけな顔をしていたんだろうと思う。

 お嬢様に帰るよと腕を引っ張られるまで動けなかった

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